自分ががん患者として鍼灸治療を受けたとき、「ごほうびだな」と感じました/鍼灸師:赤星 未有希

別れは何回経験しても辛いし、慣れない。悲しみは乗り越えなくてもいい。

今回の記事でご病気のことを伏せることもできますが…どうされますか?
ツルタ
ツルタ
赤星先生
赤星先生
あ、そこは大丈夫です。
最近、その気持ちが変わったきっかけがあって。とても大事な方が亡くなりました。
がんと関わって、1番辛いのは「患者さんが亡くなる」ということ。
患者さんも、若年性がんの友達もたくさん亡くなりました。
先日、亡くなった友達は「鍼灸とがん」というテーマで臨床をしている私をとても応援してくださっていました。
(うなずく)
ウラベ
ウラベ
赤星先生
赤星先生
今まで私がとらわれていたことって、全部自分のことばっかりだと気づいたんです。
「目立ちたくない」とか「人の目が気になる」とか。
でも、これからはそういう悪い側面にばっかり目をむけるより、もっと世の中に還元するほうが良いな、と思って。
それが、亡くなった方々にできることではないかと思いました。
それで、今日は勇気を出して話そうと。
前向きな行動だと思います。
もし「病気を売りにしている」と思う同業者がいるとしたら、それは業界の貧しさではないでしょうか。
がんと向き合い、患者に寄り添う人が増えるほうが私は良いと思います。
ツルタ
ツルタ
赤星先生
赤星先生
きっと私に救えない人は、他の人が救ってくれるし、私が救える人は救っていきたいという感じで。
そうやって、幸せな世の中になった方が良いと思います。
これはすごい勇気ですよね。
私は自分の父の死を乗り越えられていないから、旅立つ人をみていられないんですよね。
見送る立場には、もう立ちたくない…って思ってしまうんです。
ウラベ
ウラベ
赤星先生
赤星先生
別れは何回経験しても辛いし、慣れないし、悲しみは乗り越えなくてもいいと思います。
自分の肉親の末期がんを鍼灸治療をして、「ああ、鍼灸って本当に効果があるな」と感じたんです。がんそのものは(鍼灸では)もちろん治らないけど、疼痛はとても楽になる。
ウラベ
ウラベ
赤星先生
赤星先生
そう、鍼灸に大きな可能性を感じるんです。
自分が鍼の治療を受けていて感じたのは「生きる希望が出てくる」ということなんです。
西洋医学のがんの治療は、生きるためとはいえ、精神的にも肉体的にも負担が大きいんですよね。
でも、鍼灸を受けているときは「自分の身体に良いことをしてあげている」って気がして。
本当に、末期がんの人にとって、鍼灸って福音みたいなものだって身をもって分かったんです。
でも、私はこれ以上、身を裂く想いは引き受けられない。
鍼灸師として、死と向き合う覚悟はできないと思いました。
だから、赤星先生が正面から向き合う覚悟を決めていらっしゃるのが、もう単純にすごいことだと感じています。
ウラベ
ウラベ
赤星先生
赤星先生
ちょっと良くなると、希望を持ってしまうんですよね。
でも、がんは亡くなる方が多い病気だから、覚悟をしておかなくてはいけない。
自分が患者さんとして、経絡治療を受けた時「ごほうびだな」って感じたんですよね。
「我慢を強いる治療」が、西洋医学には多いんです。
でも経絡治療なら、身体に優しいことをしながら元気になることができる。
それは、ほんとに「希望だな」と思えたんです。
その時の思いを大切にして、できるだけ患者さんの負担にならないように、これからも鍼灸治療をしていきたいと思います。

■ 白砂虎ノ門鍼灸院 http://redstarm1021.wixsite.com/shiratora
■ がん情報サイト「オンコロ」 https://oncolo.jp/

【記事担当】
取材=ウラベツルタ
文=ウラベ
編集=さまんさ
撮影=ツルタ

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