気・流れる身体
■ 平河出版社(1987年) |
実は学生時代に買って以降、拾い読みしながら、調べものの時にだけ使っていて、10年以上通読できなかった本だ。
石田先生の本は、凄いことが書いてあることはヒシヒシと伝わってくるのだが、人を寄せ付けない感じがあり、どうしても最後まで読めない。
石田先生が亡くなって、私の所属する会が追悼として、石田先生の本の紹介をしようという企画が立てられた。私はこんな機会でもないと通読できないと思い、一番ちゃんと読みたかった『気・流れる身体』を担当することにした。
締切日があれば読めると思ったのである。
しかし、いつまで経っても遅々として進まない。
結局発表日前日になっても終わらず、治療院の朝の準備をスタッフに全て任せて、近くのカフェ「プロント」にこもり、そこで一気に最後まで読破した。
そして、不覚にも人目を憚らず泣いてしまったのだ。
やりきった自分に感動したのではない。石田先生のまとめ上げた中国医学が考える「気」というものの素晴らしさに感動したのだ。
気とか衛気とか営気とか、それぞれの事は教科書で学ぶ。
しかしそれぞれがどのようにつながっているのかは分かりにくい。
この本は、気が身体とどうつながっているのか、感情とどうつながっているのか、自然とのつながり、宇宙とのつながりがどのようになっているのかというのを、細かく考察している。
自分が刺す1本の鍼が、身体にどう作用して、どう病気が治っていくのか。さらにそれが患者さんだけでなく、周りにどのように影響していくのか。
この本を読破した時にはっきりと見えた気がした。
そして、天・人・地のつながりが実感でき、すべてがひとつにつながった気がした。
この本を読んだ後、私は鍼灸師をやってて本当に良かったと思った。
私にとっては一生宝にしたい本だ。
なかなか読み進めるのは大変だが、ぜひ挑戦して欲しい本である。