治療家の手の作り方ー反応論・触診学試論ー
■ 形井 秀一(著) ■ 六然社(2001年) |
名人とか名医とか呼ばれる鍼灸師は、例外なく触診がうまい。
そういう先生は、身体を触診していると、患者さんが何も言っていないのに、「あ~そこです!」というツボを押してくる。
私は学生時代、ある先生の治療がよく効くのは分かるが、なぜそのツボを選ぶのかが分からず、「なんでそのツボなんですか?」と聞いた。
先生は
「ん? ん~、手が止まるんだよ」
さっぱり意味が分からない。
その後、自分でも治療するようになり、少しずつ分かるようになってきた。効果のあるツボは、他のツボとは違う反応が出ているのだと。
「反応論・触診学試論」という副題が付けらたこの本は、触診をどのようにしたら良いのか、〇〇の症状の時には、身体のどの辺にどのような反応が出るのかを研究した内容が書かれている。
まさに、治療すべき経穴に手が止まるようにするためのさまざまな工夫が載っている本だ。
この本は、学生が読むと学生なりの発見が、臨床初心者が読むと、初心者なりの発見が、臨床経験の長い先生が読んでも、その先生の経験に合わせた発見がある。
臨床に困った時に、悩みが出た時に、何度でも読み返したい本だ。
治療に必要な経穴に手が止まる、いわゆる「ツボにはまる」ようになるのは、まだゴールではない。
私が考える「治療家の手」は、触られるだけで安心し、それだけで患者さんが治った気になってしまうという手だ。
名人の先生の手は、触られるとそれだけで気持ちいい。
そこまで行けるように、節目節目でこの本を読み返して勉強したいと思っている。