津田先生、学会ってなんですか?【前編】/ハリトヒト。番外編

学会の内容ってどんなのがあるんですか?

津田先生
津田先生
ちなみにプログラムは、会員が自発的に発表する「一般演題」(およそ300演題)、その大会の実行委員会がテーマに沿って企画する「特別講演」や「教育講演」(6演題)、「シンポジウム」(6演題)、学会本部が毎年開催しているセミナー、ワークショップなどがあります。
あとね、ランチョンセミナーといって、お弁当がタダで食べられるセミナーもあります。
えー! お弁当がタダですか?
ウラベ
ウラベ
津田先生
津田先生
スポンサーの企業主催で、お昼ごはんの時間帯にセミナーを開催するのね。
そのときに、企業側がお弁当を提供してくれるの。
お弁当を食べながら聞くんですか?
ウラベ
ウラベ
津田先生
津田先生
そうだよ。みんなでモグモグ食べながら聞くんだよ。一緒に行ってお弁当、食べようよ。
お弁当付きセミナーかぁ…(遠い目)。
ウラベ
ウラベ
津田先生
津田先生
…。
ところでカテゴリーがいろいろあるんですね。「一般演題」ってどういうものが多いんですか?
ツルタ
ツルタ
津田先生
津田先生
「一般演題」は、会員が各自研究しているテーマなので、ありとあらゆるバリエーションがあります。
臨床研究から基礎研究、四診の研究から治療法、社会学的な研究に至るまで、臨床の役に立つ講演も多いですよ。
なるほど。現代医学、東洋医学など関係なく発表されるんですね。
ウラベ
ウラベ
津田先生
津田先生
そうそう。
テーマに沿った「特別講演」や「教育講演」は、その道のスペシャリストのお話なので最新の知識がよくまとまっていてわかりやすいのでオススメです。
「シンポジウム」は1つのテーマについて、複数の先生が講演して、そのあと議論されるので、立場の違いによる視点が立体的になってとても有益ですよ。
スペシャリストのお話って、ぼくらに理解できるんですかね。
ツルタ
ツルタ
津田先生
津田先生
本当に優れた先生は、すごくわかりやすくお話してくださいます。
聞き終わったあとは、知識が増えて、頭の中が整理されるのでオススメです。
よくわかっていない人ほど、話を難しくしてごまかす傾向がありますね(笑)。
先生の学会の話もわかりやすいですよ。愛がこもってて。
ウラベ
ウラベ
津田先生
津田先生
ほんと?! じゃあ、学会入る?
考えときますね(にこり)。
ウラベ
ウラベ
津田先生
津田先生
…。

臨床家の発表ってどうなんですか?

でも、臨床家が発表するのって、どうなんですか?
普段、臨床現場ばかりにいると、人前で発表するのって上手くできなさそうですけど。
ツルタ
ツルタ
津田先生
津田先生
ぼくが個人的に臨床家が発表する上でいちばん難しいと思うところは、「学術の作法に則らないと発表できない」ことかな。
というと?
ツルタ
ツルタ
津田先生
津田先生
「学術の作法」に詳しそうなのって、誰だと思う?
普段から研究しているような人ですか?
ツルタ
ツルタ
津田先生
津田先生
そうそう。大学の先生方が1番知ってるの。
で、ぼくら臨床家も、その作法に則って発表することになっているんだ。
自分には真似できないことかも。
ツルタ
ツルタ
津田先生
津田先生
そう。難しい。
でもさ、大学の先生方はその道のプロだから、作法に則って発表をおこなうのは当然なんだよ。
そして、ぼくらは参考にしなきゃいけない。臨床家側が努力しないといけないのはその点だね。
そりゃ、普段から研究しているような人にとって、学術発表は専門だから上手くやると思いますよ。
でも、鍼灸の本質って臨床にあると思うんですよね。ぼくはそう思いたいんですよ。
ツルタ
ツルタ
津田先生
津田先生
うんうん。キミの気持ちはよくわかるよ。
でも、研究者は発表が上手いだけじゃなく、やはり研究者ならではの発表をしている、ということは受け入れてみよう。
研究者の目線で臨床を「整理・評価・検討」して、発表をしている。
でも、客観的な評価じゃ伝わらないというか、研究の場にない「患者さんそれぞれの世界」ってありませんか?
…このニュアンス、上手く表現できないなぁ。
ツルタ
ツルタ
津田先生
津田先生
なんとなくわかるよ。
じゃあ逆にさ、臨床家がその「世界」を上手に伝えられたらいいと思わない?
臨床現場で起こったことを「物語」にして、研究者をはじめとする臨床家以外の人たちと、学会で共有できる方法を身につけるって、それこそ「学術」だと思うんだよ。
「物語の共有」?
ウラベ
ウラベ
津田先生
津田先生
そう。「物語の共有」って、すごく大事だよ。
「ナラティブ」って聞いたことないかな?
固く表現すると「質的研究」と呼ばれている臨床研究の手法なの。
近年、注目を浴びているんですよ。
エビデンスのように物事を数値で表す量的研究の手法と対比される考えなの。
そういう臨床研究もあるんですね。
ツルタ
ツルタ
津田先生
津田先生
うん。ぼくたちは臨床のプロだからね。1番現場を知っている。
「現場の情報を共有したい」、という一心でみんな研究を重ね、発表の場に立っているんだ。
臨床家が発表する上での努力は、なんとなく理解できました。
とはいえ、鍼灸って「鍼灸師の技術」によって、効果が全然違うと思うんですよ。
だから学会で、それぞれの事例を本当の意味で共有できているのか疑問です。
ツルタ
ツルタ
津田先生
津田先生
ほんとにキミは鋭いね(笑)。
ありがとうございます(笑)。
つい、鍼灸は学会よりも勉強会や師弟関係みたいな、もっと密な関係の方が合うんじゃないかなって思っちゃうんです。
ツルタ
ツルタ
津田先生
津田先生
そりゃ、学会だとすべてを共有はできないね。
でしょう?
ツルタ
ツルタ
津田先生
津田先生
でも表現できる範囲で、「言葉にする努力」って大切だと、ぼくは思います。
部分的でもいいから、言語化する意味があるということですか?
ツルタ
ツルタ
津田先生
津田先生
そう。言葉にならないニュアンス、たとえば手技の詳細や、東洋医学的な難しい話は勉強会で学ぶ。
それはそれでいいと思うよ。
ただ、学会では、できる範囲で言葉にしようとしているんだ。
いろんな先生が、臨床現場で起こっている内容の言語化に取り組んでいる。
「このニュアンスは伝わらないだろう」と諦めるのではなく、聞きにきた人たちに歩み寄って、自分の学説を伝えようとしている。
だから、みなさんにも学会へ来て、いろんな学説に触れてほしいなぁって思うんだよ。
たしかに言語化されなければ、興味を持つにいたらないというか、入口にさえ立てませんね。
ツルタ
ツルタ
津田先生
津田先生
そう。まず入口に立つことが大事なことなんだよ。
あとさ、それぞれの発表者の「感覚」ってどう表現されるのか、興味ない?
ありますよ。
ツルタ
ツルタ
津田先生
津田先生
学会にはね、「こんな風に患者さんに説明するとわかりやすくなるんだな」って参考になるようなお話がいっぱいあるよ。
それ、いいですね。
ウラベ
ウラベ
津田先生
津田先生
うん。格段に伝わりやすくなるからね。
あと、「こういう研究結果を学会で聞いたんですけど」ってお話すると、患者さんも治療に対して納得してくれるようになるよ。
なるほどなぁ。全部は共有できないけど、自分の臨床にうまく取り入れられる部分はありそうですね。
ツルタ
ツルタ

>>> 座談会 後編に続く!

■ (公社)全日本鍼灸学会公式サイト:http://jsam.jp/
■ 第68回(公社)全日本鍼灸学会学術大会 公式サイト:http://taikai.jsam.jp/

【記事担当】
取材=ツルタウラベゆうすけ
文=ツルタ・津田
撮影・編集=さまんさ

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