おすすめしたい本がたくさんありすぎて、絞り切れずに悩んだのですが、私自身が影響を受けた5冊をご紹介します。
中には手に取りづらい本もありますが、これまで先人がどのような想いをもって東洋医学を後世に残そうとしてきたのか、またどのように学問や教育が語り継がれてきたのか、その片鱗をお伝えできたらと願って、選ばせて頂きました。
(1) 新版 漢方の歴史──中国・日本の伝統医学
(2) 講座 近代日本と漢学 第3巻 漢学と医学
(3) 中国医学思想史―もう一つの医学
(4) 漢方概論
(5) 江戸の読書会
新版 漢方の歴史──中国・日本の伝統医学
■ 小曽戸 洋(著) ■ 大修館書店(2014年) |
東洋医学の歴史について、中国古代から日本近代まで概観できる書です。
わかりやすくコンパクトにまとめられているので、これから医学史を学びたいと考えている方に、おすすめです。
本書の特色は、一般向けの平易かつ端的な文章であるものの、主観的な視点によって論を飛躍させず、原資料に基づいて客観的に史実が記述されていることにあると考えています。
文献資料を博覧した上で取捨選択し、事実に基づき、真相・真理を究明する著者の学問姿勢は、まさに幕府直轄の医学校・江戸医学館の考証学派が標語とした「実事求是」(事実の実証に基づいて、物事の真理を追求すること。)を体現するものといえます。
「漢方」の「漢」とは、日本においては中国を意味し、中国に端を発して東アジアを中心に広がった東洋医学は、日本において「漢方」と称されてきました。
日本の伝統鍼灸は「漢方」の枠組みの中で、中国の影響を多く受けながら独⾃の発展を遂げて、今に至るといえるでしょう。
「日本の伝統鍼灸とは何か」を再考するためにも、漢方医学における歴史的変遷や日中の学問交流を理解することが重要だと考えます。