私だからこそできることがあるって思えるようになりました/鍼灸師:福森 千晶

「トレーナー」ではなく「鍼灸師」でいたい

卒業後は、どこかで勤務されたんですか。
ツルタ
ツルタ
福森先生
福森先生
いえ、自分で開業しました。出張を専門にしながら、主に母校の陸上選手に帯同してトレーナー活動をおこなっていました。スポーツの現場で脈診をするトレーナーはなかなかいないので、珍しがられましたよ。
アスリート相手にも経絡治療的なエッセンスでケアしていたんですね。確かに珍しいかも。
ツルタ
ツルタ
福森先生
福森先生
「体の状態を最初に診ますね」と言いながら脈診からスタートして、腹診や舌診などを通じて、相手の身体の状態を伝えるようにしています。試合の直前など、情報を入れないほうがよいときは、わかっていても言わないところはありますけど。
東洋医学によるスポーツコンディショニングですか。
ツルタ
ツルタ
福森先生
福森先生
「怪我して痛い」という選手にその場で対応することよりも、本番に合わせての日常的なケアをおこなうことに重きを置いています。それは、自身の選手時代からの教訓でもあります。
なるほど。現場での処置だけではなくて、その選手の状態や状況に合わせて、それ以前から鍼灸施術を含めたケアをしつつアスリートと並走するイメージですね。
ツルタ
ツルタ
福森先生
福森先生
「痛くても走れる状態にする」というのが、自分の得意分野ではないと思っていて。トレーナーというより、鍼灸師としての養生の観点で、アスリートに関われたら本当に最高だろうな、と常々思っていますね。

競技者を鍼灸で支えたい

鍼灸師がトレーナーとして、ケガをした選手の痛みのケアや運動機能の回復だけでなく、中長期的なコンディショニングまでおこなっているケースって、日本のアマチュアスポーツではまだまだ少ない気がします。
ツルタ
ツルタ
福森先生
福森先生
私もそう感じます。
スポーツの現場で脈診を用いて、その役割を福森さんが今担っているのは、ご自身が選手として、過去に体験したつらさも関係していると思うのですが…。特に女性アスリートをケアするときに気をつけていることはありますか。
ツルタ
ツルタ
福森先生
福森先生
女性のアスリートは月経にトラブルを抱えがちなので、必ず問診で確認するようにしています。無月経や不正出血など、自分で問題を自覚している選手もいれば、よくない状態にいることに気付いていない選手もいます。トレーニングによる心身への悪影響を拾い上げていくのも、アスリートをケアするうえでは、欠かせないことじゃないかと思いますね。
そこに注目するのは、競技経験の豊富な女性鍼灸師ならではかもしれませんね。
ツルタ
ツルタ
福森先生
福森先生
スポーツの現場では、男性のトレーナーが大半なので、女性アスリートのケアは不十分なところがあると思います。
それは、私だからこそできることなんじゃないか、と思えるようにはなってきました。自分を癒すっていう意味は多分そこにも含まれているんだと思います。
今日のお話を踏まえて、あらためて日本的な部活動にもっと鍼灸師の持つ東洋医学的な発想を持ち込めたらいいんじゃないかなと思いました。特に、女性アスリートの心身の健康については、これからさらに重要性が高まってくる分野だと思います。
あとやっぱり、アスリートは1つの目標にひた走ることが求められるし、それが大事だったりするんだけど。だからこそ、思い詰めてしまう学生アスリートが少なからずいるんですよね。
ツルタ
ツルタ
福森先生
福森先生
その通りですね。「無茶をしないと記録が伸びないから仕方がない」と現役のときは思ってしまったりもするんですけど、その後の代償はやはり大きいです。そして、競技者としての人生よりも、競技を終えたあとの人生のほうが長いわけです。それは、女性だけではなく男性アスリートにも、もちろん言えることです。
私一人が活動できる範囲内にはなるんですけど、まずは、出会えた選手たちの話をちゃんと聞く。そのことを常に心がけながら、同じ想いを持つトレーナーとの連携も、今後は広げていきたいと思っています。

取材協力:滝仙寺

【記事担当】
取材 = ゆうすけタキザワツルタ
撮影 = タキザワ・ツルタ
文    = くちやまだ
編集 = ツルタ

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