抱え込まない。だけども見捨てない/鍼灸師:粕谷 大智

新潟で始まる新たなチャレンジ

これから先のお話もうかがいたいです。粕谷先生、新潟に行かれるんですね。
ゆうすけ
ゆうすけ
粕谷先生
粕谷先生
そうなんです。2年前に、新潟医療福祉大学の学長から「鍼灸学科ができるので初代の学科長として来てもらいたい」というお話をいただきました。
すごいですね。なぜその誘いを受けることに決めたんでしょうか。
ゆうすけ
ゆうすけ
粕谷先生
粕谷先生
理由の1つは、大学の構想を聞いてみて、新しい鍼灸師が育つ可能性があると感じたからです。新潟医療福祉大学の母体は、NSGという大きなグループで、5つの医療機関と100以上の介護福祉施設も運営しているんです。なので、鍼灸学科を卒業後は、グループの医療機関や介護福祉施設でも活躍できる土壌があります。また、チーム医療を意識した科目を用意していると聞いて「ここで教育を受けた学生たちは、チーム医療が当たり前という考えを持てる」と感じました。
なるほど。
ゆうすけ
ゆうすけ
粕谷先生
粕谷先生
もう一つの理由は、NSGグループが、新潟市に筑波大学の学園都市のようなものを作ろうと構想していたからです。健康共生科学研究所というのを立ちあげて、重症化させない体づくりを新潟から発信していこうと。それで一緒に研究してくれと言われて、「自分の東大での経験を、最大限に生かせる可能性があるんじゃないか」と思いました。やりがいがあるなって。
かなり大きなプロジェクトですね。
ゆうすけ
ゆうすけ
粕谷先生
粕谷先生
学長から「あなたが東大でやっていたことを私たちは評価しているので、ぜひ新潟でもやってもらいたい」と言っていただけて、嬉しかったですね。鍼灸師冥利に尽きます。このプロジェクトを聞いて、第2のキャリアじゃないですけど、また気持ちを新たに頑張っていきたいなと思いました。臨床にも取り組めるので、今改装中の新潟駅前治療院や大学前の付属センターをはじめとして、いろいろな医療機関に関わっていきます。
学科長になっても臨床に取り組み続けるんですね。新たな発信も楽しみにしています。
ゆうすけ
ゆうすけ
粕谷先生
粕谷先生
「新潟スタディ」みたいな形で、積極的に発信もしていきたいと思っています。たとえば、心身が辛い状態で仕事を続けていると能率が下がって、お金に換算すると1人頭の稼ぎ高が下がることがわかっているんです。そこに介入して、鍼治療によって経済損失が多少改善するとしたら、それもアピールになりますよね。そういうことを新潟から全国へ発信するだけでも、鍼灸の注目度は高まるんじゃないかと思っています。
そんな未来が十分起こりえそうな気がします。
ゆうすけ
ゆうすけ
粕谷先生
粕谷先生
ちゃんと結果を出すことが私の使命だと思っているので、フロンティア精神でがんばりたいです。鍼灸業界自体を盛り上げていきたいですね。

大切なのは「常に寄り添う姿勢」

33年間を振り返って、何か思い浮かぶ言葉はありますか。
ゆうすけ
ゆうすけ
粕谷先生
粕谷先生
メインは臨床をやってきたので、「抱え込まない。だけども見捨てない」っていうことかな…。特にリウマチの患者さんの治療をする中で思ったんですよね。患者さんを抱え込んで、鍼だけでリウマチを治そうとすると、患者さんにもつらい部分がでてきてしまう。だから、抱え込まない。でも見捨てませんよっていう。
医療連携を進められてきた思いの原点が、そこにあるんですね。
ゆうすけ
ゆうすけ
粕谷先生
粕谷先生
患者さんに対して「あなたにちゃんと寄り添っていますからね」という姿勢を常に持てる人であれば、ほかの医療職との連携もうまくいくはずです。おのずとコメディカルの一員として迎えられ、鍼の良さにも気付いてもらえる。私はそう確信しています。

取材協力:東京大学医学部附属病院

【記事担当】
取材 = ゆうすけタキザワツルタ
撮影 = ツルタ
文=なるみさわ
編集 = くちやまだ

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