東京大会では「腰痛」のプログラムが充実
「SMART」をはじめに、今回の全日本鍼灸学会は見どころが多いですね。
タキザワ
菊池先生
なんといっても腰痛の第一人者である故菊地臣一先生の特別講演「非特異的腰痛の病態と治療戦略」は必見です。先生は今年2月にご逝去されましたが、生前に本学会用の収録をされていました。今回、財団とご家族の許可を得て、その録画を特別講演として披露させて頂けることになっています。
それはとても貴重ですね。特別講演は必ずチェックします。それにしても東京大会は腰痛のプログラムが充実しているように思いました。
タキザワ
菊池先生
臨床スキルアップ講座として白土修先生(福島県立医科大学会津医療センター)が「腰痛に対する包括的治療法」を、基礎講座として山下仁先生(森ノ宮医療大学)が「最近の腰痛に対する鍼治療のエビデンス」をおこないます。
続いて、腰痛のガイドラインでの非特異的腰痛の85%は原因不明の定義を見直すきっかけとなった「山口県腰痛スタディ(The Yamaguchi Low Back Pain Study)」について、鈴木秀典先生(山口大学整形外科講師)に教育講演を行ってもらいます。題して「山口スタディからみる腰痛診療の現状と課題 -非特異的腰痛の分類と鑑別-」です。
続いて、腰痛のガイドラインでの非特異的腰痛の85%は原因不明の定義を見直すきっかけとなった「山口県腰痛スタディ(The Yamaguchi Low Back Pain Study)」について、鈴木秀典先生(山口大学整形外科講師)に教育講演を行ってもらいます。題して「山口スタディからみる腰痛診療の現状と課題 -非特異的腰痛の分類と鑑別-」です。
腰痛についてかなり学べそうです。加えてシンポジウムもあるとはすごい。
タキザワ
菊池先生
シンポジウム「腰痛に対する鍼灸治療の展望」では、赤坂清和先生(埼玉医科大学保健医療学部教授)、井上基浩先生(宝塚医療大学保健医療学部鍼灸学科教授)、近藤宏先生(筑波技術大学保健科学部保健学科鍼灸学専攻准教授)、そして私の4名が登壇させて頂きます。それぞれ発表をおこなったあとに、それを踏まえて意見交換をおこないます。
腰痛だけではなく、うつ病やレディース鍼灸についてのプログラムも多彩ですね。
ツルタ
菊池先生
そのあたりの分野は「興味があるけれども、ちゃんと学んだことはない」という人が多いんじゃないかなと思います。まず医師から疾患の総論を学んで、次に鍼灸について学ぶ形になっています。医学的観点から学びやすい学会形式ではないかと思います。
現時点では、オンラインと現地のハイブリッド開催なので、遠方の方でも参加しやすいのがいいですね。開催が待ち遠しいです。
タキザワ
国が指定する鍼灸の学会は全日本鍼灸学会だけ
全日本鍼灸学会は、ほかの鍼灸学会とは違うと聞いたことがあります。
タキザワ
菊池先生
鍼灸には「学会」の名がつくものがたくさんあるのですが、国から公的な学会に指定されているのは実は一つで、「全日本鍼灸学会」だけなんです。ここでの公的な学会とは、日本学術会議の「日本学術会議協力学術研究団体」にあたります。
学術研究団体の特徴というのは、どういったところにあるのでしょうか。
ツルタ
菊池先生
良いところは、他学会や政治団体などと協働できることです。これは鍼灸業界の課題や未来を考えたときに、大きなメリットだと思います。実際に、全日本鍼灸学会は、日本自律神経学会や日本頭痛学会などとコラボしながら、医療連携を進めてきました。3月には、日本生理学会ともコラボします。
全日本鍼灸学会の担う役割は大きいということですね。もちろん、いろんな立場の違いがあるとは思うけど、全日本鍼灸学会の活動が鍼灸の普及につながっていることは、客観的な事実だと思うんです。
ツルタ
菊池先生
例えば、私たちがどれほど多くの頭痛患者に対して鍼治療をしていても、頭痛学会の医師の多くは「鍼灸院に頭痛患者さんて、行くんですか?」という認識なのが現状です。
その他さまざまな疾患においても、鍼灸治療は社会的な評価が低すぎると思います。
ツルタ
菊池先生
なぜかといえば、可視化されてないからなんですよ。可視化されていなければ、どれだけ現場で治せていても「ないこと」になってしまう。
現代医学からみれば、鍼灸はまだまだ知られていませんから、発信していくことが重要ですね。受身でいても何も変わらない。
ゆうすけ
菊池先生
だから、まずは全日本鍼灸学会を盛り上げて、みなで議論を重ねることが重要です。その小さな一歩が、鍼灸業界にとって、ひいては、医療全体にとって大きな一歩につながっていく。私はそう信じています。ぜひ全日本鍼灸学会のSMARTで「臨床研究」を可視化するためのお作法をともに学びましょう。
取材協力:日本鍼灸理療専門学校
【記事担当】
取材 = ゆうすけ・タキザワ・ツルタ
撮影 = ツルタ
文 = 山口智史
編集 = ツルタ
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