お灸は私の生きる道/鍼灸師:越石 まつ江
お灸で大切なのは「種類」「温度」それから「リズム」
ただ、お灸もやり方によっては効かないんです。悪化させてしまう場合もあるので、ちゃんとしたやり方を伝えるのも私の役割だと思っています。ですからお灸の感覚を伝えるために、対面でセミナーを実施することにこだわっているんです。
越石式のセミナーを対面でやっているのは、「伝えたい」っていうことなんですね。先生のおっしゃる「お灸のちゃんとしたやり方」っていうのは、どういう意味なんですか。
種類と温度と、それからリズムが大事だと思っています。種類はお伝えしたように糸状灸と多壮灸。糸状灸は6通り、多壮灸は3通りの温度にしています。それと、最後はリズムなんですよね。のろくてもダメ、はやくてもダメ。
どうやって使い分けているのか、とても気になります。
炎症性のもの、例えばぎっくり腰の人なんかは、糸状灸の温度のないものをやります。それで効かないときには、同じ温度を重ねるだけなんですよ。ぬるい糸状灸を3~4回やっていくうちに治りますよ。よくなってきたら少し熱めにして、奥まで届くようにして。表層は炎症を起こしていますから、軽くしていって表層が治ってきたら奥まで入れてあげる。
勘所みたいのがあるのでしょうね。対面で伝えることにこだわる理由がわかりました。
自分を信じる。お灸を信じる
私の生きる道ですよね。お灸があったから生きているようなものなんですよ。
先生のエピソード全部は記事に載せきれないけど、波瀾万丈な人生ってやつだと思いました。
私は図々しいんですよ、本当に。自分を信じているの。
お子さんたちも鍼灸師として活躍していますが、それは自然とそうなったっていう印象ですか。
そうですね。次女の直巳(三村直巳先生)も灸研究と鍼灸学校の教師へと自然とそうなったし、長女の江里は「お母さんがこんなに頑張っているのに、1代で終わらしたらもったいないって思った」って。
ご家族でお灸を信じて取り組んでいるってことですね。
今の夫も鍼灸師ですが、今年は元旦から具合が悪かったんですよ。それで2回も救急車で運ばれたのね。1月中は具合が悪くて。これ死ぬなと思ったんですよ。私が「お灸しようか」って言って、その日は1日3回やりましたけど、4日間お灸をしたら良くなって。
一貫性を感じます。「鍼灸いいよ」なんて言って商売するのに、自分や家族にしないっていうのは変な話ですもんね。
やらないほうが損ですよね。私も1年前に大腿骨頭を骨折したんですけど、毎日お灸をしていますから。「自分を信じる。お灸を信じる」がモットーですね。
これから鍼灸師になる人や、若手鍼灸師に何か伝えたいことはありますか。
きちんとしたお灸をしてください、と伝えたいですね。そのためには、感性を養うことです。感性があれば、お灸の効果を感じ取ることができますので。
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