挫折から生まれた研究
大学卒業後に大学院へ進学されたのは、どんな理由があったんですか。
ゆうすけ
脇先生
理由は大きくふたつあります。ひとつ目は、大学4年生の時に卒業研究をして、研究の面白さを知ったからですね。それで大学院に魅力を感じるようになりました。ふたつ目は、母校の大学の先生になりたいと思っていたからです。大学院へ進んで博士号を取らないと教員になれなかったんですよ。なので、必然的に大学院へ進学しないといけなくて。もう少し鍼灸を追求してみたいっていう想いと、大学の先生になって研究の面白さを伝えていきたいっていう想いがありましたね。
鍼灸と母校への愛情を感じるエピソードですね。大学院は優秀な人が進学するというイメージなんですが、実際はどんな人が向いていると思いますか。
ツルタ
脇先生
優秀か優秀じゃないかだけでなく、興味を持ったものを追求していけるかどうかが大切だと思います。例えば好きな科目はオールSだけど、他は一切できませんみたいな人。はまったらとことん突き詰めるような人も、大学院には向いているのかなと思います。
総合評価は高くなかったり、何かすごく苦手なことがあるような人でも、大学院での研究は向いているかもしれないっていうことですよね。なんだか勇気づけられる人もいそうです。
ツルタ
脇先生
「変わっている」って思われているような人でも、大学院でポジションができ上がりますし、尖った部分も生かしてもらえるんじゃないかなと思います。でも、ちょっと興味あるなとか、すぐ就職も違うかもしれないっていうくらいの人でも、僕としては入って欲しいです。実際そんなに強い思いがなく入学した院生も見てきたんですけど、研究にはまっていく人もいたので。
脇先生は大学院で、実際にどんな研究をされていたんですか。
ツルタ
脇先生
最初はスポーツトレーナーに興味があったので、スポーツに関わるトレーニングとかを勉強していました。その後、「コンディショニングには免疫が大事だ!」と思うようになって、免疫に関する研究を中心に行っていました。そこから免疫を下げる高強度の負荷、つまりストレスの研究へと発展していって、今はメンタルヘルスの悪化につながるストレスの研究に力を入れています。
現在のストレスの研究に力を入れるようになったきっかけは、何かあったんですか。
タキザワ
脇先生
僕自身、大学院時代にメンタルの不調を経験しているんです。当時は、すごい先生方に追いつきたいという気持ちが強く、睡眠時間を削って研究に没頭していました。治療院でのバイトも並行していたので、いろんな面で追い詰められていった感じですね。
そんな過去があったんですね。
ツルタ
脇先生
でもこの経験が、今のストレスの研究につながりました。僕と同じように、メンタルヘルスが悪化してしまった方をサポートしたいという思いで、研究に取り組んでいます。
鍼灸師がメンタルサポートに携わるために
メンタルヘルスの問題で悩む人たちをサポートするために、鍼灸師は治療や研究の他にどのようなことができると思いますか。
ツルタ
脇先生
そうですね。鍼灸師って治療しながら話を聞くじゃないですか。だからメンタルサポートができる状況にあると思っていて、患者さんにどんな言葉をかけるのが良いか学ぶことも大切だと思っています。
たとえば、千葉大学では、認知行動療法について学べる「メンタルサポート医療人(通称メンサポ)養成コース」があるんですよ。ここには多職種の人たちが集まっていて、修了後も定期的に集まって勉強会をしています。学ぶことで、鍼灸の現場で、認知行動療法や心理ケアを取り入れることができますし、それが普通になれば嬉しいですね。
たとえば、千葉大学では、認知行動療法について学べる「メンタルサポート医療人(通称メンサポ)養成コース」があるんですよ。ここには多職種の人たちが集まっていて、修了後も定期的に集まって勉強会をしています。学ぶことで、鍼灸の現場で、認知行動療法や心理ケアを取り入れることができますし、それが普通になれば嬉しいですね。
これはまさに鍼灸師にうってつけの学びだと思います。メンサポの養成コースは、どれくらいで修了できるんですか。
ゆうすけ
脇先生
今はオンラインで受講して、1年で修了できます。千葉大学以外にもいくつかの大学でも行われていますし、学会でも開催しています。これから認知行動療法などを取り入れていきたいと思っている先生に、メンサポ養成コースのように学べる場所があるっていうのを知らせていきたいですね。