事故が起きたときに問われる「医療機器かどうか」
安い赤外線とか電気毛布とか、医療機器じゃないけど、治療院で使えそうな電化製品ってどうなんですか。
ツルタ
甲斐さん
ありますね。例えば、医療機器ではない温熱器を患者さんに使って、やけどを起こした時、誰が責任を取るつもりなのか、逆に聞いてみたいです。
事故の責任…。
ツルタ
甲斐さん
医療事故が起きた時に、医療機器じゃないモノを使用していたら、不利になってしまうのが実際の問題です。
管理医療機器の赤外線を正しく使っていたけど、やけどさせてしまったとすると。
ツルタ
甲斐さん
その場合は、その器具がPL保険に入っていて、正しい使い方をしていれば対応可能な場合もあります。
PL保険に入っている医療機器を、通常の方法で使用して患者さんにやけどさせたのであれば、そういう保険が適用されるであろうと。
ツルタ
甲斐さん
そうです。
もし医療機器ではない赤外線でやけどさせた場合は、どうなりますか。
ツルタ
甲斐さん
それはライトを当ててやけどさせたってことですよね……。
うーん。かなり怖いことをしているのかも。医療機器以外を使うリスクについて、深く考えたことなかったです。
ツルタ
甲斐さん
極端な話、事故さえ起きなければ何を使おうと問題にはなりません。だからこそ、危険なんですね。医療従事者として、ちゃんとしたものを使うっていうところを、今一度考えていただきたいですね。
セルフケア用の鍼を治療院で販売するのは?
甲斐さん
大きな問題なのが、販売です。鍼灸師さんや柔整師さんで、いろいろ販売もやっている先生はいますよね。
患者さんのセルフケア用に、とか…。
タキザワ
甲斐さん
一般医療機器を販売するのはOKですけど、管理医療機器を販売するためには「管理医療機器販売業・貸与業の届出」や、扱う医療機器によって「管理者の設置」が必要になります。
売って良いモノと悪いモノがある。
タキザワ
甲斐さん
例えばパイオネックスって皮膚に刺入しますよね。これは管理医療機器なので無許可で販売してはダメなんです。
こりスポットのような、皮膚に刺入しない接触タイプはどうですか。
ゆうすけ
甲斐さん
侵襲性がなければ、一般医療機器になります。これは基本的に治療院で販売してもOKです。
管理医療機器は患者さんにでも無許可で売ったらまずいってことですね。
ゆうすけ
甲斐さん
シンプルに言えばそうです。
でも、ドラッグストアで管理医療機器の円皮鍼を一般向けに売ってますよ。
ツルタ
甲斐さん
その薬局が販売の許可証を持っているということです。
なるほど、販売許可のある薬局で、セルフケア用に販売しているってことですか。
ツルタ
甲斐さん
よそのお店で売っているから鍼灸院で売っても良いわけじゃないので、注意が必要なところです。
長年の謎が解けました。
ツルタ
甲斐さん
疑問にすら思わない方も多いと思います。我々は販売のプロなので、それを心得ているんですけど、一般の鍼灸師とか医療従事者は、そこまで気がいかないのも、無理はないのですが…。
なかなか聞く機会がないので。
ツルタ
でもルールは知っておかないとまずいですね。
ゆうすけ
ダメ、ゼッタイ! 鍼の転売
甲斐さん
もう一つ、やめてほしいのは、鍼灸用品、特に鍼の転売ですね。
鍼を勝手に売る人がいるんですか?
ゆうすけ
甲斐さん
最近はネットのフリマなどで簡単に出品できちゃうじゃないですか。当然ながらネットに限らず、管理医療機器は転売もNGです。
便利になった分、そういう問題が出てきているんですね。
ゆうすけ
甲斐さん
一番衝撃だったのは、学会とかでメーカーさんがサンプルを配りますよね。あれをたくさん集めて売っていたケースがあって…。これには、びっくりしました。
それはやめろ。
とはいえ一般医療機器なら出品可能ってことですか。
とはいえ一般医療機器なら出品可能ってことですか。
ツルタ
甲斐さん
やるとしたらですが。でも、売るのも買うのもやめた方がいいです。結局、どのように保管されていたかわからないので、医療系の物品は信頼できる業者を通しましょう。
届出等が必要となる医療機器の販売事例(家庭用マッサージ器等)
https://www.fukushihoken.metro.tokyo.lg.jp/smph/kenkou/iyaku/koukokukisei/zenpanfrima/youtodokedekiki.html
(東京都福祉保健局ホームページより引用)
そりゃそうだ。
ツルタ
甲斐さん
あとは、例えば廃業するから赤外線治療器を臨床家仲間に譲るとかも、本来はよくありません。
そういうケースはけっこうありそう。
タキザワ
甲斐さん
違反って言うとちょっとオーバーですけど、管理医療機器の赤外線とかって、シリアルナンバーがついていて、購入者の名前を控えてあるんですよ。
製品に何かあった時に追跡するために。
ゆうすけ
甲斐さん
そうです。だから、誰かに譲る場合は、一回メーカーで全部点検して、保証も新たに取得して新たなユーザーと紐づけする必要があります。でも譲渡や転売で所有者が変わってしまっていたら追えないですよね。
なるほど。
タキザワ
甲斐さん
こういう場合は、修理対応できないことが多いです。あとはパルスも特定保守管理医療機器になるんで、譲渡はしないほうが無難です。仮に事故が起きてしまった時に、シリアルナンバーと使用者が一致しないと、PL保険での補償で不利になる可能性があります。
NEXT:鍼のロット番号は品質管理のために必要