鍼灸の資格は、めちゃくちゃでかいですよ。 /日本オリンピック委員会(JOC)医科学強化スタッフ:鳥居 明

2006年のトリノ、2010年のバンクーバー、2016年のリオデジャネイロオ、2018年の平昌…これまで、鍼灸師の鳥居明氏は数多くのオリンピック、パラリンピックにトレーナーとして帯同してきました。
7月の東京オリンピックでは、男子ウエイトリフティングチームのサポートする予定で、来月からは、ウズベキスタンで行なわれるアジア選手権に帯同、その後はコロンビアの大会に帯同する予定だそうです。

そんな国際経験豊富な鳥居氏に、これまでの歩みと世界で活躍するトレーナーになるために大切なこと、また現場での苦労などを聞いてきました。

鳥居 明(とりい あきら)先生

【帯同歷】
トリノオリンピック&パラリンピック
バンクーバーオリンピック&パラリンピック
リオデジャネイロオリンピック&パラリンピック
平昌オリンピック&パラリンピック
東京オリンピック&パラリンピック(予定)
北京オリンピック&パラリンピック(予定)
インドネシアジャカルタアジア競技会
台湾ユニバーシアード大会
世界選手権(ヒューストン・トルクメニスタン・アナハイム・中国・タイなど)
アジア選手権(ウズベキスタン・トルクメニスタン・中国など)
その他ワールドカップ・東アジア選手権・全日本選手権など多数帯同
・海外での日本代表合宿(オーストリア・アメリカ・ポーランド・ドイツなど多数)
【セミナー】
東京・沖縄・北海道・新潟・京都でスポーツ鍼灸セミナーを展開
【筋膜リリース】
オリジナルブランド「Flat&Wave Edge」を製作・販売・セミナーを実施
JOC(日本オリンピック委員会)医科学強化スタッフの委嘱を2010年から11期連続
現在「Kona スポーツ鍼灸研究室」を都立大学と参宮橋で展開
2017年より国立スポーツ科学センター ハイパフォーマンス・サポートスタッフ
味の素ナショナルトレーニングセンターにてウエイトリフティング日本代表トレーナー

 

トレーナー活動をしながら学校に8年通った

鍼灸学校には、スポーツトレーナーになりたい学生が多くいます。どんな経緯で、オリンピックに帯同するトレーナーになれたのかをお聞かせください。
タキザワ
タキザワ
鳥居先生
鳥居先生
トレーナーになりたいなら、鍼灸学校に入学したのは正解だと思いますよ。僕の場合は、もともとスポーツが好きで、体育大学の出身です。その後、国際的な大きな財団法人に勤めて、今でいうアスレチックトレーナーのような仕事をしていました。
鍼灸学校に入る前から、トレーナー活動をされていたんですね。
タキザワ
タキザワ
鳥居先生
鳥居先生
そうです。トレーニングルームで指導をしたり、水泳やスキーを教えたり…。社会人として働いていたんです。転機は20代の終わり頃です。財団でハワイ島に出向する公募があったので、それに応募したんですよ。当時、まだ日本ではあまり知られていなかったパーソナルトレーニングのことをアメリカで学べるチャンスだと思いました。
アスレティックトレーナーの本場、アメリカで学べるのは貴重ですね。どんな変化がありましたか。
タキザワ
タキザワ
鳥居先生
鳥居先生
帰国後、もとの職場で働くうちに、「やっぱり医療資格も欲しいな」と感じるようになりましたね。それで、財団を退職し、トレーナーで個人事業主をしながら鍼灸の専門学校に通うことにしたんです。鍼灸の資格を取った後は、直ぐに開業をしました。
大きな決断をされたんですね。
タキザワ
タキザワ
鳥居先生
鳥居先生
鍼灸の勉強をやってみると面白くて…。教員養成課に行って鍼灸の教員免許も取ることにしたんです。さらに、養成科を出てからは、治療院での臨床と学校で非常勤講師をやりながら柔道整復師の学校にも行ったので、呉竹には合計で8年間通っています。
8年間! その間もトレーナー活動はされていましたか。
タキザワ
タキザワ
鳥居先生
鳥居先生
トレーナー活動自体は学校に入る前からやっていましたから、柔整学校に通いながら、アスリートたちをたくさん診ていました。スキーの技術選手権という競技で何連覇もした有名なトップ選手のパーソナルトレーナーもしていましたよ。

セオリーが通用しない「パラリンピックへの帯同」

学校に入る時点で現場経験があると、学んでいることが即、実践に結びつきますから、目的意識が明確になりますよね。
ゆうすけ
ゆうすけ
鳥居先生
鳥居先生
学校に行きながら、トレーナー活動をしているうちに「今度、トリノにトレーナーで行かないか」という話がでてきたんです。それで、トリノのパラリンピックに帯同することになってから、今に至るまで、オリンピック関連の仕事が繋がっているような感じです。
どうして声がかかったのでしょうか。
ゆうすけ
ゆうすけ
鳥居先生
鳥居先生
僕自身もスキーが好きで、スキーの準指導員とスキー公認パトロールの資格を持っていて、アキヤボートで怪我人の搬送もできます。それに鍼灸という医療免許を持っていて英語も多少できました。いろいろと使い勝手が良かったんじゃないでしょうかね。
引き出しの多さが買われたんですね。
ゆうすけ
ゆうすけ
鳥居先生
鳥居先生
ただ、実際は現場で初めて経験することばかりでしたよ。僕は、競技団体の選手団のサポートメンバーとして参加しましたが、パラリンピックの担当でしたから、教科書通りには全くいきませんでした。
具体的には、どんな点で苦労されましたか。
ゆうすけ
ゆうすけ
鳥居先生
鳥居先生
パラリンピックだと、脊髄損傷や四肢切断の選手もいますからね。
そうですよね…。
ゆうすけ
ゆうすけ
鳥居先生
鳥居先生
例えば、脊髄損傷で麻痺があって感覚がないはずなのに、腰が痛いと言われるんです。僕も正直、半信半疑で腰に鍼を打ちました。そうすると「すごく良くなりました」と言ってもらえる。あと、切断の選手が、無い方の足の先が痛いとか。
「幻肢痛」をスポーツの現場で、どうやって治療されたんですか。
ゆうすけ
ゆうすけ
鳥居先生
鳥居先生
鏡を置いて反対の足を映しながら治療をすると言いますけど、そんなことはやらないで、反対の足に鍼をしてみたり。効果は、あったりなかったりでしたけどね。現場でなんとか工夫するしかないんですよ。そこで、だいぶ鍛えられました。

NEXT:オリンピックへの道が開けたトライアウト

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