鍼を受けてる時間って、こんなに気持ちよくて幸せなんだ(前編)/鍼灸師 中根 一

こんにちは、ハリトヒト。ライターのスキカラです。
今回お話をお聞きしたのは、京都市で開業されているの中根 一(なかね はじめ)先生。
2019年7月に公開した対談「タダシい学びのハジメ方」にもご登場いただいております。

弟子入りという、現在では少なくなった形で鍼灸師としてのキャリアをスタート。
現在は京都のビジネス街・四条烏丸(しじょうからすま)の一等地に居を構え、「鍼灸Meridian烏丸」の院長を務められています。
その活躍は臨床だけに留まらず、書籍の執筆や企業のサポートなどなど…様々な分野に広がります。

仕事ぶりだけではなく、鍼灸師らしからぬスマートな装いや独特な美学も含めて、わたしが憧れる鍼灸師のひとりです。
独自のスタイルはいかにして形作られたのか?
4時間におよぶ超ロングインタビューで、その秘密が少しずつ明らかになっていきます。

前後編の2本立てです。
まずは前編「医療とは?」「遊びとは?」。
目から鱗の内容です。ご覧ください。


中根 一(なかね はじめ)先生

鍼灸Meridian烏丸 院長
株式会社 Fiero Care&Cure Resource 代表取締役
明治鍼灸大学(現・明治国際医療大学)卒
明治東洋医学院専門学校 教員養成科卒
鍼術丹波流宗家 岡田明祐師・岡田明三師に師事
ロート製薬『Smart Camp ホリスティックラボ /鍼灸』 監修
経絡治療学会 理事・関西支部長・夏期大学講師
全日本鍼灸学会 会員
統合医療学会 会員
撤退の農村計画 現代山村型鍼灸師プロジェクト班長

問いを立てていたじゃん。「おかしくないですか?」っていう問いを

今日はよろしくお願いします。
スキカラ
スキカラ
中根先生
中根先生
よろしくね。
インタビューの前に、先生にはお礼を言わないといけないことがありまして。
初めてお会いした鍼灸フェスタの時のことですなんですが。
スキカラ
スキカラ
中根先生
中根先生
去年の?
そうです。2018年におこなわれた、鍼灸フェスタのショーバザールの時。
ラストのセッションで僕が「もっと伝わる鍼灸」というテーマで1時間半すべり倒して、翌日熱を出した時のことです。
スキカラ
スキカラ
中根先生
中根先生
えっ! 熱出たの? ほんとに?
ほんとです。すべりすぎて翌日熱が出ました。
スキカラ
スキカラ
中根先生
中根先生
なにそれ? かわいいな(笑)。
セッションが終わって引き上げている時に、中根先生がすーっと近づいてきて「鋤柄(すきから)くんよかったよ」って声をかけてくださったんです。
なんて優しい先生なんだと思ったんですけど、あまりにも心が弱っていたので素直に受け取ることができなくて…「どこがよかったんですか?」って聞き返しちゃったんですよね。
今思うとやめとけよって話なんですけど(笑)。
スキカラ
スキカラ
中根先生
中根先生
たしかに、そんなことあったね(笑)。
あの時はたしかに反応がいまいちだったかもしれないけどさ、鋤柄くんは問いを立てていたじゃん。
「もっと伝えないといけないんじゃないですか? おかしくないですか?」っていう問いを。
ありがとうございます。
スキカラ
スキカラ
中根先生
中根先生
あれは愚痴じゃなくて、問いだったから。問いが立たないってことは、前例に習うしかないから、何も変えられないじゃない。
前例に習うことも大事だけど、全員がそうだったら、時代が移ろい鍼灸に求められるものが変わったときに、対応できなくなっちゃう。
なんで生き物に多様性があるかといったら、環境が変わっても誰かは生き残れるようにするためでしょ。
生き物の進化の基本ですね。
スキカラ
スキカラ
中根先生
中根先生
だから問いを立てて、「これまでのままでもいいけど、もっと違う提案ができるんじゃない? だとすれば、どんな変わり方ができるの?」というディスカッションができるのって健全だな、と思うの。
時代の流れの中で消えてしまうことがあるなら、もう仕方ないじゃん。
僕はいつも僕の視座から問いを立てて、その問いに対する回答を模索しているんだけど、なんだかよく似てるなと思ってさ。
救われた気分です。それこそ問いって、僕の中ですごく興味のあるテーマなんです。
問いには「筋の良い問い」と「筋の良くない問い」があると思っていまして。
そして、僕にとって「筋の良くない問い」の代表格が「どうやって鍼灸の受療率を上げるか?」なんですよ。
スキカラ
スキカラ
中根先生
中根先生
なるほど。
問い自体が、僕ら鍼灸師が軸となる問いになってしまっていて、受療される方々のことを考慮していない感じがするんです。
なおかつ、今まで賢い人たちがずっとそれにトライしているのに、成果が出ないということは、問いの設定が悪いだろっていう。
スキカラ
スキカラ
中根先生
中根先生
だよね。
そうなんですよ…。
スキカラ
スキカラ
中根先生
中根先生
できるはずだという信念が、きっと強すぎるんだろうね。
そうなんです。
スキカラ
スキカラ
中根先生
中根先生
あ、いいのかな? こんなこと喋っちゃってて。
鋤柄先生の意見なんで。
天の声
天の声
中根先生
中根先生
そりゃそうだ(笑)。

NEXT:「医療」ってなんだろうね

1

2 3 4
akuraku3.jpg

関連記事

  1. 「ない」ことベースでやっています/鍼灸師:三輪 正敬

  2. 鍼を受けてる時間って、こんなに気持ちよくて幸せなんだ(後編)/鍼灸師 中根 一

  3. これからの「鍼灸」の話をしよう(後編)/鍼灸師:伊藤 和憲

  4. 教員養成科という選択肢があることも知ってほしい/鍼灸師:中村 真通

  5. 船に乗っていると、自分のいるところが動くので楽しいです/旅人:天野 弘子

  6. 自分が地獄に行って、代わりに人を極楽に行かす/鍼灸師:舩坂 樹観