―第75回全日本鍼灸学会岡山大会の見どころを実行委員長に聞く―
2026年5月29日(金) ~ 2026年5月31日(日)にかけて「第75回全日本鍼灸学会学術大会岡山大会」が、岡山コンベンションセンターで開催されます。
テーマは「患者によりそう医療 -医師と鍼灸師のコラボレーション-」。
プログラムの多くが「総合診療」に関係するものだとか。目指すのは、医師と鍼灸師が連携して、患者さんにもっと喜んでもらうこと。実行委員長の山口大輔先生に、今回の学術大会の見どころについてお話を伺いました。
山口大輔(やまぐち だいすけ)先生

■ 現職/学内
朝日医療専門学校広島校 副学校長
■ 現職/学外
(公社)全日本鍼灸学会 理事・中国四国支部長
(公社)岡山県鍼灸師会 副会長
■ 略歴
1995年 明治鍼灸大学 鍼灸学部 卒業
1997年 明治鍼灸大学大学院 鍼灸学研究科 修了
1997年 またの整形外科 リハビリ室助手
1999年 あすかリハビリセンター 附属鍼灸院院長
2001年 朝日医療大学校(旧:朝日医療専門学校岡山校)勤務
2012年 岡山大学大学院 医歯薬学総合研究科 修了(歯学博士)
2025年 朝日医療専門学校広島校 副学校長
■ 資格等
はり師・きゅう師
全日本鍼灸学会認定鍼灸師
日本陸上競技連盟 医事委員会トレーナー部員(A級)
■ 所属学会
・(公社)全日本鍼灸学会
・(一社)日本東洋医学会
・(公社)日本鍼灸師会
・(公社)岡山県鍼灸師会
・特定非営利活動法人アムダ(AMDA)
「医師から見た鍼灸師」はどういうものなのか

岡山での全日本鍼灸学会の開催は2007年以来で、約20年ぶりです。プログラムの特徴について教えてください。
ゆうすけ
山口先生
医師と鍼灸師がコラボレーションするための「総合診療」のプログラムが、約半数くらいを占めています。初日の午前中におこなわれるシンポジウム「総合診療科と鍼灸師会の連携について」では、大会会頭の大塚文男教授(岡山大学学術研究院医歯薬学域 総合内科学)が中心となり、医療連携を実践している方々に集まってもらい、ディスカッションをする予定です。
「総合診療科」について教えてください。
ゆうすけ
山口先生
総合診療科というのは、特定の臓器や疾患に限定されずに、総合的な診療を行う診療科のことです。考え方として鍼灸師に近いので、医療連携もしやすいと考えています。
となると、今回の学会には、鍼灸を取り入れている病院関係者が特に多く集まりそうですね。医師がどんな点で鍼灸に期待しているのかは、聞いてみたいです。
ゆうすけ
山口先生
まさにそれが目的で「医師から見た鍼灸師」は、どういうものなのか。医師が求めている鍼灸師の資質や素養を、深掘りしていきたいと思っています。
チーム医療の一員として鍼灸師がいかに入っていくか、ですね。
ツルタ
山口先生
様々な医療機関で医療連携が進んでいる一方で、どうしてもまだ鍼灸師には「医師には声をかけづらい」という雰囲気があると思うんですよね。腰が引けるのは、医療の現場で、鍼灸が貢献できるイメージができていないからじゃないかと。
鍼灸師自身が強みに気づければ、自然と医師とタッグを組むことにつながっていきそうですね。ただ、医師のほうが鍼灸をあまり知らない、ということもあるのかなと……。
タキザワ
山口先生
そうなんです。ですので、鍼灸師には「医師が何を求めているのか」について考えてもらい、その一方で、医師には「鍼灸がどういう治療なのか」を知ってもらわないと、医療連携は実現しません。そこで今回、岡山県医師会と岡山県病院協会にも協力してもらい、まずはこの全日のPRを一緒にやっていくことになりました。
また違った雰囲気の学会になりそうで、楽しみです。
ゆうすけ
総合診療と鍼灸師の相互作用が患者のメリットに
(第74回学術大会のようす)
大会テーマの「患者に寄り添う医療」は、どのようにして決まりましたか。
ゆうすけ
山口先生
実行委員会で「鍼灸治療の特徴って何だろう」と改めて話し合ったんです。もちろん、治療法はさまざまですが、みなに共通していたのが「鍼灸治療って患者さんに喜ばれて、また来てくれる機会が多いよね」という、手ごたえでした。
鍼灸は自費治療がほとんどなので、患者さんが満足しないとまず再診はないですよね。
ツルタ
山口先生
そんな患者さんにもっと喜んでもらうためには……と考えたときに、現代の医療とうまくつなげれば、患者さんが困り事を網羅的にカバーできるんじゃないかと思ったのです。
そこで医療連携が打ち出されることになったんですね。
ゆうすけ
山口先生
当初は「患者に喜ばれる医療」をいったんメインテーマとして、話し合いをスタートさせました。そのうえで総合診療医の大塚教授に大会会頭をお願いしにいったところ、「まさに同じようなことを考えています」と言ってもらえたんですね。
医師側も同じ思いでいるというのは、うれしいですね。
ゆうすけ
山口先生
それで改めて「患者に喜ばれる医療って何だろう」とさらに議論を深めていくなかで、最終的に「患者に寄り添う」というメインテーマに固まりました。
鍼灸院は施術時間も長くとれるので、一人ひとりの患者さんに寄り添いやすい環境になっています。総合診療でも、そんな点が重要視されているんですね。
ツルタ
山口先生
そうですね。総合診療と鍼灸師の相互作用が、患者にとって最大のメリットになると考えています。
昨年夏には、総合診療医をテーマにしたTBSドラマ日曜劇場「19番目のカルテ」が放送されました。話題の総合診療を学ぶよい機会になりそうです。
ゆうすけ
総合診療科は各診療科をつなぐハブのような役割
ただ、実際に総合診療で何がおこなわれているのか。イメージがつきにくいところがあります。
ゆうすけ
山口先生
今回の大会では、総合診療の歴史や基本的な診療に関するプログラムも用意しています。基調講演では「総合診療医が何をしているのか」について、総合内科の先生にお話しいただきます。
病院内の連携を中心に進めるのが、総合診療科の主な目的なのでしょうか。
ツルタ
山口先生
各診療科で「病状がなかなか改善しない」「いろんな検査をしても原因がわからない」といった患者さんがいたとします。そんなときに、患者さんの状態を把握して、他の診療科とつなぐのが、総合診療科の役割の一つです。
各診療科をつなぐハブみたいな役割を果たしているわけですね。そこに鍼灸も入っていくイメージですか。
ゆうすけ
山口先生
そうですね。病院内でのハブでもありますし、東洋と西洋を繋ぐハブでもあったりもします。実際に岡山大学病院の総合診療科では「この患者さんには鍼灸がいいかもしれない」と鍼灸院を紹介するケースもあります。不定愁訴に悩む患者さんに対して「いろんな薬を用いるよりも、一度鍼灸院で全体を診てもらったほうがよい」という場合が多いようですね。
大学病院の総合内科と鍼灸院の連携がすでに始まっているんですね。ただ、医師側に鍼灸への理解がないと難しいようにも思いました。
ゆうすけ
山口先生
そうですね。ただ、連携の難しさは必ずしも鍼灸に限ったことではなくて、他の診療科の得意とするところは、表面的にはわかっていても、なかなか連携を取ることが難しいのが実情のようです。なかでも、鍼灸は特にイメージしにくいと思うので、今回はそのために鍼灸を知ってもらう大会だといってもよいと思います。
岡山の大学病院での総合診療への取り組みは、鍼灸業界にとって理想的な一つのモデルケースですね。
ゆうすけ
山口先生
コロナが猛威を振るったときに、岡山の大学病院は「コロナ後遺症外来」を全国で先がけて始めました。コロナの後遺症は、まさに各科にまたがる症状が出ますから……。
なるほど! コロナ禍でまさに総合診療の持ち味が発揮されたわけですね。漢方も含まれてきますか。
ツルタ
山口先生
今回の副会頭を務める植田教授は漢方専門医です。西洋医学の薬だけではなくて、適切に患者さんに合う漢方があれば、すぐに処方ができるかたちができています。それぞれの分野のエキスパートを踏まえたうえで、どんな医療を提供するのか。即座に判断する目線の高さが、総合診療医の特徴です。
医療連携するにあたって求められる資質
医師を頂点とする医療のなかで鍼灸師が活躍するには、どんな資質が必要だと先生はお考えですか。
ゆうすけ
山口先生
医師と患者さんの情報を共有しつつ、鍼灸治療の狙いも説明しなければならないので、共通言語を持つことはまず大前提です。医師のなかで共通して使うような医療用語は勉強しておく必要があります。そのうえで、どのレベルまで勉強すれば、各専門医と支障なく連携がとれるのか。そのあたりは学会で示されると思います。
患者さんに寄り添うために、人間的にはどんな資質が必要でしょうか。
ゆうすけ
山口先生
総合内科の先生方はみな気さくで、接しやすい先生方が非常に多いです。もちろん、他科でも優しい先生ばかりなのですが、「相談があればいつでも相談に来てください」というオープンマインドを、若手からベテランまでみな持っているのは、総合診療科の特徴といえそうです。
連携しやすい雰囲気が人柄からも伝わってくるわけですね。岡山大学の大学病院では、普段から鍼灸の講座が行われていたりするのでしょうか。
ゆうすけ
山口先生
総合内科の講義に岡山県鍼灸師会の前会長が招かれて、医学部の学生に講義をおこなう、ということを年に1回おこなってきました。今は副会長がおこなう形で引き継がれています。日々臨床をおこなっている鍼灸師が大学で講義を持つというケースは珍しいと思います。
そういう積み重ねがあって、今回の大会へとつながっていったんですね。
ゆうすけ
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