鍼灸師・薬剤師:戸ヶ崎 正男の5冊

素問医学の世界=古代中国医学の展開=

■ 藤木 俊朗(著)
■ 績文堂(1976年)

本書は、陰陽論、五行説、経絡論等、東洋(伝統)医学の中核をなす理論を古典医学(黄帝内経素問、霊枢等)に基づき、かつ著者独自の創造力を持って解釈した内容の充実した書である。
中でも圧巻なのが、経絡論の独創的な解釈であるが、どのような過程を経て今ある経絡に成ったかを克明に展開する姿勢に感服した。

「~経絡について、現在はすべて霊枢という本の経脈篇に述べられている説を採用して疑うことを知らない。それによると、正式の経絡は手と足に六本ずつ、すなわち陽経として太陽、陽明、少陽、陰経として太陰、少陰、厥陰の合計十二本がある。そして陰経は特定の臓と、陽経は特定の腑と密接な連絡がある。
またハーヴェーの血液循環説のように、体内から手の太陰肺経に行き、手の陽明大腸経にスイッチして顔で足の陽明胃経に移り……、というように十二の正経を休むことなく循環しているという。
このように秩序整然とした体系が、最初から考え出されたはずがない。経絡の体系は、もっと素朴な実際の経験にすぐ適応する形で観察され、考えられたのにちがいない。』(第二章 経絡の原型より)
この衝撃的な文章に続いて、経絡の原型は4経脈(三陽一陰)であることを理論展開する。さらに、別の章で6経脈、11経脈、12経脈に至る過程を解説する。さらには、“経脈の流れの方向”の解釈。私にとって最も疑問であった“経脈と臓腑との関係”の理論展開と独自の解釈に魅了された。
尚、彼の第二弾である『鍼灸医学源流考=素問医学の世界Ⅱ=』を合わせて読まないと、この論は完結しないことも添えておく。
臨床家である彼はその体験からだけでなく、素問、霊枢の条文を介して自説を展開しているところにその真価がある。

績文堂出版
http://www.sekibundo.com/mokuroku.html
http://www.sekibundo.com/kounyu.html

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