船に乗っていると、自分のいるところが動くので楽しいです/旅人:天野 弘子

No business, No healing

休みの日とかもあるんですか?
ウラベ
ウラベ
天野先生
天野先生
基本的な決まりはあるけど、鍼灸師はオフを自分で調節して作れます。
興味のある国に寄港したら、その日を自分でオフって決めて観光することも可能ですか?
ウラベ
ウラベ
天野先生
天野先生
ええ、予定表に「お休み」とブロックすれば大丈夫。お客さん用の日帰りツアーがあるんですけど、それにボランティアで参加することもできますよ。
けっこう自由度が高いですね。
ウラベ
ウラベ
天野先生
天野先生
売上がまぁまぁならマネージャーはうるさく言わないので、好きにできる感じです。
売上至上主義だから、本当に。
アメリカの会社っぽいな。
ツルタ
ツルタ
天野先生
天野先生
まさにアメリカの会社です。冗談で「どんなに人が良くても、売上がないと人間じゃない」って言いますから。
あと衝撃的だったのは、「No business, No healing」って言葉です。
ノービジネス・ノーヒーリングか…。
逆に日本だと「医は仁術」であって、ほとんどお金をもらわずに治療していたような話が美談になりますよね。
ゆうすけ
ゆうすけ
天野先生
天野先生
これって、自分にできることを売り込むビジネスの話です。日本の鍼灸師はこれができてない人が結構いると思います。
ビジネスって聞こえは悪いけど、ビジネスも大切みたいな面はありますよね。
自分が提供できることをプレゼンして、納得してもらった上で契約するということ?
ツルタ
ツルタ
天野先生
天野先生
納得しなくても強引に予約させる人もいるくらいです。
あと、船上では漢方も売ります。船の上はどこの国にも属さないので、鍼灸師も漢方薬を取り扱えるんですよ。
強引な鍼灸師だと、有無を言わさず1年分以上売ったりもします。わたしにそういう押し売りはなかなかできませんけど。
ヒロさんって、お金を取るのが苦手なタイプですよね。
本当は「ノービジネス・ノーヒーリング」に抵抗があったんじゃないですか?
ツルタ
ツルタ
天野先生
天野先生
そうですね。
別にお金を稼がなくても、船に乗って治療ができていれば楽しいって感じです。

旅人鍼灸師の流儀

結局、何回ぐらい船に乗ったんですか。
ゆうすけ
ゆうすけ
天野先生
天野先生
鍼灸師としては、4回乗りました。
期間はどれぐらいずつ?
ゆうすけ
ゆうすけ
天野先生
天野先生
今まではずっと7カ月で、この前は新型コロナウイルスの影響を受けて6カ月でした。
ついにコロナで下船できなかった話ですね。
ゆうすけ
ゆうすけ
天野先生
天野先生
ええ。問題の前回のクルーズは、6カ月も乗ったのに治療したのは1カ月と20日だけなんですよ。
積極的に人に「鍼灸やらない?」とか言う気分にもならなくて、ずっとふらふらしていました。
ふらふらというのは?
ゆうすけ
ゆうすけ
天野先生
天野先生
『あはきワールド』の原稿を書いたり、本を読んだり、ジムで運動したり。あとメキシコに行ってからは、朝日と夕日の写真を撮ったりしていました。
この船はどこに行くとか、そういう情報ってどのくらい入ってきていました?
ツルタ
ツルタ
天野先生
天野先生
それが全然分かんないんですよ。早く降りたかったけど、誰も何も分からない状況で。
やっぱりストレスはありましたよね?
ツルタ
ツルタ
天野先生
天野先生
はい。クルーだけのさまよい旅に出始めた頃、自分を治療しようと思って鍼を刺したら急に涙が出てきちゃって。治療中にゆるんで涙を流す患者さんはいるけど、自分でやってもなるんだなって思いました。
先の見えない状況は嫌ですね。
結局、なぜヒロさんは帰国できなかったのか。
ツルタ
ツルタ
天野先生
天野先生
下船の許可が出なかったからです。なんでかはよく分かりません、謎。
船にコロナの人はいなかったけど、日本からも入国拒否されました。
うーん、国と船会社の対応、いろいろありそうですね。
当時のことは『あはきワールド』に書いているんですか?
ツルタ
ツルタ
天野先生
天野先生
ええ、『外洋客船でゆく、はり旅! クルーズ船における新型コロナウイルスの影響 』という記事が連載中です。
詳しく知りたい方はそちらを読んでもらって、もう少しヒロさんのことを聞きたいと思います。
今まで豪華客船の鍼灸師をやってきてどうでした?
ツルタ
ツルタ
天野先生
天野先生
わたしにとって仕事は楽しい暇つぶしというか、ジッとしてられないんですよ。
きっと、本業の方が旅人なんですよね。いつも動いているのが合っているというか。
ウラベ
ウラベ
天野先生
天野先生
そうだと思います。
船に乗っていると、自分のいるところが動くので楽しいです。
だって、寝ていたら動いているんですよ、朝起きたら違うところにいるみたいな。わたしが思うには、船自体も動くのが嬉しいんですよ。
船も嬉しい、というのは?
ウラベ
ウラベ
天野先生
天野先生
船は航海するために作られている、という意味です。結構いろんな船乗りの人が、船は走っているほうがご機嫌だねって言ってました。
人も同じだと思っていて、落ち着きのない人は動いている方が楽しいんですよ。
船も人もその他も、もともとの性質に合う行動をするのが健康的。
落ち着きのないヒロさんは、旅をしている方が順になる?
ツルタ
ツルタ
天野先生
天野先生
そういうことです。
今後も船に乗り続けますか?
ツルタ
ツルタ
天野先生
天野先生
まぁ船が良いのかな。開業とか考えたんですけど、暗くなっちゃうんですよ。
開業は暗くなるって?
ツルタ
ツルタ
天野先生
天野先生
日本にいたら、鍼灸は出張とかでちょいちょいやりますけど。あんまりいっぱい患者さんを持っちゃうと、旅に出られなくなるのが嫌だからです。

固定の患者さんと付き合い続ける責任みたいなのはありますよね。長期的な関係を作るのが一般的だから。
ツルタ
ツルタ
天野先生
天野先生
船だと患者さんとの関係も、クルーズが終わって下船したらリセットされます。
旅先だけ、期間限定の関係ですね。
ツルタ
ツルタ
天野先生
天野先生
わたしには、それがちょうどいいんです。
旅人らしい考え方というか、何事にも縛られたくないのかなって思いました。
ツルタ
ツルタ
天野先生
天野先生
良い人も悪い人も、どんな人でも、結局はやりたいことをやって死んでいくと思うので。
みんな、自分の好きなことをやったらいいんですよ。

■鍼灸ヒロクマ屋 http://hirokuma.jp

【記事担当】
取材・文・編集 = ウラベツルタゆうすけ
撮影 = ツルタ

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