「知らない」と気付いた。それは「知りたい」のはじまり。

実際に顔面神経麻痺の専門性を打ち出して開業してみていかがですか。

「顔面神経麻痺は鍼灸で治る」って発信している院は結構ありますよね。それが影響して、あらゆる後遺症も治るような誤解を与えているのかな…。

これは本当に鍼灸業界の抱える大きな問題だと、僕は思っています。集客や売上のためならなんでもやるのか、もしくは単純に医学知識が不足しているのか…。
実際のところはわかりませんが、「鍼灸で顔面神経麻痺は治ります」っていう発信は簡略化し過ぎだと思います。そして、むしろ病的共同運動やこわばりの軽減に鍼治療は可能性があることを発信する院の方が少ないように感じてしまうんですよ……。

整理すると、末梢性顔面神経麻痺の6割から7割は予後良好で回復していくんですよね。
だから、問題になるのはあとの3割から4割の予後不良例をどう見極め、いかに後遺症を残さないようにするか。

だから「治る、治した」って発信は違和感ありますね。予後について理解した上で、急性期に施術して自分が治したと主張しているのか…。
出るはずの後遺症が出なかった根拠がある、もしくは陳旧性の麻痺を治しているって意味なら、それは顔面神経麻痺を治せるって謳えると思いますけど。

特に発症直後については、適切な治療を受ける機会を奪っている可能性すらありますね。今、顔面神経麻痺に対して鍼灸師や業界は勝負どころではないでしょうか。リアルな鍼灸院の発信がガイドラインとあまりに乖離していたら、今後改定される時にこのまま推奨されるとは限らないと思います。今ここでしっかり知識や技術を高める努力をしていければ、適切な対応ができる鍼灸師が増え、医療機関との連携も増え、患者さんはもちろん社会に理解が広がっていく気がします。

セルフケアの指導が鍼灸師に広がるといいですね。ちなみに、施術をする際に気をつけた方がいいことはありますか。

開業鍼灸師としての3年間はいかがですか。順調に感じていますか。

自分を信じるのが正解だと思います。僕は相談を受けると、たいてい「自分を信じて頑張れ」って言います。自分を信じられなくなっていること自体がピンチではないかなと…。

ちなみに、開業後は私生活とのバランスはいかがですか。

開業していて学会発表もしている方って貴重ですから、遠藤先生みたいな人が増えていくと心強いなって思います。

最後に、顔面神経麻痺に取り組むモチベーションについて教えてください。