根底には鍼灸への愛。鍼灸院から頼ってもらえる存在になりたい/メイプル名古屋 鍼灸企画部:井上 尚子

鍼灸業界に携わっているのは、鍼灸師だけではありません。
主に鍼灸用品の販売を行う株式会社メイプル名古屋の井上尚子(いのうえ なおこ)さんは、同社で鍼灸院をサポートするさまざまな企画を立ち上げています。
もともと鍼灸とは無縁だった井上さん。鍼灸業界との関わりは、鍼メーカーである株式会社セイリンに営業として入社したことがきっかけでした。

鍼灸を「知れば知るほど面白い」と語り、さまざまな企画を通して鍼灸院をサポートする井上さんに、これまでのキャリアやメイプル名古屋の取り組み、そして今後の目標をうかがいしました。
メイプル名古屋はハリトヒト。サポーターです。

井上 尚子(いのうえ なおこ)さん

略歴
2015年 南山大学 人文学部 人類文化学科 卒業
2015年 セイリン株式会社 入社
2019年 株式会社メイプル名古屋 入社

未知の鍼灸業界へ営業職で飛び込んだ

社会人経験は今何年目ぐらいですか。
ツルタ
ツルタ
井上さん
井上さん
2015年3月に大学を卒業したので、6年目ですね。
大学では、どのような勉強をされたんですか。
ツルタ
ツルタ
井上さん
井上さん
名古屋にある南山大学という私立のカトリック系の大学に通っていました。専攻は人文学部の人類文化学科で、考古学や哲学、言語学を勉強していました。高校の時に民族紛争にすごく興味があって、それで選んだんです。
おもしろそうですね。「民俗」ではなく「民族」のほうの研究をされていたと。
ツルタ
ツルタ
井上さん
井上さん
はい、「民族学」のほうです。興味を引かれたのは、細かく分けたうえで、同じ民族だと定義しても、そのなかでまた紛争が起きるんですよね。同じ民族内で争わずに済むための考え方を学びました。
なるほど。その知識を最も生かせそうなのが、民族争いの激しい鍼灸業界だったんですね…。
ツルタ
ツルタ
井上さん
井上さん
いえ、違います(笑)。
営業をやりたくて、新卒で鍼メーカーのセイリンに入りました。
営業職ってほかにもいっぱいあるじゃないですか。
ツルタ
ツルタ
井上さん
井上さん
もともとは人材系の企業とか、別の業界でも中小企業の営業をやってみたいと思っていたんですけど、父が就職活動中にがんになって病院に通わなくてはいけなくて、就活自体しっかりとできなかったんです。気持ちが入らなかったというか。就活サイトも見られないような状態でした。
それは大変でしたね…。
ツルタ
ツルタ
井上さん
井上さん
それでもハローワークだけはチェックしていて「医療機器メーカー」って書いてある求人を見つけました。父の病気の影響もあって医療機器なら興味が持てると思ってエントリーしました。それが、セイリンだったんです。
そんなめぐり合わせが。その時点で、鍼灸について何か知っていたんですか。
ツルタ
ツルタ
井上さん
井上さん
全く知らなかったですね。鍼を受けたこともなかったですし。
それが、まさか…。
ツルタ
ツルタ
井上さん
井上さん
沼にハマるがごとく、ズブズブと…(笑)。
こんなに面白い業界だとは、思ってもみませんでした。

鍼灸の世界は、知れば知るほど面白かった

そもそも営業職ってどういう仕事だとお考えですか。
ツルタ
ツルタ
井上さん
井上さん
「必要な人に必要な物を提案する仕事」が営業だと私は思っています。必要じゃない人には、必要な部分を提案する感じですね。営業だったら、男女の差がなくしっかり働けそうなところも魅力でした。
とにかく売れば良いではなく、買う側の利益になるような提案をする、ということですかね。配属は希望通りでしたか。
ツルタ
ツルタ
井上さん
井上さん
はい、希望通りに営業職で、名古屋営業所というところに配属になりました。地元の愛知で就職したかったので、嬉しかったです。
何も知らずに鍼灸業界にポンッと入ってみて、どんなふうに感じました。
ツルタ
ツルタ
井上さん
井上さん
セイリン入社後に鍼の製造工場を見学した時に、すごいこだわりを持って鍼が作られていることを知って、鍼自体に興味を持ちました。会社にも魅力を感じていたので、営業しがいがありましたよ。
最初から、抵抗なく鍼灸の世界に入り込めたわけですね。
ツルタ
ツルタ
井上さん
井上さん
鍼灸院に営業に行った時も面白かったです。「経絡治療とは何か」とか、「こんな治療法がある」とか、いろいろな先生が教えてくれたのがありがたかったですね。
全然鍼のことを知らないと、勉強が大変じゃなかったですか。
ツルタ
ツルタ
井上さん
井上さん
会社で基礎的な研修があって、鍼の種類とかもその時に学びました。あとは、たまたまその時の名古屋営業所の所長が鍼灸師の資格を持っていて、本当に鍼灸が好きな方だったんです。
資格まで持っていたんですね。
ツルタ
ツルタ
井上さん
井上さん
その方が学会とか治療法のこととかを詳しく教えてくれて、それがすごく勉強になったし、知れば知るほど面白かったです。
上司もよかったし、鍼灸の世界も合っていたのかもしれませんね。
ツルタ
ツルタ
井上さん
井上さん
鍼灸師の先生は真面目な方が多いじゃないですか。私も真面目で、けっこう内向的なタイプなんです。それで鍼灸師の先生たちとの相性は良かったのかもしれないです。
井上さんが親しみやすい人柄だからかもしれませんよ。
ツルタ
ツルタ
井上さん
井上さん
嬉しいです。外交的に見えるって言われるんですけど、一緒にいて楽なのは内向的な人なんです。それこそ小学校の頃はいじめられて内向的ですごくおとなしかったんですよ。そんな経験があったので、声が小さい人の意見を大事にしたいと思っているんです。
うん、鍼灸院はどうしても小規模な運営が多いので、それぞれの小さな声を大切にしてくれる存在はありがたいです。
ツルタ
ツルタ

NEXT:アイデアの嵐が「鍼灸企画部」の立ち上げへと

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