鍼のロット番号は品質管理のために必要
鍼にもシリアルナンバーみたいなのが入っていましたよね。
ツルタ
甲斐さん
あれはロット番号というものです。同じ条件で製造された製品に同じ番号がふってあります。
仮に不良品の鍼が出回ってしまったとします。その不良品と同じロットは、販売済の製品も含めて全部追跡して回収しないといけません。
仮に不良品の鍼が出回ってしまったとします。その不良品と同じロットは、販売済の製品も含めて全部追跡して回収しないといけません。
全部ですか?
ツルタ
甲斐さん
出回っている鍼のロット全部を回収します。俗に言うリコールです。
ということは、どの鍼灸院にどのロットを販売したか把握しているんですか?
ツルタ
甲斐さん
しないと原則ダメです。
ユニコの営業さんが、サンプルで配る場合も、鍼のロットは控えるって言ってました。
タキザワ
甲斐さん
そのロットでなにか問題が起きた時に、サンプルを配った相手に連絡したり、回収するためだと思いますよ。
簡単に「サンプルちょうだい」って言うけど、業者さんは大変だ。
ツルタ
そういうメーカーないし販売店の努力で製品の安全性は保たれているんですね。
ゆうすけ
甲斐さん
そうです。結局は売ったから終わりじゃないので。
鈴木医療器さんっていう、倒産しちゃったメーカーのパルスを使っているんですけど…。
タキザワ
甲斐さん
無くなってから、もう6年くらいですよね。基本的にどんな医療機器にも耐用年数があって、だいたい6年と言われています。どうしても経年劣化しますから、安全を担保するためにも、買いかえの時期だと思いますよ。
なるほど。壊れてから買いかえるでは危険ですもんね。
タキザワ
「鍼が低価格でうれしい」が及ぼす影響
甲斐さん
患者さんが安心して施術を受けられる環境を作るのは、鍼灸師さんの大事な役目だと、私は思っています。
その通りですね。自分は道具のことを知らなすぎたって反省しています。
ツルタ
若手の鍼灸師は、医療機器の相談をする機会があまりないんです。
ゆうすけ
甲斐さん
若い先生はネットで購入される方が多いですからね。たしかに便利で安いんですけど、販売店って相談のツールでもあるので。
うちは実際の店舗もあるし、ルート販売や訪問など、対面での販売にこだわりがあるんですよ。今は通販と両輪でやっていますけど、人ありきの仕事をしています。
うちは実際の店舗もあるし、ルート販売や訪問など、対面での販売にこだわりがあるんですよ。今は通販と両輪でやっていますけど、人ありきの仕事をしています。
今はネットで何でも買えるけど、対面販売の良さもあるんでしょうね。特に新しい商品だと、いろいろ質問したいかも。
ゆうすけ
甲斐さん
対面で、しかも医療機器に限らず、治療院全般の相談ができることに価値を見出していただけたら嬉しいですね。商品開発においても先生方の細かい要望に応えたり、アフターサービスをきちんとできたりするのは、私どもの良いところです。
治療院全般の相談というのは。
ゆうすけ
甲斐さん
例えば開業したいと相談を受けたら、一からお話をうかがいます。まずは先生方にうまくいってもらいたい。だからコンサルタントもしているんですね。と言ってもコンサル料はとっていないので、販売店として長く付き合っていただきたいというのはあります。
治療院の成功は、販売店の売上につながる。販売店って院の併走者みたいですね。
ゆうすけ
そういうのが、甲斐さんが鍼灸業界でやりたいこと。
ツルタ
甲斐さん
鍼灸業界でこういう販売店が、ここ5〜6年ですかね。10社ぐらい無くなったんですよ。後継者問題もあるんですけど、ネット通販の普及で価格が乱立して、利益が取れずに会社の存続ができなくなってしまったんですね。
とはいえ価格競争ですよね。鍼灸師の立場からすると、低価格で鍼が手に入るのはありがたいです。
ツルタ
甲斐さん
本当にそうでしょうか。いずれ不便さも出てくると思いますよ。
鍼灸師にとって、極端に販売店が少なくなるのはリスクになりそう。
ゆうすけ
甲斐さん
これからは、ある程度は価格と利益を維持しないと、対面の販売店は存続することが難しくなると思います。この業界を発展させるためには、人ありきの販売店も存続できるようにしていくべきだって、勝手ながら思っています。
鍼灸業界にとって、医療機器に関するプロの存在っていうのは活力ですからね。
ゆうすけ
無くなってからじゃ遅いもんね。
タキザワ
甲斐さん
今、まさにその転換期に来ているという危機感を持っています。
消費者である鍼灸師はどう考えるか……。
ツルタ
甲斐さん
せっかくの機会なので、いろいろと意見を言わせてもらいました。鍼灸師の先生だけでなく、メーカーや販売店も一体となって鍼灸業界として発展していきたい。それが率直な想いです。
【記事担当】
取材 = ゆうすけ・タキザワ・ツルタ
文 = ツルタ
撮影 = ツルタ
編集 = くちやまだ
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