受け入れてくれたメキシコに感謝/鍼灸師:勝野 馨太
メキシコ人の魅力は人情、温かみ

地域に入り込んで地元の人たちとコミュニケーションを取って、試行錯誤しながらやってきた感じがします。良かったこと、苦しんだことを教えてください。
「大変だったでしょう」って言われるけど、僕は苦しかったことは、すぐ忘れちゃうんですよ。僕らの鍼灸院のビジョンの1つに「患者さんが人生を振り返ったときに登場できるような、そんな鍼灸師になりたいね」っていうものがあるので、そういった意味では、地域密着で患者さんに寄り添えているのかなと思います。今はメキシコの方が7割ぐらい来てくださっているので、受け入れていただいているというか、幾分か溶け込めているように感じています。
海外といっても、国はたくさんありますよね。単にお金を稼ぎたいという動機なら、メキシコは選ばないのかなって思うんです。それこそドルとかユーロとかの経済圏が目的になるのかなと……。でもメキシコを選んで、そこで鍼灸師をしている勝野先生が僕には楽しそうに見えるんですよね。どこに魅力があるのか、すごく気になります。
まずは普通に生活をしていても、日本人の僕からすると「あり得んやろう」って思うことがたくさんあるところですね。最近は見なくなりましたけど地下鉄の車両の中でいきなり爪切りを売りはじめたりとか、演劇をはじめたりとか、そういうところは面白いです。
あとは、苦手な人もいると思うんですけど人と人との距離感がとにかく近くて、バス停とかで話しかけられて、めっちゃ話し込むみたいな。博多の屋台みたいなそういう人情っていうか温かみをすごく感じて、それは大きな魅力ですね。そんな温かい人たちや受け入れてくれたメキシコに自分ができることで、何かお返ししたいと思うんです。施術では運動器以外のものを当たり前に診れるっていうのは、鍼灸師冥利に尽きるというか、個人的にはすごく魅力的です。あとチャレンジしやすい感じがします。
チャレンジのしやすさは、どういうときに感じますか。
日本みたいにルールで縛られまくってないっていうか、チャレンジすることのハードルが低い感じがあるんです。オープンでウェルカムな雰囲気があって、それもメキシコの好きなところですね。
日本人鍼灸師が活躍する理由
これからどんなチャレンジをしていきたいか、気になります。
直近で言うと、年内か来年は日本の鍼灸師の先生をメキシコにお呼びして、メキシコ人の鍼灸師さんとかドクター向けにセミナーをやったり、大学で学生さん向けにセミナーを開催したりすることを目指しています。あと将来的に大きな目標としては、日本の鍼灸学校の創設と、学校に併設する形で総合的な健康施設をメキシコに作りたいです。
ドクターももちろん入ってもらって、鍼灸師、PT、栄養士さんだとか、薬剤師さんだとか、ヨガとかピラティスのインストラクターの先生とか、そういう諸々の専門家たちがいる施設を作りたいんです。学校の生徒さんたちが研修やインターンもできるような仕組みでやれたら最高だなと思っています。それが叶ったら死んでもいいかなっていうのはあります。
日本式の鍼灸を中南米に広げていこうっていう気持ちもあるんですか。
できたらと思います。ちゃんと国に認可されている学校っていう形で実現したいですね。
この9年で2院を経営するまでになって、先生はメキシコで成功してると言っても過言ではないと思うんです。なぜ日本人の鍼灸師がメキシコで成功したんでしょうか。
外に出て感じたことですが、日本人って誠実なんですよ。時間も守るし、患者さんに例えば瞑眩が起こって辛くなりましたって訴えられたら、改善のためにきちんと向き合いますよね。患者さんに寄り添うっていう意味でも、日本の皆さんが思っている当たり前と、メキシコでやられている当たり前は違うんですね。僕も病院に行くことがあるんですけど、予約した時間に行っても先生が来ないことが普通にあります。謝罪もないです。
当然に約束の時間は守ってくれる。しかも寄り添ってくれるような安心感がある。さらになんか凄そうな日本式の鍼灸が受けられる。そうしたら「勝野の鍼灸院はすげえぜ!しかも安心だ!」って評判が広がるのも何だか分かります。
あとは、僕から見たメキシコ人って怖がりだし、痛がりだし、ちょっと甘えるような感じがあるんです。「痛いのは嫌だけど、治してくれよ」みたいな感じなので、日本式の鍼灸はマッチしているのかなと思いますね。
鍼灸学校に通う学生や若手の鍼灸師の中でも、海外志向の人は増えているようです。そういう人たちへ、エールがあればいただきたいです。
まずは、自分自身がきちんと健康でいることですね。それがないと何もできないので。あとは学生の内から、学びも遊びもしっかりとやっておくことが大切だと思います。それがその人の面白みというか武器というか魅力になっていきます。もう1つは、いろんな治療院に受けに行くといいと思うんですよ。特にご年配のベテランの先生方の治療。失礼になったら申し訳ないですけど、いつまでそういう先生方の治療を受けられるかわからないですよね。その体験は一生の宝物になると思います。勉強会に出るのももちろん大事なことですが「鍼灸ってこんなにすごいんだ」っていうのを、体感しておくことは大事な経験になります。
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