未病の<見える化>で鍼灸師の役割が変わる/鍼灸師:戸村 多郎

いよいよ第72回全日本鍼灸学会学術大会神戸大会の開催が近づいてきました。

2023年6月9日(金)から6月11日(日)の3日間にかけて開催される同大会において、戸村 多郎(とむら たろう)先生は基調講演「未病スコアの開発と今後の応用 未病知が鍼灸を持続可能にする」をおこないます(※未病知とは、戸村先生の造語で「未病を知ること」の意)。

「未病スコア®」とは、未病の段階での診察に用いるスコアのこと。現在、戸村先生は、鍼灸業界のみならず、一般の方に向けてスコアを広める取り組みも行っているそうです。
戸村先生のこれまでの歩みとともに、未病スコアの意義について聞いてきました。

戸村 多郎(とむら たろう)先生

略歴
1993年 神戸大学経済学部卒業
1994年 関西医療学園専門学校勤務
1997年 関西鍼灸短期大学(現 関西医療大学)勤務
2000年 大阪教育大学大学院修了
2000年 関西医療学園専門学校勤務
2001年 和歌山県立医科大学医学部衛生学教室研究生
2013年 和歌山県立医科大学医学部衛生学教室博士研究員
2014年 関西医療大学大学院勤務

学位 博士(医学)
専門分野 予防医学、社会医学、未病医学
研究テーマ 未病と養生の評価、未病知で未病治、養生の社会実装

 

「自分ならできる」と専門学校と大学を同時に

今度の全日本鍼灸学会学術大会では、先生が「未病スコア®」をテーマに基調講演をおこなわれるということで、今からとても楽しみです。先生はそもそもなぜ鍼灸の道に入られたんですか。
ゆうすけ
ゆうすけ
戸村先生
戸村先生
親の影響が大きいですね。もともと僕の父が、関西鍼灸短期大学(現 関西医療大学)の教授で理事を務めていたんです。整骨院も開業していて、僕も高校生の時に受付でアルバイトをしたことがあります。
この業界に入ることが自然だったんですね。私も家業なのでわかります。
ゆうすけ
ゆうすけ
戸村先生
戸村先生
高校卒業後に専門学校の柔道整復師の学科に進んだのですが、鍼灸あん摩マッサージ指圧の学科に希望して入り直しました。そこで鍼灸あん摩マッサージ指圧の資格を取ったんです。
柔整のあとに鍼灸の資格も取ろうと思ったきっかけは、何かあったんですか。
ゆうすけ
ゆうすけ
戸村先生
戸村先生
治療の幅を広げたかったからですね。当時は「治したい」とか、「役に立ちたい」っていう気持ちが強かったように思います。そして、同時に大学の経済学部にも通っていました。
専門学校と同時に大学に通うのは、かなりハードですね…。夜間部に行かれていたんですか。
タキザワ
タキザワ
戸村先生
戸村先生
そうですね。朝働いて、昼専門学校に行って、夜大学に行っていたんです。経済学部だったので、医療経済の観点など今の仕事につながっている部分はあるのかなと思います。
めちゃめちゃ忙しいですね…。
ツルタ
ツルタ
戸村先生
戸村先生
どうも目標を達成するのが好きなようで。「自己効力感」というみたいですね。よく知られる「自己肯定感」とは違って、「自分なら乗り越えられる」「きっとできるはず」と思いやすい性格のようです。

解剖学・統計学を学ぶ

普段は解剖学を教えられていますよね。いつから解剖学を専門にされるようになったんですか。
ゆうすけ
ゆうすけ
戸村先生
戸村先生
就職して少しだけ専門学校に行ったんですけど、その時に解剖を教えてくれって言われたことがきっかけですね。
そのまま法人内の短期大学(当時の関西鍼灸短期大学)の解剖学教室に所属することになりました。ここで講師をしながら専門学校に教えに行くということになって。それ以来27年ぐらい教えています。
27年はすごいです。解剖の本も出されているんですね。
ゆうすけ
ゆうすけ
戸村先生
戸村先生
『よく出るテーマ50 解剖学』というテキスト本のほか、『おもしろい解剖学』というマンガにも携わりました。ともに出版社は医道の日本社で、マンガは企画と原案作りからやったんですよ。もともと絵が大好きだったこともあって、面白かったですね。
先生の「自分ならできる!」という「自己効力感」が仕事の幅広さにつながっているように思います。現在のご専門の1つである統計学も、専門的にどこかで学ばれたんですか。
ゆうすけ
ゆうすけ
戸村先生
戸村先生
解剖学を教えていて、このまま専門学校で教えているだけだったら張り合いがないなと思って、30歳の時に夜間の大学院に通い始めたんです。基本的に、履歴書に書ける習い事をしようという思いがあったんですよ。だから修士や博士の取得もいいなと思って。
習い事で大学院に行くとは! やはり「自己効力感」が高いですね…。
ゆうすけ
ゆうすけ
戸村先生
戸村先生
そうなんですよね、エネルギッシュだとよく言われます。あとこの業界は「〇〇先生に師事しました」という価値観が主流じゃないですか。私はそうではなくて、客観的に誰が見ても評価してもらえるようなキャリアを積みたくて。
大学院では、どんなことを学ばれたのですか。
ゆうすけ
ゆうすけ
戸村先生
戸村先生
健康系の大学院に2年間行った後に医大の研究生になりました。和歌山県立医科大学の衛生学教室で統計学を学びました。学問はやっぱりのちのちの財産になるなと、今も改めて実感しています。

 NEXT:「未病スコア®」の確立・普及へ

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