「鍼灸ってなんで効くんだろう」。
明治国際医療大学で基礎研究に携わる岡田岬(おかだ みさき)先生は、さまざまな患者さんの治療に携わるなかで、かつてそんな疑問を抱いたそうです。
その後、好奇心に導かれるように大学院へ進学したのは、鍼灸整骨院に就職し2年が過ぎた頃でした。
ミレニアル世代の若手研究者として注目を集める岡田先生に、基礎研究の道に入った理由、そして鍼灸における基礎研究の意義についてお話をうかがいました。
岡田 岬(おかだ みさき)先生
【略歴】
2008年 明治国際医療大学 鍼灸学部 鍼灸学科 入学
2012年 明治国際医療大学 鍼灸学部 鍼灸学科 卒業
2012-2014年 大阪の鍼灸整骨院に勤務
2014年 明治国際医療大学大学院 入学
2019年 明治国際医療大学大学院 博士課程 修了 博士(鍼灸学)
2019年~明治国際医療大学 鍼灸学部 鍼灸学科 助教
もともとは研究者になる気はなかった
岡田先生が鍼灸の道に進まれたきっかけは何だったんですか。
タキザワ
岡田先生
鍼灸師になろうと思ったのは、高校生の時なんです。サッカーのワールドカップとか、スポーツを観るのが好きだったこともあって、スポーツ選手を支えるような人になりたいと思っていました。
もともとはトレーナー志望だったんですね。意外です。
タキザワ
岡田先生
調べたところ、鍼灸師の資格を持っているトレーナーさんがすごく多いことを知って興味を持ちました。今考えると安直なんですが、手先指先だけだったら女性でも一生続けられるんじゃないかと思ったんです。高校卒業後に明治国際医療大学に入りました。
大学時代に研究に目覚めて、大学院に進まれたのですか。
タキザワ
岡田先生
実は違うんです。就活の時はとにかく自立したい一心で就職先を探して、卒業後は大阪の鍼灸整骨院で働き始めました。
いったん臨床の現場に出られたんですね。そこから、どんな経緯で基礎研究の道に進むことになったのか気になりますね。
タキザワ
「鍼灸って不思議」。好奇心に導かれて研究の道へ
岡田先生
研究に興味を持つようになったのは、難治性の患者さんと接したことがきっかけです。大学卒業後、鍼灸整骨院で働きながら、大阪医科大学の附属病院の麻酔科の外来でも、週1回の研修を受けていたんです。麻酔科では、鍼灸で痛みを取るような治療をおこなっていました。
難治性の患者さんへの鍼灸に触れて、どんな気付きがありましたか?
タキザワ
岡田先生
同じような症状に対して同じような鍼灸をおこなっても、効いたり、効かなかったりするのを見て「鍼灸って不思議だなあ」と、改めて実感しました。次第に鍼灸整骨院で日常的に患者を治療するなかでも、「鍼灸ってなんで効くんだろう」という疑問が生まれるようになったんです。
研究者は好奇心を持っている方が多いと思っていたので、納得できる部分があります。
タキザワ
岡田先生
ちょうど全日本鍼灸学会で症例報告をする機会にも恵まれました。そこで一念発起して、明治国際医療大学の大学院を受験し、基礎研究の道へ進んでいったんです。
大きな決断ですね!
タキザワ
岡田先生
恩師である今井賢治先生の存在も大きかったですね。「基礎研究は面白いぞ。やってみろ」という一言に背中を押されました。
今井先生とは大学時代のときから交流があったんですか。
タキザワ
岡田先生
大学卒業のときに私が答辞を読む役になったんです。ありきたりなのはつまらないので、思っていることをぶつけました。「私は鍼灸師として何ができるのか全然わからなかった。ただ活躍している先生がいる。だから私たちもがんばっていきましょう」って…。
卒業生の答辞だったら「学生時代に成長したこと」を話しがちですけど、そうではなくて、本音をぶっちゃけたわけですね。「何ができるのか、まだ全然わからない」というのは、多くの学生が心の中でうなずいたと思います。
タキザワ
岡田先生
そこから臨床経験を経て「鍼灸への疑問」がますます大きくなるなかで、研究をすれば「鍼灸が効く」という実感を得られるかもしれない。そう思って、基礎研究の道に進みました。
本当に鍼が効くか知りたくて
鍼灸が効く実感がほしいと思った時に、基礎研究に進まれたというのは、ちょっと意外な選択だと感じました。
ツルタ
岡田先生
私自身が鍼灸を全く受けずに大学生になったのが、関係しているかもしれません。自分の職業にするのにこれじゃいけないと、特に症状はなかったんですけど鍼灸センターを受診したんです。でも症状がないから、その時は効果を感じませんでした。
「鍼灸に救われた」という、なにか劇的な経験があれば、鍼の効果を疑うことなく、臨床の腕をひたすら磨こうと、突き進めるけれど…。
ツルタ
岡田先生
私の場合は、そうではなかったんですね。大学4年生にもなれば、実際に患者さんに鍼治療をおこなって、感謝してもらえることもありました。ただ、それもどちらかと言うと、私が真心を込めて治療したことに対する「ありがとう」なのかなっていう気がしていて…。
鍼自体の効果かどうかはわからないと。
ツルタ
岡田先生
はい、鍼の治療効果というよりも、鍼灸師の効果なのかなっていう気持ちがなんとなくあって。だから「本当に鍼が効くのか」っていうのを知りたくなったんだと思います。
とても面白いですね。
「鍼、灸による刺激の効果」と「鍼灸師の効果」があって、特に研究に携わる先生はそこを分けて考えるっていうことですかね。
「鍼、灸による刺激の効果」と「鍼灸師の効果」があって、特に研究に携わる先生はそこを分けて考えるっていうことですかね。
ツルタ
岡田先生
もちろん、鍼の治療で患者さんが喜んでくれるんだったら、それだけで十分価値があることです。
ただ私の場合は、鍼灸に効果があるならば、鍼の刺激による生理学的な反応をきちんと確認したいなと考えたんです。
ただ私の場合は、鍼灸に効果があるならば、鍼の刺激による生理学的な反応をきちんと確認したいなと考えたんです。
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