論文が通らなくて大泣きしたことも
大学院では、どんな活動をされていましたか。
ゆうすけ
岡田先生
今井先生の意向もあって、修士1年目の時は臨床はやらずに、研究に専念させてもらって発表もしました。修士1年目の秋の自律神経学会が最初の発表だったと思います。
1年目から発表もしたんですね。鍛えられそう。
ゆうすけ
岡田先生
そこからはコロナ禍になるまで、春の全日本鍼灸学会、秋の自律神経学会、それから生理学会と年3回の発表をルーティンにしつつ、プラスアルファで発表を重ねました。おかげで、院生の間に度胸がつきましたね。
そのまま博士までスムーズに進まれた感じですか。
ゆうすけ
岡田先生
いえいえ。実は、博士論文がなかなか通らなくて、そんなに泣くかっていうぐらい大泣きしました。
研究活動をずっとメインに取り組んでいたこともあって、私の中のプライドがボロボロになってしまったんです。そういう痛い思いも院生時代に経験しました。
研究活動をずっとメインに取り組んでいたこともあって、私の中のプライドがボロボロになってしまったんです。そういう痛い思いも院生時代に経験しました。
岡田先生でもそんなことがあったなんて、逆に励まされる人もいそうです。
博士論文が通過した後は、どんな経緯で現在のお仕事に入られたんですか。
博士論文が通過した後は、どんな経緯で現在のお仕事に入られたんですか。
ゆうすけ
岡田先生
苦労はあるものの、とにかく研究が楽しかったので「ラットで研究を続けられるところで」と考えたら、うちの大学に就職するのがいいかなと。そしたら運よく募集が出まして、有無を言わさず飛びついて就職できたんです。今考えるとすごくラッキーでした。
大学院で得た財産を学生たちと分かち合いたい
今のお仕事は、研究に従事しながら学生さんの指導をして、さらに臨床もする…という感じですか。
ゆうすけ
岡田先生
そうですね。鍼灸センターで週に1回鍼治療をおこなっています。それ以外は、基本的に授業や学生のサポートに時間をほぼ費やしています。
いずれは、もう少し研究に時間をかけられるようになるといいかな、とは思っています。基礎研究はこれからもずっと続けていくつもりです。
いずれは、もう少し研究に時間をかけられるようになるといいかな、とは思っています。基礎研究はこれからもずっと続けていくつもりです。
学生への指導では、どんなことを大切にされているんですか。
ゆうすけ
岡田先生
学生たちには、いろんなことに好奇心をもって、自分の頭で考えられる人間になってほしいなと思っています。「不思議だな」「本当かな」っていう気持ちを大切にしてほしいです。
「鍼灸ってどうして効くんだろう」「そもそも鍼が本当に効いているのかな」という疑問が研究の原点にある岡田先生が言うと、実感が伝わってきますね。
ゆうすけ
岡田先生
4年生の卒業ゼミを担当していて、ちょうど試行錯誤している最中なんです。
「教科書を3Dにする」というテーマで、骨度法を紙粘土で作るんですよ。また、ある学生は「体の中で経脈がどう流れているか見たい」と、発泡スチロールの内臓を作って針金で経脈を通して「実はここで絡んでいる」というのを視覚化しました。
「教科書を3Dにする」というテーマで、骨度法を紙粘土で作るんですよ。また、ある学生は「体の中で経脈がどう流れているか見たい」と、発泡スチロールの内臓を作って針金で経脈を通して「実はここで絡んでいる」というのを視覚化しました。
経脈を立体構造で捉えるって面白いですね。自分も一緒にやってみたいです。
ゆうすけ
岡田先生
私が大学院で身に付けたものは何かと考えてみたら「実現可能にするためにはどうしたらいいか」とか「データを見て客観的に考える」といった思考力なんです。そういう目に見えない財産を、学生たちとも分かち合いたい。そう思いながら指導にあたっています。
基礎研究を鍼灸師のプライドの1つに
岡田先生が考える、鍼灸における基礎研究の意義を知りたいです。
ツルタ
岡田先生
基礎研究の意義は、鍼灸師が困った時に説明できるネタなのかなって。患者さんに「なんでこれが効くの?」って聞かれた時に、答えられるネタにしてほしいなという思いで、研究をおこなっていますね。
基礎研究に基づいた説明することで、患者さんの満足や信頼感にもなりますよね。
ツルタ
岡田先生
そうなんです。そのツボに鍼を打ったら効く根拠として説明できるネタ、つまり基礎研究があれば、鍼灸師が納得した状態で患者さんに話すことができます。患者さんからしても、便秘なのに足三里にいきなり鍼をされたら「お腹のツボならわかるけど、なんで足のツボが効くんだろう?」と疑問を持つと思うんです。
「なんで?」と思います。
ツルタ
岡田先生
そんなときに東洋医学的な説明だけではなくて、「自律神経を介して内臓に影響を与えることができると、科学的に証明されているんですよ」と基礎研究に基づいた話ができれば、患者さんも安心できますよね。
基礎研究の知識を上手く表現できると、その「鍼灸師の効果」は増すと思います。基礎研究は、これからさらに鍼灸師の関心が高まる分野だと、今日の話を聞いて改めて思いました。
ツルタ
岡田先生
基礎研究は、鍼灸業界の「縁の下の力持ち」です。何か困った時の解決策の1つになったり、治療に対する自信につながったりするといいなと思い、基礎研究をしているので、先生方の治療を支える1つの武器にしてもらいたいです。
【記事担当】
取材 = ゆうすけ・タキザワ・ツルタ
撮影 = ツルタ
文 = なるみさわ
編集 = くちやまだ
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