大切にしたいのは環境づくり/日本伝統鍼灸学会 広報部長 :小貫 英人

日本の伝統鍼灸を世界に

小貫先生は日本伝統鍼灸学会ではどういう立場になるんですか?
ゆうすけ
ゆうすけ
小貫先生
小貫先生
理事で、広報部の部長を務めています。
日本伝統鍼灸学会の理事や、役職をお持ちの方ってどこかの団体でも何かされている方が多いですよね?
ゆうすけ
ゆうすけ
小貫先生
小貫先生
そうです。各会のトップやトップに近い人が理事をやることが多いですね。
伝統の理事や会長の決め方ってどうなっているんですか?
ツルタ
ツルタ
小貫先生
小貫先生
理事は会長が声をかけていく感じですが、会長は選挙です。
よかった(笑)。
ツルタ
ツルタ
小貫先生
小貫先生
実際に行われるのは評議員内の選挙ですが、詳しくは日本伝統鍼灸学会のサイトに会則を載せてあるので…。
伝統のサイトの作成と管理は無償ってことはないですよね?
ツルタ
ツルタ
小貫先生
小貫先生
少しですが頂いています。
最初に引き受けさせていただく時にしたお約束を継続させていただいています。
でも、理事の業務はみなさん手弁当ですよ。
出ましたね「手弁当」…。どうして理事は手弁当なんですか?
ツルタ
ツルタ
小貫先生
小貫先生
そもそも営利団体ではないですし、あとは単純に資金が足りていないから、ですかね。
ホントに足りないんですか?
ツルタ
ツルタ
小貫先生
小貫先生
会計と監査はしっかり…。
そういう意味ではなくて、なんていうか、お金の使い方についてという意味です。
ツルタ
ツルタ
小貫先生
小貫先生
それは少しずつ変わってきてますよ。
最近では理事会にzoomを導入したり。
ネットで会議ができるサービスですね。
それまで会議で使っていた交通費等の費用を削減できたんですよね?
ツルタ
ツルタ
小貫先生
小貫先生
はい、そうなります。
会議の予算はとれるのに、ホームページや広報、事務の予算が後回しだとしたら、そこは不思議ですね。
ツルタ
ツルタ
小貫先生
小貫先生
運営上、ギリギリの状態でやっていると言えばいいのかな…。
技術的に可能な人、かつ、金銭的な状況を理解してくれる人を探してやりがちなんです。
運営に資金を注がないのはなぜですか?
ツルタ
ツルタ
小貫先生
小貫先生
昔から会員の先生方には、「これは自己満足の為にやっている」とおっしゃる方もいます。
「これは我々の自己満足の為の会だから、お金の話を持ち込む必要はない」という考えですね。
楽しみでやっている、そういう性質の会ということですか?
ツルタ
ツルタ
小貫先生
小貫先生
昔は自分の研究したい内容を身内で集めていろいろ情報交換をして、というような、議論をする場だったようです。
それと伝統学会は今も法人格を持っていないので、そういう意味で好きなことをできる場みたいな扱いなのかもしれません。
お金の話はなしに、とにかく楽しく活動する団体というのもありなんですね。
ツルタ
ツルタ
たしかに、いわゆる論文を提出するような全日本鍼灸学会のような学会とはちがいますよね。
ゆうすけ
ゆうすけ
小貫先生
小貫先生
でも、伝統医療というものが注目を集めつつある現在、日本伝統鍼灸学会の役割は大きいと思っています。
今後はもっと論文等を世に出していって、伝統的な鍼灸施術を周知させていく必要があります。
ですが、国内の鍼灸界については悩ましいところがあります。
悩ましいところというのは?
ウラベ
ウラベ
小貫先生
小貫先生
「鍼灸の団体ってなにもやってない」というようなことを、鍼灸師から言われてしまうんです。
具体的には?
ゆうすけ
ゆうすけ
小貫先生
小貫先生
今の時代は世界規模で発信しなければいけないのに、全然マンパワーが足りていません。
広報部長として、改善したいとは思っているんですけど…。
その世界規模で発信すべきことってなんですか?
ゆうすけ
ゆうすけ
小貫先生
小貫先生
「日本の伝統鍼灸」そのものについてです。
これを世界に発信するのは、日本伝統鍼灸学会がやらなきゃいけないことなので。
「世界はTCM(Traditional Chinese Medicine)が主流なのに、なぜ日本は世界基準と違うことをしているのか」とそのうち言われる危険性があります。
だから日本の伝統的な鍼灸施術、医療というものを守るために、日本の伝統鍼灸とはこういうものだと意思表明をしています。
とても大切な仕事ですよね。
ゆうすけ
ゆうすけ
それをやるなら、しっかりした組織運営が必要になりませんか?
ツルタ
ツルタ
小貫先生
小貫先生
それが、海外への日本の伝統鍼灸のアピールは、あくまでも仕事のひとつなんです。
内部に、海外に目を向けるより、国内のことをしっかりやっていこうという意見もあるので、なかなか進みません。
なるほど…。ありがとうございます。
ゆうすけ
ゆうすけ

これからの日本伝統鍼灸学会

ちなみに最近の会員数ってどうですか?
ツルタ
ツルタ
小貫先生
小貫先生
これは増えています。
その要因は?
ツルタ
ツルタ
小貫先生
小貫先生
おそらくですが、一番大きい要因は若手の先生方の情報発信だと思います。
若手の先生方は自分たちのやっていることをどんどんアピールしているので、それを学生さんたちが見て入会するという構図です。
やはりインターネットですか?
ツルタ
ツルタ
小貫先生
小貫先生
そうですね。
それこそインターネット経由で申し込みが出来るようにしただけで、申し込みは増えるんですよ。
以前はそれもできていなかったという話なんですけど…。
あー…(汗)。
ツルタ
ツルタ
これは事務局に予算やマンパワーをさけていたら、もっと早くからできていたでしょうね。
ゆうすけ
ゆうすけ
それにしても、手弁当の運営って業界にとってプラスになるんですかね?
ツルタ
ツルタ
小貫先生
小貫先生
なりません!
おぉ…。
ツルタ
ツルタ
小貫先生
小貫先生
これは理事の手弁当という話だけではないんですけど。
まずは研究や学術をやろうという人たちも、みんな手弁当なわけですよ。
ふむふむ。
ツルタ
ツルタ
小貫先生
小貫先生
こういった人たちに我々が会として研究費を出せるような体制になれたら、きっと変わると思うんです。
我々は学術団体を名乗っていますけど、結局、手弁当で自分たちの興味のあることを自分たちのできる範囲で研究して発表する場になってしまっているんですよね。
そのようですね。
ツルタ
ツルタ
小貫先生
小貫先生
理事や事務方の手弁当の前に、そういうところにお金をかけられる団体にならないと意味がないのかなと思っています。
だから結果として大きな団体になりたい。
まずは研究費が使えるようになって、それ以外で運営費も出せたら、組織として前進したと言えるかなと思います。
理想的かもしれないですね。
ゆうすけ
ゆうすけ
これって、先に事務や広報でもいいんじゃないですか?
組織の充実を図るのは、将来の研究費の獲得に繋がる気がしますが…。
ツルタ
ツルタ
小貫先生
小貫先生
最近では、広報や、事務の仕事に対してちゃんと予算を組もうという考えの理事の方は増えています。
だから以前の先生方と比べたら、僕は手弁当ではないです。
そうですか。
ツルタ
ツルタ
小貫先生
小貫先生
今回はあえてリアルなお金の話をしましたけど…。
じつは、とにかく関われていることが嬉しいんです。
それは日本伝統鍼灸学会に想いがあるからで…。
これはぼくに限らず、想いがあるから協力されている先生方は多くいらっしゃると思います。
すてきなお話ですね。
ゆうすけ
ゆうすけ
伝統鍼灸愛を感じました。
ウラベ
ウラベ
想いがあって、協力するというベースがわかりました。
でも対価があるのは悪いことですか?
ツルタ
ツルタ
小貫先生
小貫先生
それは悪い事ではありません、そこに責任も生まれますし。
これから変わっていくと思うんですよね、それこそ法人格じゃないので。
そのあたりも自分たちの自由にできるという組織なので。
むしろ日本伝統鍼灸学会だから変革できるのかもしれません。
かっこいいですね。
ゆうすけ
ゆうすけ
最後に愚痴とかあれば聞かせてください。
ツルタ
ツルタ
小貫先生
小貫先生
(笑)。
そうですね…。学術大会で理事の人たちは、参加費を払って、懇親会費を払って、交通費を払って、宿泊費を払ったうえで、当日は受付で座っていたり、裏方をやっていたりします。
えっ?! お金を払って参加しているのに、当日の発表を聞けないんですか?
ウラベ
ウラベ
小貫先生
小貫先生
そう、だから理事は学術大会どうだったと聞かれても、なにも聞けてないなんてことがあって…。そして、僕はずっとそうです。
そうでしたか…。
ウラベ
ウラベ
小貫先生
小貫先生
いま、学会誌を読み返してみても、聞いた覚えがないので…。
聞けないって辛いですね…。
ゆうすけ
ゆうすけ
それで学術大会のDVDを作ろうと思ったんですか?(笑)
ツルタ
ツルタ

(笑)。
編集部
編集部
小貫先生
小貫先生
それはあるかもしれないですね(笑)。
というのは冗談ですが、前回から許可をいただいた先生の発表を収録したDVDを制作、販売していて、この窓口もぼくがやらせていただいています。
聞けば聞くほど、仕事の量にゾッとしますね…。
ツルタ
ツルタ

■ 第47回 日本伝統鍼灸学会 学術大会
http://jtams.com/47-tokyo/

【記事担当】
取材=ツルタウラベゆうすけ
文=ツルタ
撮影=ウラベ
編集=さまんさ

>>> インタビューのダイジェストマンガはコチラ


>>> 小貫先生の選んだ本 4冊はコチラ

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