海外遠征には旅の醍醐味がある
海外の遠征に行く時に、必ず持って行く物ってありますか。
タキザワ
鳥居先生
治療道具では、鍼灸の道具とパルス1台。あと筋膜リリースの道具。それくらいですね。
意外とコンパクト。
タキザワ
鳥居先生
「鳥居先生、荷物これだけですか」って、選手たちからも驚かれますよ(笑)
治療道具以外では?
タキザワ
鳥居先生
自分のトレーニング用に、プッシュアップバーと縄跳びは持っていきますね。もともと体育大の出身ですし、トレーニングは毎日やっています。スポーツは、一番お金のかからない良いストレス解消法ですよ。
あと本読むことが好きなので、飛行機の機内ではKindleに本をいっぱい入れて読んでいます。沢木耕太郎の『深夜特急』がとくに好きで、遠征に行くと何度も読んでいます。
あと本読むことが好きなので、飛行機の機内ではKindleに本をいっぱい入れて読んでいます。沢木耕太郎の『深夜特急』がとくに好きで、遠征に行くと何度も読んでいます。
現地での食事には苦労されますか。
タキザワ
鳥居先生
「何だ、これは」っていうものもあるけど、面白そうだなと思って何でも食べます。
ウズベキスタンに最初に行った時は、毎日マトンを食べていました。最初は美味い、美味いって食べているんですが、半月もずっと食べていると手を洗ってもマトン臭いんです(笑)。
それでも食事は全部、現地調達ですね。選手たちに「鳥居先生、サトウのごはんがありますよ」って言われても、「俺はこれでいいよ」って言って。現地の食事はどんなものでも、日本に帰ったら思い出になるから。
ウズベキスタンに最初に行った時は、毎日マトンを食べていました。最初は美味い、美味いって食べているんですが、半月もずっと食べていると手を洗ってもマトン臭いんです(笑)。
それでも食事は全部、現地調達ですね。選手たちに「鳥居先生、サトウのごはんがありますよ」って言われても、「俺はこれでいいよ」って言って。現地の食事はどんなものでも、日本に帰ったら思い出になるから。
鳥居先生は海外遠征を楽しんでいるんですね。
タキザワ
鳥居先生
もともと旅が大好きで、小学校6年生の時に自転車で日本を横断したんですよ。
東京から新潟まで350km。14日間の日程の内でテントを張ったのは3日ぐらいでした。「何やってるの」と怒られたりしながら、旅先で出会ったご家庭に泊めてくれました。
その時はこういう仕事をするとは思っていなかったけど、あれで、人との触れ合いが面白いなと思いました。それが僕の原点なんです。僕にとって、海外遠征は旅です。
東京から新潟まで350km。14日間の日程の内でテントを張ったのは3日ぐらいでした。「何やってるの」と怒られたりしながら、旅先で出会ったご家庭に泊めてくれました。
その時はこういう仕事をするとは思っていなかったけど、あれで、人との触れ合いが面白いなと思いました。それが僕の原点なんです。僕にとって、海外遠征は旅です。
そういう体験が、今に繋がっているでしょうね。
タキザワ
鳥居先生
stand.fmって知ってますか。自分でラジオ番組作れるアプリです。ついこの前からやり始めたんですけど、海外での面白いエピソードなんかを話しているので、よかったら聞いてみてください。
聞いてみたいです。いろんな国に行かれているから、話題はいくらでもありそうですものね。
タキザワ
鳥居先生
でも実は、基本的に普段はあまり人付き合いをしないんですよ。友達も少ないですし、一人で過ごすことが多いんです。海外に行くと拙い英語ですけど知っている奴がいると話をしたり、Facebookで繋がっている人と会って食事に行ったり。そういうコミュニケーションを取れるから楽しいですね。
意外ですね。海外のほうがかえって人とつながれる…。
タキザワ
鳥居先生
日本にいると人付き合い悪いし、友達も少ないし、困ったものです。でも、もしかしたら、自分自身がベタベタされるのが苦手だから、トレーナーとして選手との距離感を大切にできているのかもしれませんね。
セミナーは「行くもの」じゃなくて「やるもの」
鳥居先生は、セミナーや講習会で学生や若手の鍼灸師に技術を教える活動も精力的になさっていますよね。
タキザワ
鳥居先生
僕のところにはスポーツ鍼灸、除痛、運動器疾患なんかを習いたいという人がきます。学校の中ではベーシックなことしか教えられなかったので、講習会ではもっと技術的なことを伝えるようにしています。
私もセミナーに参加させていただいたことがあるんですが、実技がメインでとても実践的な内容ですよね。
タキザワ
鳥居先生
そうですね。僕が何で講習会をやるようになったかと言うと、教員養成科の時に習った秋元恵実先生の影響が大きいんですよ。杏林大学の生理学の先生で、ご自分で臨床もなさっていました。めちゃくちゃ厳しい先生でしたけど、僕は好きだったな。
その先生から、「鳥居、鍼灸の講習会やセミナーは、行くものじゃない。あれは、やるものだ」と言われたんですよ。
その先生から、「鳥居、鍼灸の講習会やセミナーは、行くものじゃない。あれは、やるものだ」と言われたんですよ。
行くものじゃなくて、やるもの…。
タキザワ
鳥居先生
「なぜですか」と聞いたら、「鍼灸のセミナーに、ろくなものはないんだから。だからお前が、ろくなものを作れ」って言われて。それからしばらくして、秋元先生はお亡くなりになられたのですが、その言葉がめちゃくちゃ心に残っているんです。
なるほど。
タキザワ
鳥居先生
それで僕なりに「ろくなものを作ろう」と考えて、実技をメインにして、鍼の刺し方をシッカリと教えるようなセミナーをやることにしたんです。
卒業して経験を積まないと、意外と基本的なところができていなかったりしますからね。
タキザワ
鳥居先生
下手でもいいんですよ。たくさん練習して上手くなればいいんですから。むしろ、不器用な人のほうが伸びやすいんじゃないですか。必死に練習しますからね。がむしゃらになって身につけた技術で、いつかは教える側に回ってもらえれば、これほどうれしいことはありませんね。
どこにチャンスがあるかは、分からない
スポーツトレーナーを目指している若手に向けて、何かメッセージをお願いします。
ゆうすけ
鳥居先生
自分の経験から考えると、鍼灸だけとか、アスレチックトレーナーだけじゃなくて、僕はもっと雑学を学べって言いたいですね。
雑学。
ゆうすけ
鳥居先生
スキーのパトロールの資格を持っているとか、ハワイに転勤していたとかも、直接関係ないような経験じゃないですか。人との言葉の会話でも、引き出しと言うか、雑学の話ができるような力量がないと、僕は飽きられちゃうと思うんです。
テーピングを巻いたり、鍼をしたりするだけがトレーナーじゃない。コミュニケーション能力や全然関係ないような経験が、生きるような気がします。
テーピングを巻いたり、鍼をしたりするだけがトレーナーじゃない。コミュニケーション能力や全然関係ないような経験が、生きるような気がします。
トレーナーって、スポーツだけのような印象を持っていました。でも、いろんなことに興味があって、いろんなことを楽しまれているんですね。
タキザワ
鳥居先生
ほかのトレーナーのことはわかりませんが、僕はプロが専門書ばっかり読んでいるのって、「そんなことも知らないのか」って言いたくなっちゃうんです。ある程度は、分かっていて当たり前だと思うので。もちろん新しい情報は得ますよ。だけど、それ以外のことのほうが無尽蔵にあるわけで、僕はそういう雑学が大切だと思います。
人間と人間の付き合いですもんね。
タキザワ
鳥居先生
すごくテーピングがうまくて面白くない人と、テーピングはまあまあだけどすごく面白い人だったら、後者を選手は選びますよ。多分、そういうことだと思います。
トレーナーを目指す若手鍼灸師にとって、JOCに名前を連ねるのは夢だと思うんです。鳥居先生は圧倒的なトレーナーのスキルをお持ちだと思いますが、それだけはなさそうですね。
ツルタ
鳥居先生
あとは運の要素も大きいかもしれない。たまたまスキーの選手をみていたら、オリンピックに同行するようなって。たまたま大学の同級生がウエイトリフティングの監督をやっていて、トライアウトに呼んでもらって。
もちろん高いレベルでの実力があってこそだと思います。それに加えて、運を引き寄せるパーソナリティーの力。
ツルタ
鳥居先生
あと、やっぱり鍼灸の資格は、めちゃくちゃでかいですよ。鍼は、はり師にしかできないですから。僕も鍼灸の免許がなかったら、今まであったいろんなものがつながらなかったです。
どこにチャンスがあるかは、分からない。チャンスがあったら、それに全力で当たって結果を出すということが、オリンピックトレーナーへの道だと思います。
どこにチャンスがあるかは、分からない。チャンスがあったら、それに全力で当たって結果を出すということが、オリンピックトレーナーへの道だと思います。
Stand FM【あっきーら先生のラジオ旅日記】
https://stand.fm/channels/609cde59b82bc5e1f372cd78
【記事担当】
取材 = ゆうすけ・タキザワ・ツルタ
文 = タキザワ
撮影 = ツルタ
編集 = くちやまだ
>> インタビューのダイジェストマンガはコチラ。
>>> 鳥居先生の選んだ本はコチラ