「片頭痛」に対して鍼灸師ができること/鍼灸師・博士(医学): 石山 すみれ

良くならない患者との出会いから始まった「C2PNfS」の研究

石山先生ご自身はどのような治療法を研究されているのですか。
タキザワ
タキザワ
石山先生
石山先生
TCMに基づいた鍼治療の報告が多数を占める中で、私たちは2014年から鍼によるNeuromodulation(ニューロモデュレーション・神経調節療法)として後頭部C2末梢神経野鍼通電療法(以下C2PNfS)という方法でさまざまな疼痛疾患に対しての効果を検討してきました13-14)。ここ数年、Neuromodulationという言葉がよく聞かれるようになってきましたが、C2PNfSを始めた11年前は一体何の話?というくらい聞き馴染みのない言葉だったように思います。
先生が鍼によるNeuromodulationを始めたのはどんなきっかけだったんですか?
タキザワ
タキザワ
石山先生
石山先生
どうにも良くならない患者さんと、指導教官のセミナーがきっかけですね。
新人時代の臨床経験にさかのぼるんですね。
タキザワ
タキザワ
石山先生
石山先生
私が研修生をしていた筑波技術大学東西医学統合医療センターでは、研修の最初に大学内のさまざまな先生から研究内容などのレクチャーを受けるナイトセミナーがあります。そこでのちに指導教官となる脳神経外科の鮎澤聡先生から機能的脳神経外科領域について学びました。
機能的脳神経外科領域……なんだか難しそう。
タキザワ
タキザワ
石山先生
石山先生
もちろん、卒業したての私が全てを理解できるものではありませんでしたが、機能を変化させるための手術、という概念がとても新鮮で覚えていました。鍼灸師になって1年目の時、頭痛の患者を担当することになりました。論文に書いてある経穴やトリガーポイントなど少ない引き出しの中でできる治療は全ておこないましたが、直後効果のみで全く改善せず、どうしようかと途方に暮れていた時にNeuromodulationを思い出しやってみた、というのが始まりです。
セミナーで学んだことが臨床の場で思い出されて使ってみたのがきっかけだったんですね。ちなみにどんな方法だったんですか?
タキザワ
タキザワ
石山先生
石山先生
治療としてはただデルマトームのC2領域の皮下に横刺で刺入し、50Hz 15分の通電治療をおこなうだけのシンプルな治療です。次の治療はどうしよう…と思いながら、その患者を迎え入れたところ「前回の治療後から本当に良くなった!」ととても明るい表情で入ってこられて、まず何より安堵したのを覚えています。
患者さんの「良くなった」という言葉に安心する気持ち、すごく分かります。
タキザワ
タキザワ
石山先生
石山先生
その後、主に疼痛疾患に対して症例を重ね、頭痛、特に片頭痛に対しておこなうことにしました。
C2PNfSを実際にやってきた気付きなどあれば教えてください。
タキザワ
タキザワ
石山先生
石山先生
たくさんの方の頭皮だけを触ってきましたが、感覚として「効果が出づらいな」と感じるのは、頭皮と頭蓋骨との間に隙間や遊びがなく、スムーズに鍼が入らない方です。慢性化している患者はこのタイプの頭皮が多い気がしています。
カチカチに硬い頭皮の人は効きにくい可能性がある……。
タキザワ
タキザワ
石山先生
石山先生
あとこれは完全に私の感覚ですが、浮腫みとも少し違う、水毒のようなイメージで、ブヨブヨしていて、何一つ抵抗なくスーッと入っていく方も一回では変わらないだろうな、と思って施術しています。ですが、頭皮がカチカチの人よりは施術効果は高い印象です。東洋医学的な視点から考えても、「ちょうどいい頭皮のバランス」があると思っています。
頭皮の状態で効果の出やすさが違うかもしれないというのはおもしろいです。
タキザワ
タキザワ
石山先生
石山先生
よくC2の話をすると、その他の東洋医学的所見や肩こりの有無はどうですか?という質問を受けるのですが、研究としてC2をおこなっていた時はできるだけ他の因子を減らすという意味で、頭皮以外一切の触診をせず、肩こりの有無などもこちらから聴取していません。先ほどあえて「たくさんの方の頭皮だけを」と言いましたが、頭皮だけでも個性豊かで面白かったです。

選ばれるために、知識も技術も求められる

これから頭痛治療で鍼灸師が役割を担っていくにはどんなことが必要だと思いますか。
タキザワ
タキザワ
石山先生
石山先生
頭痛領域ではこれからも新薬が登場しますが、それらに抵抗性を示す難治性頭痛患者がゼロになることはありません。今後は、専門医と連携を取りながら国内での臨床研究の推進や、ライフスタイル・セルフケアの指導など鍼灸治療以外でも「鍼灸師だからできること」を多職種に向けて発信していく必要があります。
鍼治療だけでなく様々な角度から鍼灸師にできることを知ってもらう。
タキザワ
タキザワ
石山先生
石山先生
ここまで難しいことも含めてたくさんお話してきましたが、連携に最も必要なものは「人柄」だと思っています。身も蓋もない結論ですが、最終的には「あなたと一緒にやっていきたいか」だと。そのときの「あなた」に選ばれるためには、知識も技術も求められるのだと思います。

引用論文
1) Sakai, F. & Igarashi, H. Prevalence of migraine in Japan: a nationwide survey: A nationwide survey. Cephalalgia 17, 15–22 (1997).
2) Steiner, T. J. et al. Migraine remains second among the world’s causes of disability, and first among young women: findings from GBD2019. J. Headache Pain 21, 137 (2020).
3) Goto, M. et al. Characteristics of headaches in Japanese elementary and junior high school students: A school-based questionnaire survey. Brain Dev. 39, 791–798 (2017).
4) Ando, N. et al. Prevalence and features of migraine in Japanese junior high school students aged 12-15 yr. Brain Dev. 29, 482–485 (2007).
5) Ishiyama S. et al. Headache prevalence and impact among school-aged children in a Japanese town: the AMI-GRAINES study. Sci Rep. in press (2025).
6) Matsumori, Y. et al. Burden of migraine in Japan: Results of the ObserVational survey of the Epidemiology, tReatment, and Care Of MigrainE (OVERCOME [Japan]) study. Neurol. Ther. 11, 205–222 (2022).
7) 日本頭痛学会・国際頭痛分類委員会訳:国際頭痛分類第3版. 医学書院, 東京, 2018.
8) 「頭痛の診療ガイドライン」作成委員会編:頭痛の診療ガイドライン2021. 医学書院, 東京, 2021.
9) 石山ら. 頭痛専門医を対象とした鍼灸治療に対する障壁とイメージ調査. 日本頭痛学会誌. 51: 178-183 (2024).
10) Xu, S. et al. Manual acupuncture versus sham acupuncture and usual care for prophylaxis of episodic migraine without aura: multicentre, randomised clinical trial. BMJ 368, m697 (2020).
11) Liu, L. et al. Acupuncture plus topiramate placebo versus topiramate plus sham acupuncture for the preventive treatment of chronic migraine: A single-blind, double-dummy, randomized controlled trial. Cephalalgia 44, 3331024241261080 (2024)
12) Ishiyama, S. et al. Real-world use of acupoints for headache treatment: An exploratory survey of licensed acupuncturists in Japan. Innov. Acupunct. Med. 18, (2025).
13) Ishiyama, S., Shibata, Y., Ayuzawa, S., Matsushita, A. & Matsumura, A. Clinical effect of C2 peripheral nerve field stimulation using electroacupuncture for primary headache: Pnfs acupuncture for headache. Neuromodulation 21, 793–796 (2018).
14) Ishiyama, S. et al. The modifying of functional connectivity induced by peripheral nerve field stimulation using electroacupuncture for migraine: A prospective clinical study. Pain Med. 23, 1560–1569 (2022).

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https://x.com/suishiyama
文 = 石山すみれ
編集=サイトウ
撮影 = ツルタ
(2026.2.25.公開)
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