顔面神経麻痺のはり治療と予後/鍼灸師・修士(臨床鍼灸学):堀部 豪

今回の学びは「末梢性顔面神経麻痺のはり治療と予後」がテーマです。
埼玉医科大学病院の東洋医学科で顔面神経麻痺の専門外来を受け持っている堀部 豪(ほりべ ごう)先生に執筆をお願いしました。

「顔面神経麻痺の鍼灸治療って実際どうなの」、「経験がないので断っている」、「もっとしっかり患者さんに向き合いたい」、そんな声をヒントに…。
いただいた原稿を、ハリトヒト。編集部が対談形式に再構成しています。

堀部 豪(ほりべ ごう)先生

略歴
2012年 明治国際医療大学鍼灸学部 卒業
2014年 明治国際医療大学大学院 博士前期課程 修了 修士(臨床鍼灸学)
2014年 埼玉医科大学 東洋医学科(非常勤)
2016年 埼玉医科大学 東洋医学科(専任)
現在
埼玉医科大学 東洋医学科(専任)
埼玉医科大学 総合医療センター麻酔科ペインクリニック(兼担)
埼玉医科大学 かわごえクリニック東洋医学(はり)外来(兼担)
埼玉精神神経センター 脳神経内科(非常勤)
呉竹医療専門学校(非常勤講師)

研究テーマ
末梢性顔面神経麻痺に対する鍼治療

所属学会・研究会
全日本鍼灸学会(学術部員)、日本顔面神経学会、日本温泉気候物理医学会、日本東洋医学会、現代医療鍼灸臨床研究会(評議員)、埼玉鍼灸学会(幹事)

埼玉医科大学 東洋医学科の取り組み

堀部先生
堀部先生
埼玉医科大学東洋医学科の堀部です。よろしくお願いします。
まず埼玉医科大学の東洋医学科について教えていただけますか。
ゆうすけ
ゆうすけ
堀部先生
堀部先生
東洋医学部門は1984年に第2内科の東洋医学部として開設されました。大学病院という最先端の医療の中で漢方薬や鍼灸治療の研究をしています。
大学だけあって、教育にもかなり力を入れてますよね。
ゆうすけ
ゆうすけ
堀部先生
堀部先生
卒後教育の一環として鍼灸師の研修制度があります。医療連携のできる鍼灸師の育成を目的としているんですよ。今ちょうど令和4年度研修鍼灸師の募集をしています。(https://toyo-smu.com/241/
10月に開催した説明会のアーカイブを当科のYoutubeチャンネルに公開しているので、ぜひFacebookページもチェックしてみてくださいね。
大学病院の数ある診療科の1つとして東洋医学科があるというのも特徴的ですね。
ゆうすけ
ゆうすけ
堀部先生
堀部先生
はい、他の診療科との連携もあります。学内の専門診療科と共同で診療や研究を行うなどして、伝統医療の科学化に取り組んでいます。
堀部先生は顔面神経麻痺の専門外来を担当されているんですよね。
ゆうすけ
ゆうすけ
堀部先生
堀部先生
当科の取り扱っている疾患で最も多いのが末梢性顔面神経麻痺になります。
一般的な鍼灸院だと、あまり診ない疾患だと思うので驚きです。そして末梢性顔面神経麻痺に鍼灸治療はどれほど有効なのでしょうか。
ゆうすけ
ゆうすけ
堀部先生
堀部先生
日本顔面神経研究会から出版された「顔面神経麻痺診療の手引き」では、鍼治療に対する推奨グレードはC2(科学的根拠がないので勧められない)とされています¹⁾。
するとエビデンスは…。
ゆうすけ
ゆうすけ
堀部先生
堀部先生
現時点のエビデンスでは、その効果は不明であるといえます。
しかし当科外来は数十年前から脳神経内科や神経耳鼻科、耳鼻咽喉科の専門医から診療依頼があるため、発症早期から鍼灸治療を始めた際の効果など、多くの知見が得られています。
やはり発症早期から鍼灸治療をした方が効果的なのでしょうか。
ゆうすけ
ゆうすけ
堀部先生
堀部先生
あくまで臨床的な手応えの話ですが、早期に鍼治療をした方が良いと感じています。重症例では後遺症が必発となりますが、鍼治療をしていると後遺症の出現が抑えられる印象を持っています。
一般の鍼灸院では慢性期の患者さんが多いと思います。後遺症に対してでも鍼治療は役に立ちますか。
ゆうすけ
ゆうすけ
堀部先生
堀部先生
はい、積極的に実施して良いと思います。臨床的な感覚として後遺症の中でも拘縮や筋痙攣には鍼治療が有効と感じているからです。
これらは埼玉医科大学の東洋医学科だから得られた知見といえそうですね。
ゆうすけ
ゆうすけ
堀部先生
堀部先生
私が顔面神経麻痺患者の症例集積を始めたのは、これまで多く顔面神経麻痺の研究をされてきた新井千枝子先生の仕事を引き継がせていただいたという経緯があります。それ以来、現在にいたるまで臨床研究を進めています。

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