顔面神経麻痺のはり治療と予後/鍼灸師・修士(臨床鍼灸学):堀部 豪

末梢性顔面神経麻痺について

堀部先生
堀部先生
顔面神経麻痺は中枢性と末梢性に大きくわけられますが、ここでは末梢性顔面神経麻痺について基本的なことをお話していきます。
よろしくお願いします。
ゆうすけ
ゆうすけ
堀部先生
堀部先生
末梢性の顔面神経麻痺で最も多いのがベル麻痺です。
特発性とされていますが、ウイルス感染説が有力で、なかでも単純ヘルペスウイルス1型(HSV-1)の関与が確実視されています。
単純ヘルペスウイルスがどのように関与するのでしょうか。
ゆうすけ
ゆうすけ
堀部先生
堀部先生
顔面神経の膝神経節に潜伏感染していて、なんらかの原因で再活性化することにより神経炎を引き起こすと考えられています。
顔面神経は骨性の狭い顔面神経管を通るので、神経炎によって腫脹すると絞扼され、表情筋麻痺を中心とした顔面神経の障害が生じます。
硬くて細い管を通るから圧迫されやすい。たしか1〜3カ月くらいで回復することの多い疾患でしたね。
ゆうすけ
ゆうすけ
堀部先生
堀部先生
一般的に予後良好とされていますが、神経障害の程度によっては完全回復が難しいケースもあるんですよ。
完全回復が難しいとは、具体的にどのような…。
ゆうすけ
ゆうすけ
堀部先生
堀部先生
ベル麻痺に限らずですが、食事の際に流涙してしまうワニの涙や鼻唇溝(ほうれい線)が深くなる拘縮、表情筋の痙攣、表情筋運動時に耳閉感や耳鳴が出現するアブミ骨筋性耳鳴、口を動かすと同時にまぶたが閉じてしまうなど意図せず表情筋が一緒に動いてしまう病的共同運動があります。
さまざまな後遺症がある…。
ゆうすけ
ゆうすけ
堀部先生
堀部先生
約70%が自然に治り²⁾、薬物治療により約90%が改善する³⁾とされています。
ベル麻痺について整理されました。
ゆうすけ
ゆうすけ
堀部先生
堀部先生
末梢性の顔面神経麻痺で、ベル麻痺の次に多いのがハント症候群です。
ハント症候群は水痘帯状疱疹ウイルス(VZV)の再活性化で発症します。
ハント症候群には特徴がありましたね。
ゆうすけ
ゆうすけ
堀部先生
堀部先生
表情筋の麻痺だけでなく、外耳道や耳介周辺、または口腔内に帯状疱疹が現れることが多いです。それに耳鳴り・難聴・めまいなどの内耳神経(第8脳神経)症状を伴うことが知られています。
顔面神経と内耳神経は近くにあるので一緒に障害されやすい。
ゆうすけ
ゆうすけ
堀部先生
堀部先生
ハント症候群の方がベル麻痺と比べて予後不良になりやすい傾向にあります。成人において完全に回復するのは約50%で⁴⁾、ベル麻痺に比べると予後は不良とされているんですよ。
予後の違いに理由はあるのでしょうか。
ゆうすけ
ゆうすけ
堀部先生
堀部先生
水痘帯状疱疹ウイルスの方が単純ヘルペスウイルス1型と比較すると、顔面神経を高度に障害する傾向にあるということです。
なるほど。
ゆうすけ
ゆうすけ
堀部先生
堀部先生
末梢性顔面神経麻痺の予後は重症度によって決まります。
医療機関では重症度判定や予後予測にENoG(Electroneurography)が、信頼性の高い検査法として用いられています。
ENoGとは、どういった検査ですか。
ゆうすけ
ゆうすけ
堀部先生
堀部先生
患側と健側の顔面神経に電気刺激を加えて口輪筋などの筋電図をそれぞれ測定します。健側を基準として患側にどれだけ筋電位があるか割り出した数値をENoG値といいます。
健側を100%として患側は何%かですね。
ゆうすけ
ゆうすけ
堀部先生
堀部先生
このENoG値は、患側の軸索変性に陥っていない神経線維の割合を表します。そしてENoG値が高いほど予後が良好になるという報告があります。
ENoG値と予後の関係、詳しく知りたいです。
ゆうすけ
ゆうすけ
堀部先生
堀部先生
ENoG値ごとの累積治癒率について、40%以上で概ね1カ月以内、20〜39%で2カ月以内に治癒、10〜19%では4カ月で約80%、1〜9%では6カ月で60%の改善、0%では治癒例なしという報告がされています⁵⁾。
かなりしっかり予後って予測できるんですね。
ゆうすけ
ゆうすけ
堀部先生
堀部先生
しかしENoGは鍼灸院で実施することができない検査なので、この理論を応用した形で、鍼灸院で予後の推測ができる方法はないか検討しました。

NEXT:臨床での気づきは研究の始まり

1

2

3
akuraku3.jpg

関連記事

  1. 「学び」を深めるイベントをおこないます!【2021/9/2】

  2. うつ病の鍼灸治療と臨床研究のススメ 中編/鍼灸師・博士(鍼灸学):松浦悠人

  3. うつ病の鍼灸治療と臨床研究のススメ 後編/鍼灸師・博士(鍼灸学):松浦悠人

  4. うつ病の鍼灸治療と臨床研究のススメ 前編/鍼灸師・博士(鍼灸学):松浦悠人

  5. お灸と温度の話/鍼灸師・医学博士:三村 直巳

  6. お灸と免疫の話/鍼灸師・医学博士:三村 直巳