臨床での気づきは研究の始まり
そして、この反応の違いによって予後も異なっているように臨床的に感じました。
そのTwitchの違いというのは…。
急性期顔面神経麻痺患者を対象とした場合、「Twitchあり」の症例はENoGが高値で、その値は「Twitch減弱」「Twitchなし」の症例と比較して統計学的有意差を認めました。
要するに「Twitchあり」の患者は軽症である可能性が高いということです。
つまり、「Twitch減弱」「Twitchなし」の患者は重症である可能性が高くなります。
研究で見つけた次なる課題
とはいえ「Twitchあり」群の中にENoG値の高くない患者さんも含まれていたと…。
積み重ねが発展につながる
軽度麻痺であれば神経の治癒促進を期待して顔面神経走行上の経穴に刺鍼します。一方で中等度から重度の麻痺であれば後遺症出現頻度が増すことから、後遺症抑制を期待して表情筋への刺鍼を実施しています。
図¹⁰⁾
昨今では、表情筋を目標組織として刺鍼している報告が国内外で多いです。また国内では接触鍼を用いた報告もあります。どのような鍼治療の方法が最適なのかは今後の検討課題であるといえます。
これらひとつひとつを究明していく。そういった積み重ねが鍼灸医学の発展になると信じています。
参考文献
1)日本顔面神経研究会編. 顔面神経麻痺診療の手引き.東京: 金原出版; 2011.
2)Holland NJ, Bernstein JM. Bell’s palsy. BMJ Clin Evid. 2014 Apr 9;2014:1204.
3)Fujiwara T, Haku Y, Miyazaki T, Yoshida A, Sato SI, Tamaki H. High-dose corticosteroids improve the prognosis of Bell’s palsy compared with low-dose corticosteroids: A propensity score analysis. Auris Nasus Larynx. 2018;45(3):465-470.
4)Sweeney CJ, Gilden DH. Ramsay Hunt syndrome. J Neurol Neurosurg Psychiatry. 2001;71(2):149-154. doi:10.1136/jnnp.71.2.149
5)稲村 博雄. 顔面神経麻痺の電気生理学的検査 誘発筋電図検査からみたベル麻痺患者の経過を中心にして.耳鼻咽喉科・頭頸部外科. 2006: 78(10);737-47.
6)堀部 豪,山口 智,菊池友和 ほか.鍼灸臨床における末梢性顔面神経麻痺患者の予後予測に関する検討.全日本鍼灸学会 2017; 67(S1): 141.
7)堀部豪, 菊池友和, 山口智.顔面神経麻痺患者への鍼通電刺激による予後予測の検討–予備的観察研究-.第42回日本顔面神経学会抄録集.P100.2019.
8)堀部豪,菊池友和,山口智.鍼通電刺激と柳原法を併用した末梢性顔面神経麻痺患者の予後予測−Twitch陽性例での検討−.第43回日本顔面神経学会抄録集.P105.2020
9)萩森 伸一. 顔面神経麻痺の重症度と予後診断. ENTONI .2015:179:86-95.
10)山口 智. 鍼通電療法の新たなる展望 病期・病態による顔面神経麻痺の鍼通電療法 顔面神経及び表情筋に対する非同期鍼通電療法. 日本東洋医学系物理療法学会誌. 2016:41(2);35-42.
取材協力:埼玉医科大学
文=堀部豪
編集・撮影 = ツルタ
(2021.11.17公開)