難経本義諺解
■ 東方会(編) |
この本は私の師 馬場先生から薦められた書です。
傷寒論から勉強を始めた私にとって、馬場先生の教えは陰陽五行を自在に活用されたもので、当時の私には理解できない内容でした。陰陽五行について全く勉強していなかった私が「先生のように陰陽五行を理解するには何を読めばいいでしょうか?」と尋ねたところ、教えていただいたのがこの書『難経本義諺解』でした。
そして何より驚かされたのは、馬場先生がこの書を私に貸してくださったことでした。
『本を貸してくれたことって、そんなに驚くこと?』と思う人もいるでしょうが、大切な書を他人に貸すということは当時の私にとっては信じられないことでした。
古医書・古文献は、財産のようなものです。そう気軽に貸し借りできるものではありません。
しかもコピーさせてもらうわけですから、文献的に傷んだり紛失(脱簡錯簡)の恐れもあるのです。
手渡された和綴じの『難経本義諺解』は、当時の私には輝いて見えましたね(笑)。
難経の注釈本もまた数々ありますが、このような思い出もあり私に強く影響を与えた書だと言えます。
また、岡本一抱の文章として、懇切丁寧に説明してくれています。
その丁寧さに初学の間は多量の文字に遭難するような錯覚すら覚えます。
ですが、この文字の奔流に慣れた頃には、たいていの古文献でも苦手に感じることなく、読みやすいと感じるのではとも思います。