鍼灸師:足立 繁久の5冊

書評ということで、以下に5つの書を紹介させていただきます。
紹介するとはいえ、推薦図書というよりは私が影響を受けた書という形で紹介します。
なぜなら、読む人の信条や感性によって受ける印象も教訓もまるで異なってくると思うからです。

「この一冊を読めば傷寒論が分かる!」とか「一回読むだけで難経が分かる!」とか、そんな意味で書いたのではありません。
伝統医学ってそんな底の浅いものではありませんよね。

読む人によっては『この本、ハズレじゃないの…?』と感じることもあるでしょう。
読み手のレベルによって、読む本から受ける価値や感動は変わります。言い方を変えると本が読み手を選ぶのです。

ですから自分のレベルに合った書を探し求めることも重要です。
今の自分に合った本を探し、アタリ・ハズレを経験するうちに自分の嗅覚や選別眼が養われます。
伝統医学を学ぶには、読むべき本は膨大にあります。その時の自分に合う良書を探す旅を楽しんでください。

(1)医経解惑論
(2)難経本義諺解
(3)月刊誌 Newton
(4)傷寒論の謎ー二味の薬徴ー
(5)たたかうソムリエ

意釈 医経解惑論 玉函書

■ 小曽戸丈夫 (著)
■ 築地書館

この書籍は私が卒業後、研修先の先生に紹介していただいた本です。
自院を開業してからも何度も何度も繰り返し読んだものです。
何度か読んでいるうちに「なるほど! こういうことか!」「脈診も診断も鍼灸治療もこのように考えたら良いのだ!」と腑に落ちた時がありました。

それまでは

『病気や症状をどのように診断し、治療すべきか分からない。』
『自分の鍼灸に自信を持てる時って本当に来るのか?』
『どうしたら治療に対する迷いや不安は無くなるのだろう…』

と悶々としていました。

この書を読めば疑問や迷いが全て無くなった! とは言いませんが、迷いが晴れる第1段階を通過できたのはこの書のおかげだと言えます。
まさに“解惑(惑いを解く)”という名に相応しい書です。
内容としては『医経解惑論』は傷寒論に関する解説書で、漢方医学を鍼灸に取り入れたいという鍼灸師にとってはありがたい本です。

なぜ漢方(湯液)医学、傷寒論を勧めるか? 私自身、古典医学・伝統鍼灸の勉強は傷寒論から始めました。
『鍼灸の勉強なのに、なぜ漢方?』と思う方もいるでしょう。
傷寒論の文章はシンプルで「病・脈・証・并びに治」という構成です。

より具体的に書くと

「○○病というステージで●●脈が診られる。
そしてこのような病症が現れていることから診断して、□□湯証である」
という病理・問診・脈診から実践的に診断できるというのが傷寒論の基本構成になっています。

当時の私にとっては陰陽五行という抽象的で観念的な医学よりも、より具体的かつ実践的であると感じた傷寒論が学びやすかったのです。

また、漢方方剤の作用・効果を理解すれば、それを鍼灸配穴に翻訳することで実際の治療に応用できます。
この考えは現在の私の鍼灸治療の基盤のひとつです。

また『医経解惑論』の特徴として、素問・霊枢・難経・神農本草経・傷寒論、これら五つの書は一貫した理論に基づくというスタンスにあります。
「素問・霊枢や難経と傷寒論は全く別のものである」と隔絶してしまうより、同じ人体をみるのですから共通した人体観・病理観で勉強できる書と主張する『医経解惑論』の存在は有難かったですね。

『医経解惑論』は江戸期に書かれた文献ですが、小曽戸丈夫先生らが意釈してくれている『意釈 医経解惑論』(築地書店)があります。

しかし、残念ながらこの意釈本は絶版になっていますが、図書館で探せば見つかると思います。
私の主催する鍼道五経会でも機会をみつけてはこの書を学んでいます。
傷寒論の注釈本はたくさんありますが、私の始めて出会った書であり、惑いを解いてくれた書という点でこの書を一番に挙げます。

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