それから
■ 夏目 漱石(著) ■ 新潮文庫(1985年) |
言わずと知れた、漱石の前期三部作。旧帝国大学(現・東京大学)を卒業したものの定職につかず、事業を営んでいた裕福な実家からの仕送りによって生計を立て、芸者遊びなどに興じながら日々を消費していた主人公・長井代助。密かに心を寄せていた三千代の行く末を思い、真面目で優秀な友人である平岡との縁を取り持った。しかし、平岡が銀行を退職した後で借金を重ねていく様子を見かねて、一緒に生きたいという想いを伝える。政略結婚を勧めていた実家からは勘当され、金銭的・文化的に恵まれていた生活を捨てることになるが、愛する三千代との人生を選ぶという物語。
本書のテーマを「略奪愛」としている書評もありますが、僕にとっては「人生に於ける美学・決意・タイミング・覚悟の大切さ」について考えさせられる一冊でした。『吾輩は猫である』の軽妙さも好きなのですが、中学三年生の頃に出会ってから約35年に渡り「座右の書」として本著を愛読しています。僕のことをよく知る人ならば、「さもありなん」とほくそ笑んでいるはず。
また、1985年に故・森田芳光監督によって映画化された本作品。代助に故・松田優作、平岡に小林薫、三千代は藤谷美和子がキャスティングされており、息を飲むほどに儚く美しい映像(夏の暑い日に、三千代が百合の水盆から水を飲むシーンとか)は、昭和を代表する名画として異論を挟む余地はないでしょう。
『失楽園』を森田氏の代表作として挙げる向きもありますが、『それから』を観てからにしてくれる?
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