ストレスと肩こりの関係性
なぜうつ病など精神疾患の研究を始めたんですか。
タキザワ
松浦先生
もともと精神疾患に興味があったのと、大学の講義で共通したキーワードとして、「心理社会的要因」っていうのが何度も出てきたんですよね。
心理社会的要因?
タキザワ
松浦先生
例えば「腰痛には新しい概念があります。それは生物、心理、社会的症候群だよ」みたいなことを言ってて。要は仕事などのストレスも、腰痛につながっているというのを授業で習ったんです。
やっぱり、ストレスと痛みは関係するんですね。
ツルタ
松浦先生
だけど「なんでストレスを感じると腰が痛くなるんだろう」とか「じゃあ、鍼って本当にメンタル面にもいいのかな」というのは詳しくわかってなくて。そこでうつとか心に興味を持ち始めて、大学院で関連した研究をしてみたいな、って思ったんです。
そのメカニズムに興味がでてきたと。
ツルタ
松浦先生
まず着目したのは肩こりです。心理社会的要因とすごく関係があるんですよね。そこで、肩こりを切り口に、鍼がメンタル面に及ぼす効果を見てみようと思って実験したのです。
緊張するとすごく肩がこるし、ストレスを感じると頭痛を起こしやすいですよね。でも研究するのに、肩こりやストレスを数値にするのが難しそうです。
ゆうすけ
松浦先生
そんなときに「慢性肩こりの患者さんはコルチゾール濃度が高い」という報告を見つけたんです。コルチゾールというホルモンは、慢性ストレスの1つの指標になるんですよ。
おお。
ゆうすけ
松浦先生
「これだ! やっぱり肩こりの患者さんはストレスを強く感じていて、コルチゾール濃度も高くなってるんだ」って。もしかしたら、鍼は脳のレベルに働きかけて、コルチゾールやホルモンを調整するから、肩こりが治っていくんじゃないかと思ったんです。
それだけ聞いてもワクワクしちゃいます。
ゆうすけ
松浦先生
それが大学院の修士の頃ですね。大学を卒業して最初の研究でした。鍼をした群としてない群を比べたんですけど、鍼をした群のほうが、肩こりの自覚症状が軽減したのとともに、コルチゾール濃度も下がったんですよ。
ストレスにも、やっぱり良かったのですね。
ゆうすけ
松浦先生
僕が修士2年生のときのことです。鍼灸学科の安野富美子先生と共同研究を始めていた精神科のクリニックで、博士課程に進学して研究をやってみないかと勧められて。せっかくだから、やってみようってなって。そこから本格的にうつ病の臨床研究が始まったんですよ。
なるほど。いい縁が巡ってきましたね。目標はどこにありますか。
ツルタ
松浦先生
世界的にみると、うつ病に対する鍼のランダム化比較試験は結構あるんですけど、日本でやった研究はないんですよね。
ほかの国ではやられているのに。
ツルタ
松浦先生
だから、まずは日本でのうつ病に対するランダム化比較試験を行いたいですね。それを第一歩にして、いつかうつ病の治療ガイドラインに鍼を載せるのが、大きな目標です。
NEXT:実際の臨床に近い状況をいかに作るか