知りたいって原動力じゃない?/鍼灸師:鈴木 寿文

30代 鍼灸と出会う

それで30歳を迎えたとき、鍼灸の道を選んだのですか?
ウラベ
ウラベ
鈴木先生
鈴木先生
いきなり国家資格は敷居が高くて、最初は整体の学校で1年くらい勉強しました。
整体の学校を出たら、すぐに開業するパターンの人が多かったんだけど、ぼくは浅い知識で始めるのが怖かったから、いろいろ他の手技療法や民間療法を学びにいったりしました。
セラピストの道に進んだのですね。
ウラベ
ウラベ
鈴木先生
鈴木先生
その頃は、アルバイトでトラックドライバーをしたり、スープカリィ屋さんで働いたりしながら、治療のことを学んでいました。
そんなときに母校の橋本先生と出会って「鈴木くんも鍼をやったほうがいいよ」ってすすめられるんだけど、どこかスナフキン的な気分が抜けきらなくて、2年くらい鍼灸師を目指すのを躊躇していました。
背中を押してくれるきっかけが、あったんですか?
ウラベ
ウラベ
鈴木先生
鈴木先生
代田 文誌(しろた ぶんし)先生の『鍼灸真髄』を読んで、「こんなに面白そうなら、やってみる価値があるな」と思ったこともあって、鍼灸の学校に行くことにしたんです。
で、夜間部でワタクシと出会う、と(笑)。
鍼灸の専門学校を出たあとは、すぐに荻窪で開業したんですよね?
ウラベ
ウラベ
鈴木先生
鈴木先生
そうそう。
学生の頃から、開業したらどんな鍼灸院にしたいかって、イメージしてました?
ウラベ
ウラベ
鈴木先生
鈴木先生
そんなに明確にイメージしていなかったと思います。
ただ、やるなら荻窪がいいなぁ…と考えていたくらい。
当時から産婦人科の領域には興味がありました。
婦人科とか産科って、未来につながるから夢とか希望があるじゃない?
そういうものに積極的に関わりたいな、と思っていました。
開業してすぐに、患者さんは来てくれましたか?
ウラベ
ウラベ
鈴木先生
鈴木先生
結果的には、そうですね。
チラシは撒かなかったし、ホームページも半年以上経ったあとで知り合いに作ってもらった感じです。
それでもありがたいことに、患者さんの紹介で患者さんが来てくれるようになりました。
患者さんはご近所の方々がメインですか?
ウラベ
ウラベ
鈴木先生
鈴木先生
そうですね。基本的に地域に密着した経営の方が、地元に還元できるものも多くていいかなと思っていました。
遠くからたくさん来てほしいとか、そういうことは考えてなかったです。
「産婦人科系をやりたい」という想いは、どんな成り行きで叶ったのですか?
ウラベ
ウラベ
鈴木先生
鈴木先生
近くに東京衛生病院という総合病院があるんですけど、そこの看護師さんが治療に来てくれるようになりました。
なかには妊娠希望という方もいらっしゃって。
いろんな治療法を駆使して治療を続けていたら、40歳前後の師長さんクラスの方に、ポンポンポーンって結果が出てくれて。
それは嬉しかったでしょうね。
ウラベ
ウラベ
鈴木先生
鈴木先生
そうそう。それで、東京衛生病院って無痛分娩でも有名な病院なんですけどね。
逆子だといろいろ困るじゃないですか。
逆子だと帝王切開になるから、無痛分娩ができなくなっちゃいますもんね…。
ウラベ
ウラベ
鈴木先生
鈴木先生
それで「鍼灸は逆子に効果あるよ」なんて話を産科の看護師たちに話をしてみたら、病院の地域医療連携室から連絡があって、地域医療として連携することになったんです。
こんなベッド一床の鍼灸院に患者さんを紹介してくれて、ありがたい限りですね。
それは、結果を出してきたからですよ。
ウラベ
ウラベ
鈴木先生
鈴木先生
そうやって逆子が治った患者さんが、2人目、3人目を出産するときも、何か困ったら来てくれるようになってきて。
家族や知り合いも紹介してくれるようになりました。
ここでは逆子が鍼灸の入口になっているんですね。
ツルタ
ツルタ
鈴木先生
鈴木先生
鍼灸で逆子が治ると、みんなすごい喜んでくださるわけですよ。
はっきりと結果も出るから、こっちも常に緊張感をもって仕事ができるんです。
なかなか逆子が治らない時もあるんですけど、そんなときは文献を漁っては読んで、別の経穴を使ってみたり、お灸の壮数とか補瀉とか…。
そうやって自分の型をつくっていく作業をしました。
どれくらいの症例数なんですか?
ウラベ
ウラベ
鈴木先生
鈴木先生
今まで逆子だけでのべ6000件以上は診ています。改善率は、34週目までで87%くらいですかね。

40代 大学と大学院

開業したあと現在に至るまでの13年間。臨床の他にどんなことをしてきましたか?
ウラベ
ウラベ
鈴木先生
鈴木先生
まず医薬品登録販売者の資格を取りました。
東洋医学って漢方薬と鍼灸と二本柱だと思うんです。
なるほど。
ウラベ
ウラベ
鈴木先生
鈴木先生
だから漢方薬のことも知っていた方がいいはずと思って。
それに医薬品登録販売者の資格は使わないにしても、薬の基本的なことを学ぶのはプラスになるはずと考えました。
そうかもしれませんね。
ウラベ
ウラベ
鈴木先生
鈴木先生
臨床はいろんな患者さんが来ますから。
この時期はうつ病の患者さんが多かったんですよ。
でも臨床するには専門学校の精神科領域のカリキュラムでは全然足りないと思いました。
精神科領域を学ぶ必要があったんですね。
ウラベ
ウラベ
鈴木先生
鈴木先生
一般書を買って独学で学んでもいいんだけど、それでは不十分だと思いました。
そこで人間総合科学大学に編入して、心理学関連で多くの単位を取りました。
専門学校で足りないと思った領域を大学で勉強してみたいと思ったんです。
その大学は実際に通うんですか? それとも通信?
ウラベ
ウラベ
鈴木先生
鈴木先生
ここは通信制です。3年次に編入して2年間、学位論文も書いて。
鍼灸の専門学校卒であれば、3年次編入が可能な大学があるってことですか?
ツルタ
ツルタ
鈴木先生
鈴木先生
そうですよ。鍼灸専門学校卒業は短大卒業と同じ扱いで、大学に編入することが可能です。
それって嬉しい情報ですね。専門卒業後にもっと勉強したくなる人もいるだろうし。
ツルタ
ツルタ
鈴木先生
鈴木先生
いまは二期制の大学が多いので、ぼくは10月に入学しているんですよ。
それで、2年後の9月に卒業して、翌年の4月に明治国際医療大学の大学院に進学したんです。
この大学院は通信制があって、仕事しながら定期的にスクーリングを受けました。
とても勉強熱心ですね。
ツルタ
ツルタ
鈴木先生
鈴木先生
大学の卒業論文を刺絡関連で書いたんですけど、なんか不完全燃焼な感じで…。
もっと専門的な勉強がしたくなって、文献の研究をするために大学院に行くことにしました。
修士論文は痧病(さびょう)という、あまり知られていない病について書きました。
どうして、わざわざ京都の大学院を選んだんですか?
ウラベ
ウラベ
鈴木先生
鈴木先生
ここは修士を取ると、自分の専攻した分野の教員免許が付いてくるんです。
ぼく50歳なんで、これからは後進の人に教えることがあるかもしれないと思って。
大学院では2年間、文献研究をしていたんですか?
ウラベ
ウラベ
鈴木先生
鈴木先生
実は大学院に4年行ったんです。家にはレポートや論文などを持ち込まないと家族と約束していたので、この治療院でずっと論文を書いてました。
鈴木さんにとって大学院って何をするところでした?
ウラベ
ウラベ
鈴木先生
鈴木先生
…掘り下げるところですかね。自分の関心のあることを掘り下げていく入り口として、大学院に行ってみるのもひとつありかなと思いますよ。
逆に大学院に行って大変だったことがあったら聞きたいです。
ウラベ
ウラベ
鈴木先生
鈴木先生
それは距離的に遠かったことですね。
東京から通うのは大変ですよね。
ウラベ
ウラベ
鈴木先生
鈴木先生
京都駅から、さらに山陰本線で1時間くらいかかる山の中にありますから。
それでも、九州や北海道から通う学生もいるので、弱音は言っていられないですね。
あとは、祇園祭や紅葉の時期は宿泊費が高くなるから授業やめろとか(笑)。
いろいろ大変そうなのに、みなさんよく続きますね。
ツルタ
ツルタ
鈴木先生
鈴木先生
きっと大学院までわざわざ行こうって人は、困難より学びたさが勝るんじゃないかな。
今はメールで教授ともやり取りできるし、昔より勉強しやすい環境ではありますよ。
それに少子化で社会人大歓迎なので、鍼灸師をやって疑問に思ったことを、しっかり学びたくなったら進学してみるのも悪いことではないと思います。

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