今までの概念を壊さないと、可能性って見えてこない気がしたんです/鍼灸師:有山 優子

コロナ禍をきっかけに、働き方への意識が変わってきたように思います。
自宅で家族と過ごす時間が増えたことで、改めて「仕事とは何か」「会社とは何か」という命題と、私たちは今、向き合っているといえるでしょう。

有山優子先生は、子育てが落ち着いたのをきっかけに、鍼灸学校に入学。
ゼロベースで自分の働き方を熟慮した結果、「自宅で灸専門の治療院を開業する」という道を選びました。

患者さんは1日1人限定――。

生活の中に仕事を無理なく組み込む、そのスタイルは「ワークライフバランス」(仕事と人生の両立)より、さらに一歩先にある「ワークインライフ」(人生のための仕事)の実践ともいえそうです。

その背景にある、家族への思いや、仕事観についてうかがってきました。

有山 優子(ありやま・ゆうこ)先生

神奈川県横浜市出身
大学卒業後、大手建設会社に勤務
1995年 結婚を機に退職
2014年 呉竹鍼灸柔整専門学校の鍼灸マッサージ科に入学
2017年 灸専門自宅サロン「鍼灸マッサージサロン和み」開業

 

娘の大学進学と同じタイミングで鍼灸学校へ

有山先生は、お灸を専門にやられているのですね。
タキザワ
タキザワ
有山先生
有山先生
「ハリトヒト。」なのに、いいんでしょうか(笑)。
今回は、キュウトヒト。ですね(笑)。子育てを終えられてから、鍼灸学校に通い始めたとか。
タキザワ
タキザワ
有山先生
有山先生
はい。しかも、学校に入るまでに鍼灸を受けたことすらなくて…。
患者として治療を受けていて…というわけではないんですね。有山先生は、どういうきっかけで、鍼灸業界に興味を持たれたのですか。
タキザワ
タキザワ
有山先生
有山先生
実は、もともと作業療法士の学校に行きたいと思っていたんです。大学時代にアメリカに短期留学をしたときに、病院でボランティアをしたんですけど、その時に「作業療法士の仕事って面白そうだなあ」と思って。
身体に関する仕事をやりたい、というイメージはあったんですね。
タキザワ
タキザワ
有山先生
有山先生
ええ。まずは学費を稼ぐため建設会社に就職したんですけど、そこで夫と出会って結婚することになりました。彼は転勤がある専門職だったので、学校に通うとしたら今ではないのかなと…。
学校に通ったら、転勤になったときに一緒にいられなくなりますものね。
タキザワ
タキザワ
有山先生
有山先生
すぐ子どもにも恵まれたので、子育てと激務の夫のサポートをするために、仕事を辞めて主婦になることにしたんです。娘がちょっと変わった子で、小さい頃から鉱物採集が趣味で。
鉱物…? 石ですか?
タキザワ
タキザワ
有山先生
有山先生
はい。山の奥深くに入って水晶や蛍石などのいろいろな鉱物を採集するのが大好きで。なかなかこういう子っていないと思って、育てていて大変な反面おもしろかったです。
お子さんが成長するまでは、家庭を中心に据えていたと。
タキザワ
タキザワ
有山先生
有山先生
子どもがある程度成長するまでは見届けたいと思ったので、子育てと仕事を両立できるように、アルバイトや非常勤という働き方をしてきました。
まだ鍼灸とは接点がないわけですよね。
タキザワ
タキザワ
有山先生
有山先生
全くないです。受けたことすらなかったので(笑)。

卒業してすぐの自宅開業を決めていた

どうして鍼灸学校に通おうと思ったんですか。
タキザワ
タキザワ
有山先生
有山先生
最後に勤めたところの通勤電車の窓から、鍼灸の専門学校が見えていたんですよ。毎日「何かの学校があるな」とボーっと見ていました。
うんうん。
タキザワ
タキザワ
有山先生
有山先生
40歳をすぎて、子育ても少し落ち着いてきて「これから先どうしようかな」というのを真剣に考え出していた時に、ふと、その学校のことを思い出したんです。作業療法士ではなくても、鍼灸だったら身体のことを勉強できるんじゃないかって。
結婚後もずっと身体のお仕事への興味関心があったわけですか。
タキザワ
タキザワ
有山先生
有山先生
実は、主婦をしていたときから、基礎的な栄養学を通信講座などで勉強していたんです。夫の仕事がとにかく忙しかったので、彼が倒れてしまわないように食事の面から支えたくて。
でも、身体のことは分からないことばかりだったので、ちゃんと勉強したいとずっと思っていました。
旦那様の体調をサポートしたいという気持ちが、出発点だったんですか。
タキザワ
タキザワ
有山先生
有山先生
そうですね。もともとのきっかけは夫です。娘が大学生になったのと同時に、私も新横浜の呉竹鍼灸柔整専門学校に入学しました。45歳のときのことです。
旦那さんは賛成してくれました?
タキザワ
タキザワ
有山先生
有山先生
主人に「学校に行きたい」と言ったら快く受け入れてくれて、在学中もずいぶん応援してくれました。それと、学費は自分で働いて貯めていたんですよ。
今はこうして、ご自宅で開業されていますが、入学前から思い描いていましたか。
タキザワ
タキザワ
有山先生
有山先生
はい。「自宅で鍼灸院をやりたいんですけど、条件を教えてください」って、自治体に電話をして、事前にいろいろ教えてもらっていました。自宅で開業できるのを確認してから受験したんです。
ビジョンが明確だったんですね。時期も決めていましたか。
タキザワ
タキザワ
有山先生
有山先生
はい、鍼灸師になったらすぐに自宅で開業すると決めていました。
それだけ自宅開業への強い想いがあったんですね。
タキザワ
タキザワ
有山先生
有山先生
卒業をする時、私は48歳なので勤めるにしてもさまざまな制約があると思って……。
何より、家庭を優先したいという気持ちがあったので、自分のペースで働けるようにするには、自宅開業がベストだと思っていたんです。夫のケアもしやすいですし。
旦那様の忙しさは、その後も変わらなかったんですね。
タキザワ
タキザワ
有山先生
有山先生
ええ、放っておいたら過労死しちゃう気がするくらいでした(笑)。
やっぱり心配になりますよね。
タキザワ
タキザワ
有山先生
有山先生
だから食事だけでなく、鍼灸やマッサージでもっとケアをしたいと思いました。彼が元気じゃないと意味がないんです。一緒に歳をとって、ずっと一緒に暮らしていきたいので。
家族のための鍼灸マッサージ師にもなれますね。
タキザワ
タキザワ
有山先生
有山先生
本当に、家族優先です。

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