解明されていないから、一緒にやれる /鍼灸師:鳥海 春樹

エビデンス作りのために「普通の業団」が必要

鳥海先生
鳥海先生
昔、東京都鍼灸師会で、東京都を鍼灸の療養費と療養(健康保険の治療)の併用を可能にする構造改革特区の申請をすることになって、2回ほど特区の申請をしたことがあるの。
病院に掛かっている疾患でも、鍼灸の療養費が支給されるのを可能にする特区ということですか。
ゆうすけ
ゆうすけ
えーと。鍼灸療養費の支給対象って、慢性病であって医師による適当な治療手段のないものだから、例えば病院でリウマチの治療をしていたら、リウマチに対して鍼灸施術を併用しても鍼灸の療養費は支給されないんですよね。だから療養(健康保険の治療)と鍼灸の療養費が同一疾患に併用されることはない。
だけど、その特区なら、同一疾患に対して医師と鍼灸師が同時に取り組めるから、薬物療法と鍼灸を併用する研究とかが進みそうってことですかね。
ツルタ
ツルタ
鳥海先生
鳥海先生
そういうこと。だけど、特区の認可はうまくいかなかった。
やはり難しいんですね。
ゆうすけ
ゆうすけ
鳥海先生
鳥海先生
話をする相手は内閣府の官僚だったんだけど、それも最初は医者と同じように「鍼灸のエビデンスはどれくらい固まっているんですか?」とか聞いてくるわけ。だからちゃんと「知らねー」って言ってきたよ。
ここも「知らねー」ですか(笑)。
ゆうすけ
ゆうすけ
鳥海先生
鳥海先生
だって「まだエビデンスがない」から特区にしてくれって頼んでいるわけでしょ。療養費を使いやすくして、今よりも臨床研究がしやすい環境を作ってくれということだから。
官僚の人も鍼灸の抱える問題についてはとても良く分かってくれる。だけど、そこから動いてくれるかどうかは別問題なんだよ…。
何が壁になっているんですか?
ゆうすけ
ゆうすけ
鳥海先生
鳥海先生
官僚は動く前に、鍼灸の業界を調べるの。いくら鍼灸のポテンシャルに気づいて推していきたいと思う官僚がいても、細い業界団体がいっぱいある今の状況を知ってしまうと「これはやめとこう」ってなっちゃう。
もっと大きな業界団体があれば、例えば厚労省の協力が得られるようになるってことですか?
ツルタ
ツルタ
鳥海先生
鳥海先生
大きいというか、普通の業団があればいい。今はそれすらないんだよ。
公益社団の日本鍼灸師会って、他の医療職の業界団体と比べて規模が1/20なの。本来なら8万から10万人は会員がいないといけないけど、4,000人しかいないの。ちょっと、これでは無いに等しいでしょう。
官僚からしたら、「業界をまとめる団体がないから支援しようがない」とかなりそうですね。窓口どこですかって。
ツルタ
ツルタ
鳥海先生
鳥海先生
そこは「知らねー」とは言えない(笑)。
そうすると、鳥海先生は、鍼灸の研究を進めるために業団を盛り上げていきたいってことですか?
ツルタ
ツルタ
鳥海先生
鳥海先生
どうだろうな。ただ、俺はもっと鍼灸の研究を進めたいと思ってる。医者や研究者に鍼灸の可能性を伝えたり、共同研究に引っ張り込んだりすることをもっとやっていきたい。
これはみんなのためにもなることだし、この仕事が俺の担当なんだよね。

【記事担当】
取材・文 = ゆうすけツルタ
撮影 = シンタロー
編集 = くちやまだ

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