「LGBT」とは、「レズビアン(L)」「ゲイ(G)」「バイセクシャル(B)」「トランスジェンダー(T)」それぞれの頭文字からとった性的マイノリティの総称です。
電通ダイバーシティ・ラボが実施した「LGBT調査2018」によると、20歳~59歳の調査対象6万人の中で、LGBT層に該当する人は8.9%となりました。8.9%という数字は約11人に1人で、日本にいる左利きの人とほぼ同じ割合だそうです。
また同調査によると、「LGBT」という言葉の浸透率は68.5%と約7割にのぼっています。ここ数年でLGBTを取り巻く環境が、急速に変わりつつあるといってよいでしょう。しかし、その一方で、性的マイノリティへの社会の理解はまだ十分だとはいえません。
そんななか、鍼灸院で「LGBTフレンドリー」を打ち出しているのが、飯塚聡(いいづか・さとし)先生です。
そこには、どんな思いが込められているのでしょうか。
飯塚 聡(いいづか・さとし)先生
東京都新宿区出身
獨協大学外国語学部英語学科卒業後、2011年まで外資系航空会社に勤務
退職後すぐに東京医療専門学校本科入学、2014年卒業
その後東京医療専門学校教員養成科に進学し、2016年卒業
卒業後すぐに南青山鍼灸マッサージ治療室らるく開業
2018年より新宿医療専門学校にて非常勤講師
院名からも「LGBTフレンドリー」を発信
飯塚先生は「LGBTフレンドリー」を掲げて開業されてますよね。これはどういうキッカケで始めたんですか。
ツルタ
飯塚先生
教員養成科の1学年の上の先輩が、古代中国の文献からLGBTの調査をして、それを卒業論文としてまとめていたのがきっかけです。
先輩の論文は、あくまでも古代中国の文献上におけるLGBTの言及に留まっていたので、私はLGBTが抱える現代の問題点を卒業論文のテーマに選びました。
先輩の論文は、あくまでも古代中国の文献上におけるLGBTの言及に留まっていたので、私はLGBTが抱える現代の問題点を卒業論文のテーマに選びました。
卒業論文のテーマでしたか、なるほど。
ツルタ
飯塚先生
LGBTという言葉はもちろん知っていましたが、LGBTの方たちの中には医療を受ける上で、ある問題を抱える人がいると考えたことは、それまでなかったんですよね。
ある問題というのは?
ツルタ
飯塚先生
LGBTの方のなかには、医療機関にかかりにくいと感じる人がいるということです。
ならば、LGBTを含む性的マイノリティの方にも、安心して来ていただけるような鍼灸院をやりたいと思いました。
ならば、LGBTを含む性的マイノリティの方にも、安心して来ていただけるような鍼灸院をやりたいと思いました。
治療院のお名前「らるく」って、LGBTシンボルの「虹」のことですか?
ツルタ
飯塚先生
フランス語の「ラルクアンシエル」は「虹」という意味なので、LGBTのシンボルでもありますね。
院名からもLGBTフレンドリーを発信していたとは……。
ツルタ
飯塚先生
もちろん、いろんな方に治療を受けてほしいというのが前提で、「LGBTの方も大歓迎です」とホームページやTwitterに書くようにしています。
今、どの治療院でも、女性の患者さんへの配慮は、程度の差はあっても、当たり前のようになされていますよね。でも、性的マイノリティの患者さんのことを考えたことはなかったです。
ツルタ
私も、医療機関にかかりにくい方がいるということに、全く想像が至ってなかったです。今はじめて知りました。
タキザワ
今は男性もキレイになりたい時代
飯塚先生
性的マイノリティの方に限らず、鍼灸院は入りにくいので「もっと入りやすくすれば、鍼灸のよさをもっとたくさんの人にわかってもらえるのに」と、イチ患者として、ずっと思っていました。
鍼灸とはどのように出会ったんですか?
ツルタ
飯塚先生
鍼灸師になる以前は航空会社の予約センターで、お客さんから電話で予約や問い合わせを受ける仕事をしていたんですけど、ずっとパソコンの前で同じ姿勢なので、肩とか腰は痛くなるし、目は疲れちゃって仕方なくて。
なるほど、治療が必要だったわけですね。
ツルタ
飯塚先生
会社の先輩が鍼の先生を紹介してくれたんですけど、鍼は痛そうだし、お灸は熱そうじゃないですか(笑)。でも、ちょっと興味もあったので、怖々行ってみたんですね。
やっぱり勇気は必要なのかも(笑)。はじめての鍼灸はどうでした?
ツルタ
飯塚先生
今まで感じたことのない気持ち良さでした。「鍼灸ってすごいな」と思ったのが出会いです。
それで鍼灸師を目指した?
ツルタ
飯塚先生
いや、そこからしばらくはただの患者として通ってました。当時は、社会人3年目ぐらいだったんです。鍼灸師という職業への関心はあったものの、会社勤めをしながら3年間学校に通うのはちょっと無理だなと。
それから10年くらいですかね。勤めていた会社が合併したのをきっかけに、早期退職することにしました。その時に、鍼灸師になりたかったことを思い出したんですよ。
それから10年くらいですかね。勤めていた会社が合併したのをきっかけに、早期退職することにしました。その時に、鍼灸師になりたかったことを思い出したんですよ。
それは何歳ぐらいですか?
ツルタ
飯塚先生
39歳です。40手前で鍼灸学校に入りました。
大きな方向転換でしたね。
ツルタ
飯塚先生
あと実は入学する前の段階で、「教員養成科はとても面白いことが学べる」という話を聞いたので、プラス2年かけて教員養成科に進むことも決めていたんです。
珍しいですね。教員養成科はどうでした?
ツルタ
飯塚先生
呉竹の教員養成科の話になりますけど、間違いなく面白いです。より実践的な実技を習えたり、教育学やプレゼンテーションについての授業があったり、あとは開業セミナーみたいなのもありました。
なんといっても著名な先生が次から次にいらっしゃるので、さまざまな鍼灸の可能性を見せつけられるのが非常に刺激的でしたね。
なんといっても著名な先生が次から次にいらっしゃるので、さまざまな鍼灸の可能性を見せつけられるのが非常に刺激的でしたね。
今は教員の資格を使って講師のお仕事も。
タキザワ
飯塚先生
はい。四ツ谷の新宿医療専門学校で週1回なんですけど、東洋医学概論を教えています。
最近の学生さんの傾向とかってありますか。
タキザワ
飯塚先生
スポーツがきっかけで鍼灸師を目指したとか、美容鍼に興味があるという女子学生さんが多いのかな。そういえば美容鍼に興味があるっていう男子学生さんも増えているような気がします。
へー、そうなんですか。
ツルタ
飯塚先生
今は男性もキレイになりたい時代なんですよ。美容に対する意識もだいぶジェンダーレスになってきているのを感じます。
そう考えると、「性的マイノリティの患者さんにも来やすい治療院に」という発想は、現代を生きる鍼灸師ならば、むしろあって当然の意識という気さえしてきたな。
ツルタ
より多くの人に鍼灸を知ってもらうには、必要な配慮ですよね。今まで考えもしなかったけど…。
タキザワ
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