今は子どもに合わせた働き方をしています/鍼灸師:井上 真智子

縁もゆかりもない二宮で開業

そのあとで、この二宮で開業することになると思うのですが…。
もともと「開業するなら二宮で!」という、強いお気持ちがあったんですか?
ウラベ
ウラベ
井上先生
井上先生
杉並の家が契約更新になったタイミングで、夫と「もっと自然の多い土地で子育てをしよう」という話になったんです。
実は二宮は、縁もゆかりもない土地なんです。
縁もゆかりもない二宮という土地を選んだ理由は?
ウラベ
ウラベ
井上先生
井上先生
たまたま、夫がGoogle Earthで見つけたんですよ(笑)。
ええっ! Google Earthで?!
ウラベ&ツルタ
ウラベ&ツルタ
井上先生
井上先生
二宮は海と山が近くて、東京へも通勤圏内だし…。
住んでみると、すごくいいんですよ。
子育てする上でも、ストレスが少ないです。
子どもを育てる上でのストレスが少ないのは、どのあたりに感じますか?
ウラベ
ウラベ
井上先生
井上先生
東京と比べてしまうのは狭い考えなんですけどね。
こちらは「子育てをメイン」に考えている方が多いような気がします。
子どもを中心に据えている、というか。
「子どもに合わせた働き方をしている」人が多いような感じ…があるかな。
なるほど。私もそうですが、都会の生活の中だと、わが子より母親の仕事の都合の方を優先してしまうことが多いかもしれません。
ウラベ
ウラベ
井上先生
井上先生
仕事の面でも、女性鍼灸師がまだ少ない土地柄なのでニーズがあると感じています。
あと、地元の鍼灸マッサージ師会に入っているので、地域のお祭りにブースを出したり、マラソン大会を手伝ったり。
そんなふうに地域密着でやっていけるのも、楽しいですね。

創業補助金制度を活用して開業

こちらの鍼灸院を開業するとき、コンセプトなどはあったのですか?
ウラベ
ウラベ
井上先生
井上先生
この治療院を作るときに政府の補助金を使ったんですよ。
野田内閣だった時に「創業補助金制度」ができたので、それを活用することにしました。
「20-40代の女性のライフステージに特化した鍼灸治療の提供」が事業テーマです。
たしかに、こういう助成金や補助金をちゃんと使える鍼灸師って少ないような気がしますね。
ツルタ
ツルタ
井上先生
井上先生
(メモを見ながら)「20-40代の女性のライフステージに特化した鍼灸治療の提供、未妊・不妊・妊娠・出産・育児期特有の悩みにこたえる、地域唯一の鍼灸治療室。養生指導」というふうに、事業計画書には書いたみたいです(笑)。
おお、すごい! こういった事業計画書をスムーズに書けるところに、金融関係の仕事をしていたころの経験が活きているんですね。
ウラベ
ウラベ
井上先生
井上先生
ええ、そうかもしれませんね。
5年間、報告書を出すだけで、返さなくていい助成金です。
売上目標とか数字の部分もあるのですが、そこらへんは未来のことだし、わからない部分でもあるので、あくまで「目標」で書いています。
こういうのって、誰に聞いたらいいのか、わからない話かもしれないですね。
ツルタ
ツルタ
井上先生
井上先生
地域の青年商工会議所を通して応募しなくてはいけないので、まずはそこに持っていきます。
会議所の職員や中小企業診断士が、親切に相談を乗ってくれますよ。
地域に雇用を生むこと、地域に税金を納めること…なんかを伝えるといいと思います。
開業をするときに、助成金があるって心強いでしょうね。
ツルタ
ツルタ
井上先生
井上先生
そうですね。治療院という「はこ」を作るとき、お金をかけられたのは大きかったと思います。
女性の設計士さんに「こんな感じで」って、イメージをお伝えしただけなのですが、すてきに仕上げてくださいました。
白と緑と木のぬくもりがあって、ほんとうに落ち着く空間ですよね…(しみじみ)。
ツルタ
ツルタ

『場』を持つことで、世界がひろがる

これから井上さんのように女性鍼灸師が活躍する時代が来ると、個人的に思っています。
伝えたい想いやアドバイスはありますか?
ツルタ
ツルタ
井上先生
井上先生
私の場合は最初に自分の治療院という「はこ」を作っちゃったのが、良かったのだと思うんです。
ライフスタイルに合わせて、縮小したり拡大させたりして、変えていくことができます。
まずは「場」を作ることが、大事なのかなって。
なるほど…。
ツルタ
ツルタ
井上先生
井上先生
自分の稼ぎだけで家族を養うのは、正直、厳しい世界じゃないですか。
そのなかで、30-40代の家庭を持った女性が自分ひとりでやろうとすると、家族にも自分にも負担をかけすぎてしまうと思います。
でも、子育てだけだと息が詰まってしまう。
…わかる気がします。
ウラベ
ウラベ
井上先生
井上先生
なので、こういう「場」を持つことで、マイペースに、自分の世界が広がっていく楽しさを味わったり、技術の研鑽に励むことができます。
子育て真っ最中の今の時期は、そういうふうに割り切って、収入だけでは得られない宝物を得るタイミングだと考えれば、楽しく過ごせるんじゃないかと思います。
逆に母親に余裕がなくなると、家族にもそれが感染してしまうことがありますよね。
ウラベ
ウラベ
井上先生
井上先生
ええ。子どもにはお母さんの全部が表れるので。
自分が忙しくなりすぎると、敏感な子どもたちはすぐにそれを感じ取ります。
だから、自分に充分な伸びしろを持たせるような働き方をしないとだめだな、と考えています。
鍼灸の仕事は、自分自身が子育てに迷ったときに、逆に患者さんからアドバイスをいただいたり、悩みの相談にのっていただけたりして、お得だなって感じることもあります。
ウラベ
ウラベ
井上先生
井上先生
ええ。おしゃべりをしに来られている方も多いですよ。
うちもそんな感じです(笑)。
女性鍼灸師だと、特にそういう傾向になるのかも…。
ウラベ
ウラベ
実は、ぼくのところもそうです…(笑)。
ツルタ
ツルタ

《一同笑い》

「専門分野は世間話です」って、言ってます(笑)。
ツルタ
ツルタ
井上先生
井上先生
(笑)。患者さんに、そうやって笑って帰っていただくのって、すごく大事だなと思うんですよ。
あとは、自分の強みを良く知ってそれを前面に打ち出していると、自然と自分に合った人たちが周りに集まってくる。
それは、とても幸せですね。
ウラベ
ウラベ
井上先生
井上先生
ええ。私はこれからも、「女性に関するお悩み相談所」として、この鍼灸院をやっていきたいと思っています。

■ はり灸養生院いのうえ https://harikyu-yojo.com

【記事担当】
取材・文・撮影=ウラベ
取材・撮影=ツルタ
編集=さまんさ

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