これからの「鍼灸」の話をしよう(後編)/鍼灸師:伊藤 和憲

第四章 これからの「鍼灸」の話をしよう

伊藤先生の今のチャレンジにあえて名前をつけるならどんなものになりますか?
スキカラ
スキカラ
伊藤先生
伊藤先生
これはちょっと生意気すぎるかもしれないけど…「国民の健康のものさしを変える」ですかね。
「国民の健康のものさしを変える」というのは?
スキカラ
スキカラ
伊藤先生
伊藤先生
たとえば今の医療は、検査をして「血糖値が高かった」「血圧が高かった」といった異常に病気の名前をつけて、治療を始めるじゃないですか。
健康から病気までの軸、つまり「ものさし」の、病気の部分に注目して、それが治るか治らないかに価値を置いている。
西洋医学では、健康か、病気かの2極しかないですね。
スキカラ
スキカラ
伊藤先生
伊藤先生
でも、健康と病気の間に、未病という状態があるとしたら。
本来の価値は、病気が治るか治らないかではない、もっと手前にあるとしたら。
養生をして健康を維持したり、未病でとどめて健康に戻るようにしたりすることに価値を感じてほしいんですよ。
だから「健康のものさしを変えるための事業」が、僕がやっていることのすべてで。
そのために田舎を活用したり、鍼灸を活用したりしてね。
「健康のものさし」のなかで、注目するべき部分を養生にシフトさせていく事業ですね。
スキカラ
スキカラ

伊藤先生
伊藤先生
ものさしさえ動けば、たぶん皆さんが食いっぱぐれるということはないと思う。
今の人たちの価値感に合っているから、西洋医学を中心とした医療が受け入れられているだけで。
だけど、さっきも話したように、この西洋医学的な治す・治さないを重要視した価値感は、ここ50年位のものなので。
病気を治す価値よりも、病気にならない価値を重要視するようになるというお話でしたね。
スキカラ
スキカラ
伊藤先生
伊藤先生
昔は医療なんかなかったんだから。病気になったら死んじゃうんだからさ。
だから病気にならないことに価値があったわけじゃないですか。
何千年という歴史の中で考えれば、どう考えても今は間違った価値感だと僕は思うので。
だから、ものさしを変えるということが重要。
そうすると、鍼灸師サイドも新たな「ものさし」が定着するように努力をしていかないといけないですね。
スキカラ
スキカラ
伊藤先生
伊藤先生
そうなりますね。
しかし、どうしても医療や鍼灸は「患者さんを治す」という方向に目先が向かいやすいと思うのですが。
スキカラ
スキカラ
伊藤先生
伊藤先生
たしかに今の医療技術はすごいよ。
以前であれば対応できなかった病気も治療できるようになっている。
でも病気になってから治すという「ものさし」では限界がある。
先進医療には莫大なお金がかかるのよ。
難病を治すために高度な医療を追い求めた結果、医療費が高額になってしまったと。
スキカラ
スキカラ
伊藤先生
伊藤先生
日本は高齢社会なので医療費問題を考えると、どうしても高齢者の医療費が…というイメージを持たれることがあるんだけど。
たしかに高齢化と医療費増加は同じ文脈で語られることが多いです。
スキカラ
スキカラ
伊藤先生
伊藤先生
でも実際は、医療費の中でも先進医療が占める割合の方が多くなっていてね。
そうすると、医療技術が進歩して難しい病気を治す方法はわかっているのに、お金がなくて治療できないという矛盾が出てくるから。
それじゃあ本末転倒ですね。
スキカラ
スキカラ
伊藤先生
伊藤先生
病気を治そうとする従来の医療がなくなるということはないけど、そこに特化したら、たぶん国は成り立たなくなる。
だから医療の中で重要視される価値は、また元に戻ると僕は思ってる。
何千年の歴史の中でそうなっていたわけだから。
大きいスケールで考えるとすごく説得力があります。
スキカラ
スキカラ
伊藤先生
伊藤先生
たとえば東洋医学は、明治時代から一時廃れたかもしれない。
けれど、復興運動で復活したんだよね。
それと同じように、また東洋医学の価値観が戻ってくるのが自然の摂理じゃないかと思っていて。
だから「健康のものさしはこれから変わっていくよ」ということをすべての人に教えてあげたいよね。
長くなっちゃったけど、今の考えとしてはそんなところかな。
ありがとうございます。
新しく時代がシフトする前のタイミングで、先生のお話が聞けて嬉しかったです。
スキカラ
スキカラ
伊藤先生
伊藤先生
僕も楽しかったです。こういう未来の話ができて。
未来の話って良いですよね。
一方的な「お前らがんばれ」とかじゃなくて、わたしたちも参加できる話ですから。
でも、欲を言えば学生時代にこの話を聞きたかったです(笑)。
スキカラ
スキカラ
伊藤先生
伊藤先生
鋤柄先生が知ってる頃の僕と、今の僕とはだいぶ違うはずだからね。
当時はまだイノベーションが始まりかけた頃で、まだエビデンスにもすごくこだわっていて…、まあエビデンスおじさんですよね(笑)。
じゃあ今は、イノベーションおじさんですね(笑)。
自分も、未来の話をもっとしたい気持ちになりました。
スキカラ
スキカラ
伊藤先生
伊藤先生
未来の話のいいところは、答えがないところなのよ。
答えがあると、違うとか無理とかというお話になるけど、まだ答えがないからさ。
誰も傷つかないし、一番いいでしょう(笑)。
先生、そろそろ良い時間ですし、ご飯でも食べながら話の続きをしませんか?
スキカラ
スキカラ
伊藤先生
伊藤先生
いいね(笑)。いきましょう。

【記事担当】
取材・文=スキカラ
取材・撮影・編集=さまんさ

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