ドミニカから、念願のメキシコへ
そこから現在のように鍼灸院をオープンするまでのストーリーを聞きたいです。
ツルタ
勝野先生最初は往診でまわっていました。まずは1週間の予定を1件ずつでもいいから埋めていくっていう目標を立てて、その後1ヵ月丸々全部予約を埋めていくことを目指しました。それが達成できたら1日のボリュームをマックスにしていくことを目標にして続けていたら、忙しくて死ぬかと思うような状態になって…。休みはちゃんと取っておかないといけないなと思いますね。
その時はどういう人を相手に施術をしていたんですか。

ツルタ

勝野先生
メキシコで事業をされていたり、駐在として来られていたりする日本人の方、あとは現地のメキシコの方たちですね。紹介でつなげてもらって、最初からメキシコ人への施術を結構させてもらえていました。でも、その当時30歳くらいだったんですけど、こちらだとアジア人は−10歳ぐらいに見られてしまうんですよ。なので、すごく不安がられました。「お前みたいな若造が大丈夫か」って感じで。
鍼灸師としてきちんと経験はあるのかと…。

ツルタ

勝野先生
でも自分的にはそれがバネになって頑張れた部分もあります。施術が終わって体の変化を実感してもらうと「ほらね」っていう感じで。
メキシコ人からは、どんな施術を求められることが多いんですか。

ツルタ

勝野先生
胃が悪いとか、眠れないとか、運動器以外の症状でお願いされるパターンが結構多いです。なので、メキシコの方たちは鍼灸師に対する期待値がすごく高いなっていうのを当時から感じていました。
確かに、胃の不調とかを鍼灸で治療しようと思うって、鍼灸が医療として求められているってことですね。ところで、日本人のやる鍼灸っていうのは、現地でどのような評判なのでしょうか。

ツルタ

勝野先生
新規の方が検索されているフレーズを見ると「鍼灸」ではなくて「日本鍼灸」で検索をかけられているんですね。例えば日本に旅行に行って、日本で鍼灸を受けたことがあるから日本式の鍼灸を探してきましたっていう方も中にはいらっしゃいます。でも大半は日本に行ったことがない方なので、漠然と「日本だから良い」と思われているのかなと…。
日本式の鍼灸があるらしい、日本人のやる鍼灸は質が高いらしいってイメージが、なんとなくメキシコ人にあると…。

ツルタ

勝野先生
それだけ先人たちが積み上げてきてくれた日本のイメージが、むちゃくちゃ良いんだと思います。日本製ってブランド力がありますから。
それは繊細といわれる日本鍼灸の技術が喜ばれるってことでしょうか。

ツルタ

勝野先生
逆に不思議がられることもあって「魔法だ」って言われるんですよ。「あんまり感じなかったけど、なんで変わってるの?」みたいな。「すごく軽くなってるけど何したの?」みたいな。たまに起き上がって「ホントに鍼やってるの?」みたいな感じで疑われこともあるくらいです。
4年かけて日本の鍼灸免許の認定を実現
だんだん予約が埋まるようになって、実際の院を構えようと思った流れですか。
ツルタ
勝野先生 1人で対応できなくなっていったので、店舗を借りてやり始めようと考えたのが1つの理由ですね。もう1つは人を雇おうと考えたからです。場所も見つけて、ちょうどよく来てくれる人も見つかったので開業して鍼灸院をオープンすることになりました。
テナント選びはどう進めていったんですか。
ツルタ

勝野先生
メキシコの場合、インターネットで検索するよりも歩いて探すんです。「貸しますよ」っていう看板が出ていて電話番号が書いてあるから、それを全部メモって「まだ空いてるか」って確認をするのを地道に繰り返すっていう。
外国人には貸したくないからとか、その他にも、なにか日本では考えられない理由で断られることもあったりして…。

ツルタ

勝野先生
そうなんです。ちょっと怖かったのは、1つ目に借りたところが、お医者さんのクリニックが集合しているような建物だったんですけど、「月々の賃料がこれくらいだけど手術は何回できるんだ?」って言われたんですよ。「手術はしないです」って答えるじゃないですか。「手術しないと貸せない」って言われて。おそらく一部のドクターは、家賃を払うために手術をすることがあるんだなと思いました。患者さんとかに話を聞いていると、それは手術いるのかなって思う例が実際にいっぱいあるので。
日本人の駐在員からしたら、そういうクリニックもあるメキシコの医療は不安ですよね。そこに日本人の鍼灸師がいたら頼りにしたくなるかも。そもそも、メキシコではどういう免許で鍼灸院をやっているんですか。

ツルタ

勝野先生
日本の鍼灸免許でも鍼灸治療ができるように、政府の機関に認めてもらう手続きが必要なんです。今だったら半年ぐらいでできます。僕の時は4年かかりました。ちょっと諦めかけていたんですけど、結局認定されました。
それを勝野先生が働きかけをしたんですよね。メキシコでの日本人鍼灸師の道を切り開いた感じがあります。折衝は大変だったのではありませんか。

ツルタ

勝野先生
より簡単な方法はお金なんですよ。メキシコはまだそういう部分があるので。役所の入り口にも「賄賂みたいなものはダメですよ」ってポスターは貼ってるんですけどね。
これも映画の世界ってイメージだけど、実際もあるんですね。

ツルタ

勝野先生
ただ最近は、賄賂は絶対に受け取らないっていう厳しい役所の人も多くなってきています。メキシコ人は「雰囲気を見て決めろ」っていうんですよ。今回の免許の手続きに関しては、そういうのは一切無しでやらないと意味がないと思っていました。自分だけができても意味がないし、誰でもできる状況にしたいと考えた時に、裏金とかはなしで真っ当にやることを貫きました。だから4年もかかったのかもしれないです。
勝野先生のところで働かれているスタッフの皆さんは、そうやって日本の免許を活かしてメキシコで活躍しているってことですね。

ツルタ

勝野先生
そうですね。中にはこれから手続きするスタッフもいますけど、順次それは揃えています。
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