鍼灸師として多職種と連携するということ/穴田 夏希・建部 陽嗣

2019年、夏のあるイベントで、病院で勤務する先生方が対談をされていました。
ひとりは鍼灸師、柔整師、理学療法士の資格を持つ穴田 夏希(あなだ なつき)先生。
そして、もうひとりは鍼灸師という立場で、京都府立医科大学にて鍼外来を持つ建部 陽嗣(たてべ はるつぐ)先生。

病院で多職種の医療者と連携し、医療を支える先生方のお話はとても興味深く、わたしにとって衝撃でした。
イベントのあと、おふたりの対談をぜひ記事にしたいとお願いし、今回の掲載に至りました。

いつものハリトヒト。のインタビューとは違い、話題を絞っております。
医療に携わる者として、お話を聞かせていただいた幸運を皆さまにもお伝えできれば嬉しいです。

穴田 夏希(あなだ なつき)先生

鍼灸師・理学療法士(3学会合同呼吸療法認定士)・柔道整復師
2006年 明治鍼灸大学卒業。その後鍼灸業務に携わりながら柔道整復師資格を取得し、訪問鍼灸、整骨院、デイサービスなどに勤務しながら理学療法士資格も取得。
2015年 大阪市立大学医学部付属病院リハビリテーション部、同年9月より神戸大山病院リハビリテーション課に入職。
2017年 神戸大学にて行われた文部科学省委託事業「超高齢社会における内部障害を有した要介護者に対するコメディカル専門人材養成プログラム」修了。
病院、在宅、施設と多様なフィールドでリハビリテーション業務に従事する傍ら、多職種連携をテーマに企業での講師活動もおこなっている。
現在、社会医療法人社団 正峰会 神戸大山病院 リハビリテーション課勤務。
株式会社ケアプラス テクニカルアドバイザー

建部 陽嗣(たてべ はるつぐ)先生

静岡県浜松市生まれ
明治鍼灸大学(現:明治国際医療大学) 卒、明治鍼灸大学大学院 博士前期課程 修了(鍼灸学修士)京都府立医科大学大学院 医学研究科 修了(医学博士)
2012年 京都府立医科大学 医学部医学科 神経内科学 特任助教
2014年 京都府立医科大学 医学部医学科 在宅チーム医療推進学 助教(寄付講座)
2018年 京都府立医科大学大学院 医学研究科 医療フロンティア展開学 助教
2011年より、「鍼灸ワールドコラム(月刊 医道の日本)」連載開始。2014年より、京都府立医科大学附属病院 脳神経センター内にて神経難病患者を対象とした鍼外来を担当。

先生方の対談、とても興味深かったです。
さまんさ
さまんさ
穴田先生
穴田先生
「病鍼連携って?(笑)」ね。
そうです。「病院の医療」と「鍼灸の医療」の連携についてのお話でした。
「病鍼連携」という言葉を使って、アンチテーゼというか…。
さまんさ
さまんさ
建部先生
建部先生
怒ってたね(笑)。
そうそう、大変お怒りで(笑)。
さまんさ
さまんさ
穴田先生
穴田先生
あはは。
でも、根っこのテーマは「多職種連携」でしたよね。
すごく本音でお話されているなぁと感じて。言葉にすごく重みがあって、心に響いて。
それをどうしても再現したくて、今回はおふたりに対談をお願いしました。
さまんさ
さまんさ
穴田先生
穴田先生
まぁ、ライブだからできた話もあるんだけど(笑)。
ここで言える範囲で大丈夫なので、ぜひ改めてお話を伺いたいと思っております。
さまんさ
さまんさ
建部先生
建部先生
了解いたしました(笑)。

病院勤務を目指すんですけど、鍼灸という資格では、ほとんど働き口はないわけです

穴田先生は鍼灸師、柔整師、理学療法士の3つの資格をお持ちなんですよね。
なぜそのように至ったんでしょうか?
さまんさ
さまんさ
建部先生
建部先生
どの学校にもカワイイ女の子がいたんだよね(笑)。
穴田先生
穴田先生
違う違う(笑)。
(笑)。
さまんさ
さまんさ
穴田先生
穴田先生
まぁ、あながちそうじゃないかもしれないんですけどね。
というのも、ぼくはたぶん浮気性なんですよ(笑)。
建部先生
建部先生
ほら~(笑)。
穴田先生
穴田先生
(笑)。えっとですね、ぼくがまずはじめに鍼灸師の免許を取ったのは、正直なんとなくです。
足を怪我して、リハビリを受けて、医療に興味が出たと。
ほななんではじめにリハビリいかへんかってんって話なんですけど(笑)。
(笑)。
さまんさ
さまんさ
穴田先生
穴田先生
まぁ、開業できるし、お金の面でええんちゃうかな?と思ったんですよね。
高校生のときに取り寄せた明治鍼灸大学(現 明治国際医療大学)のパンフレットにね、学生がMRIの画像を見ている写真があったんですよ。医者とほとんど同じやん、と。
建部先生
建部先生
騙されてるね(笑)。まぁ、その頃って他の医療系の大学ってなかったもんね。
穴田先生
穴田先生
そうなんですよ。理学療法士も看護学校も専門学校ばっかりで。
明治鍼灸が「鍼灸学校の東大」と言われていた時代でね。同級生には「明治大学と違うん?」って言われてましたけど(笑)。
で、とりあえず明治鍼灸を卒業する前に、就職先を探したら鍼灸整骨院ばっかりやったんでね。
ここでもなんとなく「鍼灸師の資格を取ったら柔整師の資格もワンセットで取らなあかんのかな」と思って森ノ宮医療学園専門学校に行くことにしました。
柔整師の資格を取ったあとは、鍼灸整骨院で働きながら、3年ほど森ノ宮医療学園専門学校の柔整科で助手をしていました。
建部先生
建部先生
学校案内にずっと載ってたね。
穴田先生
穴田先生
でも、当時の学生から進路相談を受けたときに、自分と同じようなことを思ってるなぁって感じたんですよね。
柔整の話になっちゃいますけど…いいですか?
大丈夫です。
さまんさ
さまんさ
穴田先生
穴田先生
柔整って、外傷のことばかり学ぶんですよね。
でも、卒業して一般的な整骨院に就職すると、外傷を診る機会は限られてるんですよ。
鍼灸は卒業してから鍼灸するでしょ?
そうですね。鍼灸師として活動している場合は。
さまんさ
さまんさ
穴田先生
穴田先生
柔整はね、授業で学んだことと実際の現場がすごく乖離していて…。
柔整の教員の先生方はすごく尊敬できる方ばかりで、勉強熱心。
でも、現場になると…ちょっと理想とはかけ離れちゃうんですよね。
うんうん。
さまんさ
さまんさ
穴田先生
穴田先生
でもぼくは医療には携わっていたくて。
それで病院勤務を目指すんですけど、鍼灸という資格では、ほとんど働き口はないわけです。
かといって、柔道整復師として勤務できる病院も少ない。
興味を持てる仕事ができて、病院で働ける資格ってことで…。
建部先生
建部先生
医者を目指すんだね。
穴田先生
穴田先生
そうそう、医学部に…って違いますやん(笑)。
ココは理学療法士になるところですやん(笑)。
資格が3つも揃ったんやし、医師免許もらわれへんかなっていつも思いますけど(笑)。
建部先生
建部先生
(笑)。
(笑)。
さまんさ
さまんさ
穴田先生
穴田先生
まぁそういう経緯で理学療法士になるために、また平成リハビリテーション専門学校に入って資格を取りました。
卒業後は公立の病院で、理学療法士としての就職が決まっていたんですが、そのあと鍼灸院も併設したいという社会医療法人に再就職しました。
そこでは鍼灸師、理学療法士として勤務して、鍼灸院の立ち上げに関わる予定だったんです。
理学療法士としてではなく、鍼灸師として!
さまんさ
さまんさ
穴田先生
穴田先生
でも、法律上ややこしくて頓挫しちゃって…。
けっきょくそのまま理学療法士として雇われることになりました。
あら…。でも医療に携わるという夢は叶ったと。
さまんさ
さまんさ
穴田先生
穴田先生
そうですね。理学療法士として訪問のリハビリや老健(介護老人保健施設)など、地域の医療や介護などに関わるようになりました。
ただ、働いていると「これって鍼灸でもできたことかもなぁ」というのは漠然と思うようになっていて。
そういうこともあって、今は病院に勤務しながら訪問マッサージや訪問鍼灸のサービスを運営をする会社で、理学療法のセミナーをさせていただいています。
つながっていくんですね。
さまんさ
さまんさ
穴田先生
穴田先生
結果的にぼくは、あん摩マッサージ指圧師や鍼灸師、柔整師などの資格を持っている方々に対しては、ご自身がお持ちの資格のまま、ちょっと考え方や捉え方を変えてみれば、もっと活躍できる場所があるんじゃないかな、と思うようになっています。
3つの資格を取られた経歴の穴田先生だからこそ…。
さまんさ
さまんさ
穴田先生
穴田先生
そうですね。こういうぼくだからこそ、その考えに行き着いたんだと思います。
最近は自分の働く病院内でも、スタッフに鍼灸への理解を深めてもらいたくて、看護師さんや理学療法士さんに鍼をしたり、薬剤師さんに鍼灸の良さを伝えたりしています。
今の職場で鍼灸治療をしたくてですか?
さまんさ
さまんさ
穴田先生
穴田先生
そうです。会社としては、機会があるといえばあるんですけど、今自分がいる職場では実現していないので。
そういう意味では、理想の環境に向かっている途中ですね。

NEXT:病院では、人として、鍼灸師として、信用されていなければいけないんですよ

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