鍼灸は生活に根づくもの。確かな技術でもっと外へ/呉竹学園理事長:坂本 歩

いち早く臨床実習に取り組んだワケ

呉竹の先生方には、教員をやりながらも大学院で学んでいる方が多い印象があります。そうでなくても、研究熱心な方が多いなと。
タキザワ
タキザワ

坂本先生
坂本先生
父は基礎医学者だったので、動物実験で鍼灸のメカニズムを実証することをおこなっていました。父が呉竹学園でもそうした種を蒔いたことで、教員たちが研究者マインドを培い、それを継承していってくれていると感じます。
学生も刺激を受けやすい環境ですよね。
タキザワ
タキザワ
坂本先生
坂本先生
次のステップとしては「動物実験でうまくいったものを、どう人に応用していくか」なのですが、その段階に移る頃には、明治鍼灸大学(現:明治国際医療大学)や関西医療大学ができました。この2つの大学が研究をずいぶんと進めてくれました。
呉竹が専門学校として深めつつあった「鍼灸はなぜ効くのか」という研究を、大学が担うようになったんですね。
タキザワ
タキザワ
坂本先生
坂本先生
私がこの業界に携わったときは「鍼灸した」「治った」「だから効いた」のいわゆる「3た」報告が多くて、研究のレベルが非常に低かったことをよく覚えています。そこから鍼灸大学ができたことで、学会発表の質が格段に上がって驚きましたね。
鍼灸大学ができたことで、呉竹学園は専門学校として、どんな強みを打ち出していこうと考えたのですか。
タキザワ
タキザワ
坂本先生
坂本先生
やはり臨床の指導ですね。専門学校として大事なのは十分な臨床能力を身に着け活躍できるよう学生の技術力を向上させていく。そこに尽きるのではないでしょうか。
現場に出て困らない臨床の力をつけていく。
タキザワ
タキザワ
坂本先生
坂本先生
呉竹学園がいち早く臨床実習に取り組んだのも、技術力の向上に重きをおいたからです。父の指導の下で学んだ古屋英治先生が、医学部の臨床実習をベースにしながら、ベッドサイドでの研修の形を作ってくれました。
ほかの専門学校に先駆けて臨床実習に取り組まれたのですね。
タキザワ
タキザワ
坂本先生
坂本先生
2018(平成30)年度からカリキュラムが変更され、鍼灸師、あん摩マッサージ指圧師の施術所で臨床実習ができるようになりました。
私の院でも昨年、臨床実習として1年生を受けいれました。学生さんに臨床をみてもらうことで、自分が何を目指して施術しているのか、改めて言語化された気がします。
タキザワ
タキザワ
坂本先生
坂本先生
教えることで学ぶこともありますよね。そういう意味では、必ずしも教員志望でなくても、教員養成科に進んでもいいと思います。教員養成科を最初に作ったのも、呉竹学園です。
教員養成科では、教員を目指す学生を育てるのはもちろんですが、卒後の技術力強化もねらいとしてあるんですね。
タキザワ
タキザワ
坂本先生
坂本先生
3年間で国家資格をとっても、現場で対応する臨床技術としては不十分じゃないですか。それは鍼灸に限ったことではなく、医師もそうなんです。鍼灸の場合は、医師のような研修制度がない分、かつては在学中から卒後しばらくするまで師匠の下で何年か学び、開業に至るというプロセスがありましたよね。
そうした環境は今ではなくなりましたね…。「ハリトヒト。」を通じて学生さんと接する機会も多いんですけど「卒後どこで腕を磨いたらいいのか」という不安を抱えている人が多い印象です。
タキザワ
タキザワ
坂本先生
坂本先生
現在は、大手チェーンに就職したり治療院を渡り歩いても、特に鍼灸については臨床経験を積めるとも限らず、十分な技術を身につけられないまま、時間だけが過ぎていく卒業生が増えてしまっています。また、いったん社会に出て、鍼灸学校の入学時点ですでに年齢を重ねている場合、そういった就職すらもできないケースが少なくありません。
セカンドキャリアとして鍼灸学校を卒業したけれど「次のステップがわからない」という人は、特に多そうです。
タキザワ
タキザワ
坂本先生
坂本先生
卒後に「まだ勉強したい」「技術を学びたい」という学生が、教員養成科に進むというのも、とても意味があることかと思います。しかし、なかには、費用や時間的に、教員養成科に進むことが難しい人もいます。かつては学校の役割と業団体の役割がうまく合致して教育を施していました。現在はそのような環境がないので、今後、卒後研修につなげていくことが大事です。
卒後臨床研修や卒業生向けのセミナーを毎年開催してくれているのは、卒後20年経った今、改めてありがたみを感じます。学会に行けば必ず呉竹の先生と会えて、ポスター発表も積極的におこなっているのは、誇りに感じます。
タキザワ
タキザワ
坂本先生
坂本先生
当たり前のようにみんなやってくれているのを見ると、私も心強いです。
ある卒業生に「呉竹は鍼灸業界の東大だ」と言っている人がいて。本当に自分の学んできたことに誇りを持っているのが伝わってきました。
タキザワ
タキザワ
坂本先生
坂本先生
卒業生が呉竹卒のプライドを持ってくれているなら、大変うれしいです。臨床の現場に出たときに「ここで勉強したんだ」っていうのを、頭の片隅にでも置いておいてほしいです。

「災害ボランティア」での連携をほかの分野でも

今の鍼灸業界をみて、昔と比べて良くなっている点、まだまだ課題が残っている点は、どのあたりでしょうか。
タキザワ
タキザワ

坂本先生
坂本先生
「良くなった」というか「悪いものが少なくなった」という印象があります。かつてはオカルト的な考え方をする人たちがたくさんいましたので…。
ただ、依然として医者と壁を作りたがる人が多いのは、課題ではないでしょうか。
医者と壁を作る…。
タキザワ
タキザワ
坂本先生
坂本先生
「作りたがる」というか「作ってしまう」というのが正確かな。医者に何か言われるのが嫌なんでしょう。「医者が鍼灸を理解しない」という声はよく聞きますが、「医者に理解させるように努力をできているか」といえば、まだまだこれからかなと感じます。
私が呉竹学園を選んだのも、卒業生である父から「医師と対話ができる鍼灸師を作るのが呉竹の方針だ」と聞いたのが決め手でした。
タキザワ
タキザワ
坂本先生
坂本先生
医師との関係づくりは、常に意識してほしいと思っています。医者は興味を持ちさえすれば「何それ?」って前のめりになりますからね。鍼灸側から働きかけをしない限り鍼灸に理解のある医師たちから広がっていくことはありません。
医療連携も進んではきていますが、鍼灸がどんな場面で効果を発揮しうるのかもっと他職種に知ってもらいたいです。
タキザワ
タキザワ
坂本先生
坂本先生
災害ボランティアでは、超党派的に業界団体が結びついて、すごくうまくいっていると思うんですよ。鍼灸って実はいろんな生活の場面に根差したものなので、いろんな場面でもっと入るべきなのかなと。
鍼灸業界において超党派の取り組みって貴重ですね。共通の目的のためにさまざまな鍼灸師が立場を超えて協力する。そうして活躍の場を広げていく、いろんなところとかかわりを積極的に増やしていく、自分たちで増やしていくってことですね。
タキザワ
タキザワ
坂本先生
坂本先生
患者さんが院に来るのを待っているだけではなくて「こういう場面では鍼灸あってもいいよね」というところにどんどん出ていき、活動していくことが重要です。
そのためには、確かな技術を持つことが大前提です。そういう意味でも業界全体の教育レベルをこれからも上げていきたいですね。
【記事担当】
取材 = ゆうすけタキザワツルタ
撮影・編集 = ツルタ
文    = くちやまだ

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