「気」の合う人がやって来る /鍼灸師:手塚 幸忠

テレビで話題に

手塚先生
手塚先生
そんなときに日本テレビ「ザ! 鉄腕! DASH!!」の取材が舞い込んできたんです。
「リーダーを若返らせよう計画」という企画でした。「クルミ灸」という目の上のお灸をホームページに載せていたのが、番組スタッフのアンテナに引っかかったみたいで。
反響すごかったんじゃないですか。
ゆうすけ
ゆうすけ
手塚先生
手塚先生
放映後から電話が鳴り止まらなかったですね。売り上げがガッと上がりました。
事前の打ち合わせでは、お笑いのリアクションを取りたいらしく、番組スタッフから「熱いお灸をしてほしい」とかムチャを言われました。「それはできません」とムッとしたりもしましたが、結果的には取り上げてもらってよかったですね。
ターニングポイントとなりましたね。
ゆうすけ
ゆうすけ
手塚先生
手塚先生
テレビをきっかけに治療に来る人はあまり続かないので、ある程度の患者数で落ち着きはしましたが、それでも死なない程度の売り上げにはなりました。そこから院を大きくすることになって、治療のスタイルもいろいろ模索することになります。
なるほど。広くなると、家賃が上がりますよね。
ゆうすけ
ゆうすけ
手塚先生
手塚先生
銀座ですから、ただでさえ高い家賃がさらに上がって大変でしたよ。私は「この家賃は払えないでしょう」って言ったんですけど、仲間の2人が乗り気で、もうやることになっちゃって…。患者さんをいかにリピートさせるかを考えつつ、置鍼で同時に何人か並べる治療もやってみました。
治療スタイルを変えてみていかがでした。
ゆうすけ
ゆうすけ
手塚先生
手塚先生
それまでずっと「1対1」でやっていたので、帰る時の患者さんの満足度が確実に下がっているのが分かりました。しょうがないから値段を上げて1対1に戻して、満足度を高めてリピートしてもらえるようさまざまな試行錯誤をしました。軌道に乗るまでに、1年ぐらいかかりましたかね。
患者さんに満足してもらえるスタイルを作り上げていったわけですね。
ゆうすけ
ゆうすけ
手塚先生
手塚先生
ただ、家賃が高すぎて、どれだけがんばって治療で稼いでも、自分の収入は全く増えなくて…。
そんなときに子どもが生まれたものですから、「このままでは生きていけない」と思い、ほかの2人とも相談して、表参道で独立開業しました。
表参道も、かなり家賃は高いような…。
ゆうすけ
ゆうすけ
手塚先生
手塚先生
そうなんですよ。私は無知なので、表参道の恐ろしさを知らずに来ちゃったんです。銀座の価格を先に知っていたので、安く見えてしまって…。
とはいえ、何か勝算があったんですよね。
ゆうすけ
ゆうすけ
手塚先生
手塚先生
勝算ではないですが、銀座の患者さんの大半は新しい治療院に来てくれるという自信はあったので、なんとかなるだろうと思っていました。
コロナ禍もあったり、そのほかにもいろいろあって、すごく大変だったのですが、なんとか今5年目に入ったところで、まだ生きています。
まさに開業奮闘記ですね。でもたしかな技術に裏打ちされているからこそ、できる挑戦かなって思います。
ゆうすけ
ゆうすけ

「気」の合う人

治療の話をされているときの手塚先生は、なんだかとても楽しそうで「本当に治療が好きなんだな」というのが伝わってきます。
タキザワ
タキザワ
手塚先生
手塚先生
治療をしていると、相手が満足したときも、満足していないときも、すぐわかるじゃないですか。
満足する患者さんが増えてくると、お互いに楽しい時間になりますよね。
「お互い」に楽しいというのは…。
タキザワ
タキザワ
手塚先生
手塚先生
ある程度、自分の核ができてくると、合う患者さんしか来なくなってくるんです。
初めのうちは苦手なタイプの患者さんもたくさん来ましたが、ある時からそういう患者さんが減ってきて、今は自分に合わない人はまず来ないので、そこがすごく不思議ですね。
手塚先生のところには、どんな「合う」患者さんが来られますか。
タキザワ
タキザワ
手塚先生
手塚先生
私は「虚した人専門」なんですよ。
だから、スポーツマンとか来られると困っちゃう。主訴をいっぱい持っていて「もうダメなんです」っていう人を補うのが大好きなんです。
いわゆる「気」の合う人が、勝手に来るようになるんです。
「気」の合う人。
タキザワ
タキザワ
手塚先生
手塚先生
だから逆に、実している患者さんに合う鍼灸師もいるんですよね。
私のところは、まさに実した患者さんばかりなので、しっかり刺します。そういう治療が合う患者さんが、受けに来てくれているということですよね。だから「お互い」に楽しいです。
タキザワ
タキザワ
それって「自分の治療院には自分に合う人だけ来ればいい」と、割り切っているということでしょうか。
ツルタ
ツルタ
手塚先生
手塚先生
うーん、割り切っているんじゃなくて、患者さんが私を選んでくれているんだと思います。自分が発信する情報を見て、それをイイなと思ってくれた人が選んで来てくれるのはもちろんですが、それだけじゃなく、何もしていなくても、自然と合う人がやって来るんです。患者さんが私の「気」か何かを感じているんでしょうね。
もし合わない人が来たとしても、結局のところ喜んでもらえないので、必然的に来なくなるし、合う人は身体が変化するから喜んでくれますよね。
合う人には喜んでもらえて、合わない人には喜んでもらえない。
ツルタ
ツルタ
手塚先生
手塚先生
もちろん経験を積むことで、合う人の幅は広がります。施術の時間が終わって「今日も良かった。また来たいな」という空気が患者さんから出ているときに、私は「楽しいなあ。嬉しいなあ」としみじみ感じます。患者さんからも「楽しかったです!」とさえ言われることもあります。
思えば、教員として教壇に立つときもそうですね。授業の時間が終わった時の学生さんの反応がよいと、やっぱり嬉しくなりますから。
治療の手ごたえとも関係するのでしょうか。
ゆうすけ
ゆうすけ
手塚先生
手塚先生
そうですね。手ごたえがある時って、患者さんがいい気分になっているんです。いわゆる気の状態が良くなってる。鍼と灸だけで、こんなに人の気分を良くできるなんて素晴らしい仕事だなって思います。患者さんにしろ、生徒さんにしろ、喜ばれると楽しいから、続けてられるのかなと思いますね。
相手が喜ぶから、自分も楽しい。
ゆうすけ
ゆうすけ
手塚先生
手塚先生
そう。だから相手の反応を見て、日々工夫することが大事だと思っています。
開業していると大変なこともありますが、お互い楽しくて嬉しくなれる。
臨床家って本当にステキな仕事だなと、経験を積めば積むほど思いますね。

表参道鍼灸マッサージ治療室自然なからだ

【記事担当】
取材 = ゆうすけタキザワツルタ
文 = ツルタ
撮影 = ツルタ
編集 = くちやまだ

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