「伝わるように伝える」のが我々の責務/鍼灸師:澤口 博

はじめまして、シンタローです。
東京都豊島区大塚で開業鍼灸師をしながら、公益社団法人東京都鍼灸師会の会報誌制作やイベント企画をおこなっています。

今回、ぼくがお話を伺うのは、澤口博(さわぐち ひろし)先生。
東京都目黒区と茨城県神栖市で開業をされています。
茶目っ気たっぷりで、柔らかな雰囲気をお持ちの方です。


澤口 博先生

明治大学経営学部卒、東洋鍼灸専門学校出身。
独立行政法人労働者健康安全機構「鹿島労災病院メンタルヘルス和漢診療センター」を経て、「ウィル鍼灸治療院」を東京都目黒区に開院。
2009年8月、赤十字ボランティアとしてネパールにてヘルスキャンプ(巡回無料診療)に参加。
2009年12月、富山大学和漢診療学シンポジウムにて「うつ状態に対する連続輸刺治療効果」を発表、殊勲賞受賞。
2011年12月、同シンポジウムにて「病院と鍼灸院の患者層の違いと考察」発表、敢闘賞受賞。
日本伝統鍼灸学会会員、2012年より2018年まで同学会編集部員。

「何でもいいから勉強したい」がスタートでした。

同世代の鍼灸師や鍼灸学生と話をしていると「どんな鍼灸師になりたいのか、わからないんです」「将来どうしようか迷っています」という言葉を聞くことがあります。
シンタロー
シンタロー
澤口先生
澤口先生
私が若い方々と話していても同じことを耳にします。 「なりたい鍼灸師像」がはっきりしていないのかもしれませんね。
おっしゃる通りです。
なので、先輩鍼灸師の辿ってきた道のりを知り、「なりたい鍼灸師像」を見つけるヒントにさせていただけたらいいなと考えています。
シンタロー
シンタロー
澤口先生
澤口先生
なんでも話しますよ(笑)
ありがとうございます(笑) 。澤口先生はどのような経緯で鍼灸師を目指されたのでしょうか?
シンタロー
シンタロー
澤口先生
澤口先生
大学を卒業後、サラリーマンとして11年間勤めて、退職したあとに東洋鍼灸専門学校に入学しました。
一般企業を経験されてからの進学だったんですね。どんな企業に勤めていらっしゃったのでしょうか?
シンタロー
シンタロー
澤口先生
澤口先生
「劇団四季」に入社して、営業や経営企画の仕事をやっていました。
「劇団四季」と聞くと、つい舞台役者さんの仕事を想像してしまいますが、そういった業務もあるんですね。
シンタロー
シンタロー
澤口先生
澤口先生
会社なので、営業や広報の求人が出ているんですよ。どんな業務も、舞台を支える重要な仕事でした。
11年間勤めたとき、「この仕事はやりきったな」と感じたので退職しました。
そして、「さて、お金と時間はあるけど、次は何をしようかな」と考え、勉強がしたいなと。
劇団では役者さんと触れ合う機会も多いでしょうし、身体のケアに興味を持ちそうなイメージが勝手にあります。
前職の影響で鍼灸を学びたいと思ったのでしょうか?
シンタロー
シンタロー
澤口先生
澤口先生
そうではないんです。まずは「何でもいいから勉強したい」がスタートでした。
どんなことが学べるだろうと考えた結果、現代医学に興味が湧き、なかでも解剖生理学を学ぼうと。
「でも、今から医学部に行くにはハードルが高いしなぁ」と思っていた時に友人から「解剖生理を学びたいなら、鍼灸学校という道もあるよ」と勧められたのがきっかけです。
そして東洋鍼灸専門学校に入学されたんですね。それまでに鍼灸を受けたことはありましたか?
シンタロー
シンタロー
澤口先生
澤口先生
一度も鍼灸を受けたことはありませんでした(笑)。
ただ「解剖生理を学びたい」という理由だけで鍼灸学校に進学しました。
なんてピンポイントな理由!(笑)
鍼灸学生時代はどんな生活だったのでしょうか?
シンタロー
シンタロー
澤口先生
澤口先生
会社員時代の蓄えがあったので、アルバイトはせずに勉強をしていました。
時々、知り合った先生の治療院を見学させていただきましたが、臨床はまったく経験しませんでしたね。
勉強漬けの毎日だったわけですね。
シンタロー
シンタロー
澤口先生
澤口先生
勉強漬けというほどではありませんが、治療院をお借りして同級生と刺鍼や施灸の練習をしていました。
勉強会が土曜日だったので、先生の外来が終わると「よし、飲もう」とみんなで準備して治療院で飲むことが多かったですね(笑)。
勉強会は1年生の冬から2年半続けていました。
国家試験のぎりぎりまで勉強会をされていたんですね。
資格取得後はすぐに開業されたんですか?
シンタロー
シンタロー
澤口先生
澤口先生
すぐ開業しようと思っていたんですが、3年生の時に日本伝統鍼灸学会の札幌大会がありまして。
夜、飲んでいる席で初めて同席した津田昌樹先生に声をかけていただいて、茨城県にある鹿島労災病院の和漢診療センターに行くことになりました。
学生時代から日本伝統鍼灸学会に入ってらっしゃったんですか?
シンタロー
シンタロー
澤口先生
澤口先生
学生の頃は学会に顔を出していたくらいですね。会員ではありませんでした。
国家試験後、お礼のお手紙を差し上げた際に、津田先生から「鹿島労災病院っていうところで、ただで働いてくれる人を探しているんだけど、澤口さんどう?」と紹介をしていただきました。
津田先生は富山で開業されていますが、金沢や茨城など他県の病院と連携して研究をされているので、鹿島労災病院ともつながりがあったんです。
あの…ただって無給ってことですか?
シンタロー
シンタロー
澤口先生
澤口先生
そうです(笑)。
もともと和漢診療センターでは、ドクターが漢方と鍼灸を併用して治療をおこなっていました。
でも、漢方の業務が忙しくなってきたため、現場で一緒に働ける鍼灸師を探していたんです。
無給で働く人もおらず、私しかいなかった(笑)。
自分に置き換えてみると、無給はつらいですね。行きたくても、蓄えがないと生活ができないから勇気が出ない。
シンタロー
シンタロー
澤口先生
澤口先生
私の場合は、幸いにも蓄えがありましたからね。それでもどうなるかわからないから、「まずは3ヶ月やってみよう」と決心しました。
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