たたかうソムリエ
-世界最優秀ソムリエコンクール
■ 角野 史比古(著) ■ 中央公論新社 |
私はソムリエ資格も持っていませんし、ワインにもそう詳しくありません。
さらに言うとソムリエが居る高級なお店に行ったこともありません。
しかしこの『たたかうソムリエ』という本を読んだとき「伝統鍼灸や脈診に共通するものがあるな」と感じました。
ソムリエと鍼灸師の共通点は、自分の感覚と経験を頼りに他者(お客さんや患者さん)にはたらきかけ理解を得ることではないでしょうか。
ソムリエは味覚を基にお客さんをワイン・食事共に満足いくサービスを提供し、感動を生み出す。
伝統鍼灸系の鍼灸師は、脈を基に病理病態を判断し、最適の治療を導き出し、症状を軽減・解決し感動を生み出す。
味覚も脈もともに形もなければ目にも見えない極めて主観的な情報です。
その主観的情報を基に他者の心身を動かす。この点において似ていると思いませんか。
鍼灸といえば、主観的で抽象的すぎると揶揄されることが多く、鍼灸師自身もその不安を抱えて迷うことが多いようです。
私も未熟な間は、主観的な情報を頼りに人の体に鍼をし、治療費をいただくということが不安で仕方がなかったものです。
ではどうすれば良いのでしょう?
いっそのこと主観的要素を除いて客観的に徹すれば問題は解決するのでしょうか?
それとも徹底的に感覚を磨いて精度を高めるべきか…直観を磨くという表現もありますね。
私は「知識」と「感覚」の融合が大事なのではと思います。
知識のない直観はただのヤマ勘であり、感性の乏しい知識は頭の堅い鍼灸師を作ります。
幅広い知識と豊かな感性を養うこと。その両者を結び付けるのが、冷静な分析や判断であり、また直観でもあります。
…と、そのようなことを感じた1冊でした。
この書に限らず職人系の書籍や道を窮める人たちの書籍は、何かしら通ずるものがあり、心に残るものがあります。職人系の鍼灸師を目指す方は得るものが多いと思います。
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