eスポーツ×鍼灸 /鍼灸師:平松 燿
ゲームを使った対戦をスポーツ競技としてとらえる「eスポーツ」。
メディアに取り上げられる機会も増え、コロナ禍でステイホームが推奨されるなかで、さらにその名が広く浸透しつつあります。
そんな話題の「eスポーツ」に鍼灸師としていち早くかかわっているのが、平松 燿(ひらまつ よう)先生です。
どんなきっかけがあったのか。またeスポーツと鍼灸について、現状の課題と今後の展望についても聞いてきました。
平松 燿(ひらまつ よう)先生
1993年11月 神奈川県横浜市出身
2012年3月 – 2016年4月 東京有明医療大学 保健医療学部 鍼灸学科
2016年4月 – 2020年3月 東京有明医療大学 附属鍼灸センター 研修生
2017年7月 – 2017年7月 Evolution Championship Series in Las Vegas 2017 帯同
2018年6月 – 現在 マルチプロゲーミングチームAKIHABARA ENCOUNT 所属
2019年1月 – 2019年9月 Unsold Stuff Gaming(現:Donuts USG) メディカルトレーナー
2019年4月 – 現在 東京アニメ・声優&eスポーツ専門学校 非常勤講師
2020年4月 – 現在 放送大学大学院 文化科学研究科 文化科学専攻 生活健康科学プログラム 学生
2020年4月 – 現在 東京有明医療大学 附属鍼灸センター 非常勤鍼灸師、同大学 鍼灸学科 研究生/リサーチアシスタント
学士(鍼灸学)
全日本鍼灸学会 学会員
日本デジタルゲーム学会 学会員
超eスポーツ学校 フェロー
世界的に急成長しているeスポーツ市場
話題のeスポーツに鍼灸師としてかかわっている、平松くんに来てもらいました。
ぼくみたいなクソガキを出しちゃって「ハリトヒト。」は平気ですか?
いやいや、こればっかりは若者から学ばないと。わたくし、37歳なんだけど「eスポーツ」って言われても「若者や小さい子に人気がある」くらいの認識しかなくて。平松くんは何歳だっけ。
26歳です。東京有明医療大学鍼灸学科を卒業後、同大学附属鍼灸センターの研修生になりました。今は放送大学大学院に通いつつ、大学附属の鍼灸センターで非常勤として外来の臨床に携わっています。そして、eスポーツの選手に対しても、鍼灸師としてケアを行っています。
どういう経緯でeスポーツにかかわるようになったか……を聞く前に、そもそもeスポーツって何なの? もうゼロから説明してもらってもいいくらい。知らないことを偉そうに言うのも変なんだけど(笑)。
わかりました(笑)。ざっくり言うと「ゲームを使って対戦する」のが、eスポーツです。例えばみんなが知っているようなゲームだと「ストリートファイター」とか。
ストリートファイターって、有名な格闘ゲームだよね。あれもeスポーツ?
格闘ゲームを職業にしている人たちもいるんですよ。ストリートファイターを極めたら、プロeスポーツアスリートになれます。
ちょっと待って。早くも混乱してきた。eスポーツというのは、スポーツゲームとは限らないの?
eスポーツはゲームの総称というか「陸上競技」みたいな意味の言葉なんですよ。
陸上競技のなかには、100m走もあれば、ハードルもあるし、400m走もあれば、42.195キロのフルマラソンもある…。
そんな感じです。そもそもゲームって、格闘ゲームとか、銃で撃ち合うようなゲームとか、サッカーなどのスポーツゲームとか、いろいろなゲームジャンルに分類出来るんですよ。で、そのジャンル内でも、各ゲーム会社がそれぞれのゲームタイトルを提供しているんですよね。
その中で競技性が評価されたり、ゲーム会社が積極的だったり、ユーザーコミュニティーが盛んであったりするものが、総称してeスポーツと呼ばれている感じでしょうか。
「エレクトロニック・スポーツ(electronic sports)」の略称です。日本のeスポーツ団体「JeSU (Japan eSports Union)」では、「広義には、電子機器を用いて行う娯楽、競技、スポーツ全般を指す言葉であり、コンピュータゲーム、ビデオゲームを使ったスポーツ競技」と定義されています。
電子ゲーム全般ってことか。うーん、やっぱりただのゲームとしか思えないんだけど。どうしてあんなに人気があるんだろうか。
面白いのは当然ながら、魅力はいろいろとあります。世界大会までいくと賞金が半端ないのは、プロを目指す、一つのモチベーションにはなっているでしょうね。
例えば有名どころなら「リーグ・オブ・レジェンド(League of Legends)」っていう競技があるんですけど、2018年度の世界大会の賞金は、1位が約2億6,000万円だったりしますからね。
League of Legendsは、基本的に無料で楽しめるパソコンゲームなんですけど、世界で最もプレイヤー数が多いともいわれていますからね。たしかユーザーは1億人を超えてるんじゃないかと。
1億人! すごすぎる!! 人気があるから人も金も集まるって感じか…。
世界規模で見たら、eスポーツの分野は、かなり伸びているんじゃないですかね。
世界大会をみてわかった「eスポーツ」と呼ぶ理由
ぼくがeスポーツを知ったのは2016年で、たまたま友達に「面白いゲームがあるから一緒にやろうぜ」って誘われたんです。
それがLeague of Legendsだったりするんですけど、面白すぎてめちゃくちゃのめり込んで、毎日のように朝までずっとやっていたんですよ。
もちろんです(笑)。そのゲームの世界大会の配信を見たのがeスポーツとの出会いなんですよ。
もう、めちゃくちゃすごかったです。観る前は、たかがゲームの大会だと思っていたんですよ。でも実際に本物を観たら完全にゲームの枠を超えていたので「eスポーツ」って呼ぶのもわかるような気がしました。
これは僕のイメージですけど、スポーツをエンターテイメントとしてとらえてください。プロ野球とかのスポーツ観戦っていう意味です。
そういうニュアンスか。ゲームにもアマチュアからプロまであって、プロは憧れの存在で、ファンは試合を観るのが楽しみみたいな?
そうです。eスポーツの世界大会は演出がキレイで、カメラワークも良くて、選手たちにしっかりフォーカスが当てられて、さまざまな特殊な効果が使われていたりとかして、とにかくすごいんですよ。
アリーナ席に人が満杯に集まっているのを見た時に、メジャーなスポーツと何も変わらないなって。そのうちスポーツ観戦と同じようにeスポーツ観戦が扱われるようになるだろうなって思ったんですよ。
ゲームがめちゃくちゃ上手い人達が対戦する、ボクシングの世界タイトル戦みたいな感じかな。
そうです。例えば選手がすごい良いプレイをした時には、ワーって盛り上がるし、会場全体がその面白さを共有するので……。正直、めちゃくちゃ感動します。
平松くんにとって、プロのプレイヤーってどういう存在なの?
個人的には、やっぱり小さい頃からゲームが大好きで、ゲームで育ってきた人間からすると、ゲームを極めて職業にしているっていうのはすごい憧れですよね。
eスポーツの大会の様子(提供:平松先生)
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