5代目鍼灸師でも、隣の芝生は青いです/鍼灸師:樋口 美花

親のやり方・私の生き方

…とはいえ。 親御さんが鍼灸師って、普通の家庭に育ったぼくから見ると、やっぱり羨ましいところもあります。
実際はどうですか?
シンタロー
シンタロー
樋口先生
樋口先生
そうですね…。
鍼灸師じゃなくても、親には聞きにくいことってありませんか?
治療や将来への不安、現状の不満は、親だからこそ言えないです。
なるほど。
シンタロー
シンタロー
わたしの話もしていいですか?
ウラベ
ウラベ
もちろん。
シンタロー
シンタロー
たとえば卒業後は「自分の治療院を持つ」ということが、鍼灸師の夢だったりするじゃないですか?
ウラベ
ウラベ
そうですね。
シンタロー
シンタロー
継ぐとなると、夢が叶った状態からスタートしなくてはいけないんですよね。
ウラベ
ウラベ
あぁ…。
シンタロー
シンタロー
樋口先生
樋口先生
わかります! 「じゃあ、ここからどこへ向かえばいいの?」っていう。
そうそう。
他の人が聞けば贅沢かもしれないけど…、親が鍼灸師ゆえの悩みというか、悩ましいところだなと思います。
ウラベ
ウラベ
そういうところもあるのかぁ。
シンタロー
シンタロー
樋口先生はそんな中、仕事を続けていくためのモチベーションはありますか?
ウラベ
ウラベ
樋口先生
樋口先生
モチベーションは、あってないようなもの…かなぁ。
でも、臨床は楽しい!
私は集団行動が苦手だから、臨床の中でしか生きていけないんですよね。
樋口先生は、鍼灸をすることが楽しそうですね。
ウラベ
ウラベ
樋口先生
樋口先生
うん、楽しい(笑)。
ふふ(笑)。
ウラベ
ウラベ
樋口先生
樋口先生
鍼灸師としてのやりがい、という意味であれば、「正解がない仕事だから」かな。
私と母と患者さん、3人が手探りで、その患者さんに合う治療を探しながら作り上げていく。
うんうん。
ウラベ
ウラベ
樋口先生
樋口先生
治療に正解はないけれど…、患者さんが明るく元気になったり、やりたかったことができるようになる。
症状が日々変化していく過程を、そばで見ていられるのが、やりがいです。
樋口さんのことを前から知ってるけど、現場重視の鍼灸師さんと仲がいいよね。
シンタロー
シンタロー
樋口先生
樋口先生
自分が何代目とか関係なく接してくれる人がいいんですよ。居心地がいいの。
患者さんも、フレンドリーな方が多いです。
すてきですね。
ウラベ
ウラベ
樋口先生
樋口先生
鍼灸院って、施術者と似たタイプの患者さんが来やすいのかな(笑)?
毎日たくさん話して、毎日楽しく仕事をしています。

嫉妬されるのも私に与えられた役割のひとつ

院長のお母様は今年54歳。
あと20年は現役を続けられそう…ですよね?
樋口先生はこの先20年間、今の院で副院長をやり続けますか?
ほかに何かやりたいことはありますか?
ウラベ
ウラベ
樋口先生
樋口先生
副院長どころか…、20年後に鍼灸師を続けているかも、正直わからないです(笑)。
今はこの仕事が好きで、ほかにできる仕事もないから続けているけど…。
うんうん。
ウラベ
ウラベ
樋口先生
樋口先生
以前は周りから「親元で鍼灸やるなんて甘えてるよね」「この先、一生ぬるま湯に浸かって生きればいいじゃない」みたいな言われ方をしたこともあります。
それは半分、嫉妬心もあるのかな…。
ウラベ
ウラベ
樋口先生
樋口先生
ね…。でも、鍼灸師の家系に生まれちゃったんだからしようがない…。
ねぇ、ウラベさん。それって、しようがなくないですか?
…ねぇ、まぁ、しようがないです。自分で選んで、鍼灸師の家に生まれてきたわけじゃない。
わたしは、周りの人は、羨ましいって思ってくれているのだと解釈してます。
ウラベ
ウラベ
樋口先生
樋口先生
そうなんです。
でね…、最近は周りの人たちの「羨ましい」という気持ちを聞くのも、私の役割なのかな、と思っています。
そう言われるのも、私が5代目の鍼灸師だからこそ、できる経験なんだから。
そうやって、全部を受け止められるようになりました。
嫉妬されることを受け入れる…。
ウラベ
ウラベ
樋口先生
樋口先生
そして、嫉妬を受け入れるようになってはじめて、
「私もあなたのことが羨ましいよ。まっさらな自分で、鍼灸師になれる貴方のことが羨ましい」
と、ちゃんと伝えられるようになりました。
あぁ、わかるなぁ。
正直、鍼灸師になった瞬間から、すでに親の色に染まっていて、自由じゃない気がするんですよね。
ウラベ
ウラベ
樋口先生
樋口先生
別に「親と同じことをやれ」なんて、ひと言も言われていないのに。
やっぱり、どこかで自分を縛ってしまっているところはあるから…。
だから、私のことを羨ましいと思う人たちのことを、私も羨ましいなって思うんです。
ほかの鍼灸師たちは、自分の夢を叶えるために、鍼灸師を目指したように見えるんですよね。
私は元々あった自分の夢を諦めて…、親の夢を叶えるために鍼灸師になったという想いを背負っています。
それは、自分が自分にかけている「呪い」なんだとわかってはいるけど…。
ウラベ
ウラベ
樋口先生
樋口先生
私も最初は鍼灸師になりたかった、というより、集団行動が苦手で、社会に出られるか不安だったからだし…。
それを言うならオレも、前の職場から逃げ出すようにして鍼灸師になっただけだし…。
シンタロー
シンタロー

…シンミリ…
まあ、こんなテンションになっちゃうよね…(苦笑)。
とはいえ親の仕事を継いでみたら、楽しかった!
鍼灸という仕事が、面白くて良かった(笑)!
ウラベ
ウラベ
樋口先生
樋口先生
それは、ほんとにそう!
毎日行き詰まったり、悩んだりするし、辞めたほうがいいかな?
自分には向いてないんじゃないかな? と思うんだけど…。
うんうん。
ウラベ
ウラベ
樋口先生
樋口先生
それでも、患者さんが来てくれて、たくさん笑って、おしゃべりして。
前向きに、元気にもっとがんばろうと思えるのは、患者さんたちと関われるから。
うんうん。
ウラベ
ウラベ
樋口先生
樋口先生
そうやって、患者さんに救われている。日々、その繰り返し。
わかる!
ウラベ
ウラベ
樋口先生
樋口先生
わたしにとって、鍼灸師はね、自分が自分らしくいられるお仕事!
樋口先生は鍼灸が大好きなんですね。
ウラベ
ウラベ
樋口先生
樋口先生
うん! そう! 私は、鍼灸が大好き!

■コスモ治療院 http://www.cosmo-aq.com/

【記事担当】
取材・文=ウラベ
撮影=シンタロー
編集=さまんさ

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