先人の想いを伝えたい/鍼灸師:加畑 聡子

研究テーマは「江戸時代の医学公教育」

専門は医学史だとか。
ツルタ
ツルタ
加畑先生
加畑先生
今は江戸時代の医学公教育がテーマです。医学の教育っていろいろありますが、江戸医学館という幕府が管轄した医学校に関係する研究をしています。
医学史って、鍼灸の専門学校で習いましたっけ。
ツルタ
ツルタ
加畑先生
加畑先生
本当は医療概論の一部ですけど、国家試験の出題基準から除かれちゃっているんです。だからあまりやらない学校もあるようですね。
でも、医学史には学ぶべき価値があるわけですよね。
ツルタ
ツルタ
加畑先生
加畑先生
私はそう思います。特に伝統医学は何千年もの歴史がありますよね。もし、現代医学では解明が難しい症状があるのなら、そこに治療のヒントがあるかもしれないと思って。長い歴史の中で、先人が培ってきた医学を継承し、発展させることができたら、と思っています。
「研究・教育・臨床」でいうと、先生の主軸は研究ですか。
ゆうすけ
ゆうすけ
加畑先生
加畑先生
今は研究のウエイトが大きいですね。私は鍼灸師ですし、もともと文学も史学も専門ではないので、まさか自分が研究者として見ていただける日が来るなんて思ってもいませんでした。
それでもただ好きなことを続けていたら、周りの方が応援してくれて、いつの間にか研究者として見てくださるようになったみたいな感じなんですよね。本当にありがたいことだと思っています。
いやいや、日本学術振興会から科研費をとって研究されているわけですから、すごいことですよね。
ゆうすけ
ゆうすけ
加畑先生
加畑先生
銅人形の調査をテーマとした若手研究でご支援いただいています。これは幸運でしたね。研究って能力だけじゃなく、いろいろと揃っていないとできなくて、環境もそうだしお金もそうだし運もそうだし。だから続けられるうちは続けようみたいな受け身なところもありますね。
ここも受け身なんですね。
ゆうすけ
ゆうすけ
加畑先生
加畑先生
科研費をいただけたり、こうして研究が続けられるのは、先人が応援してくれているからじゃないか、そういう流れを感じることが多々ありますね。
流れに身を任せている。
ゆうすけ
ゆうすけ
加畑先生
加畑先生
無理にこじ開けようとは思わないですね。

好きなことに囲まれている

研究所での1日のスケジュールは、どのような感じですか。
タキザワ
タキザワ
加畑先生
加畑先生
今は週3日、10時から5時半で出勤しています。在宅勤務の希望も出せますし、自由に好きなことをやらせていただいています。でも本当に研究しかしてないかもしれないですね、とてもありがたい環境です。
具体的に、医学史の研究っていうのは…。
タキザワ
タキザワ
加畑先生
加畑先生
史料を読んだり論文を書いたり。
史料って、さっきの書庫にあったさまざまな本の山。古くていかにも貴重そうな本もたくさんありましたね。
タキザワ
タキザワ
加畑先生
加畑先生
そうです。ああいう古典を読んだり、あと史料を買い付けたり、研究所内にある東洋医学展示室の開け閉めや展示品の管理などもしています。
ちょっと学芸員さん的な感じも。
タキザワ
タキザワ
加畑先生
加畑先生
近いかもしれませんね。見学者に展示品について解説したりもします。解説付きの見学を希望する場合は事前予約してくださいね。
北里大学は、大河ドラマとかテレビ番組の監修もされていましたよね。
ゆうすけ
ゆうすけ
加畑先生
加畑先生
そうそう。テレビ局や雑誌社、公共施設からの医事考証や史料貸出の依頼はけっこういただきますね。あと一般の方や他分野の研究者からの質問を受けることもあります。最近は新型コロナの影響でできてないですけど、医療従事者や研究者向けの講座とかイベントの企画もしています。
1日中ずっと文献に向き合っているわけじゃない。
ゆうすけ
ゆうすけ
加畑先生
加畑先生
向き合おうと思えば向き合えるんですけど、研究員の仕事はそれだけではありません。私に関して言えば、好きなことしかやっていないですね(笑)。

鍼灸をつないできた先人の想いに触れたい

今後の目標みたいなものはありますか。
ゆうすけ
ゆうすけ
加畑先生
加畑先生
あまり考えたことはありませんでしたが、今勤めている北里大学東洋医学総合研究所にはずっといたいですね。研究所の活動に貢献することが、日本の東洋医学の発展に寄与することにつながると信じています。それだけでなく、環境も人も大好きです。これまでもそうですが、人との出逢いに、とても恵まれています。
良い人との出逢いが、良い流れを作っている。
ゆうすけ
ゆうすけ
加畑先生
加畑先生
そうだと思います。今の自分があるのは、人との出逢いがあったからこそですね。これまでご指導いただいてきた、小曽戸洋先生や町泉寿郎先生、宮川浩也先生をはじめとする日本内経医学会や日本伝統鍼灸学会の先生方もそうだし。
古典研究というと、孤独な作業というイメージがありますが、先輩など周囲の人に刺激を受けながら、打ち込まれてきたんですね。
ツルタ
ツルタ
加畑先生
加畑先生
古典の研究でも、私は先人の想いに触れるのが大好きなんです。「彼らはこういう想いがあって、当時こういう業を成したんだな」って。
今、鍼灸をやる我々が鍼灸をつなげてきた人たちの想いに触れられる。
ツルタ
ツルタ
加畑先生
加畑先生
私たちにもいつか必ず死は訪れますし、やっぱりそういう意味ではリレーというか、つないでいくっていうことが大事だなと。
そこに歴史や古典を学ぶ意義がありそうですね。
ツルタ
ツルタ
加畑先生
加畑先生
もちろん、医学史や古典を知らなくても治療はできます。ですが、先人が書いた本を読むことで、治療者としての幅が広がったりします。歴史を通して、時代や場所を問わない普遍的な法則を見いだすことが、治療にもつながると思っています。
古典には、さまざまな治療法や経験が書かれていますよね。
ツルタ
ツルタ
加畑先生
加畑先生
ただ、古典を読んで「どこに刺せば、どこに効く」ということを知るのも大切なのですが、治療法にばかり目を向けると、つい自分の考えに引き寄せてしまうことがあります。私はどちらかというとフラットな姿勢で古典に向き合い、「この人は、なぜこの文章を書いたのか」という背景を理解することに意味を見いだしています。
なるほど。序文とかに、数値化できない治療家の資質が表れていると思うと、古典もまた違った読み方ができそうです。
ツルタ
ツルタ
加畑先生
加畑先生
だから、きっかけひとつで、古典に夢中になってしまう人が多いのかもしれませんね。私は、これまで東洋医学に何度も救われてきました。その恩返しをするつもりで、受け取ったたすきをつなぐように、これからも先人の思いを後世に伝えていきたいと思います。

取材協力:北里大学東洋医学総合研究所

【記事担当】
取材 = ゆうすけタキザワツルタ
文 = ツルタ
撮影 = ツルタ
編集 = くちやまだ

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