鍼で患者さんを救えれば、自分の人生も豊かになる/鍼灸師:小池 謙雅

2022年6月、五反田に鍼灸整骨院の新しいビルが誕生しました。その名も「TRIGGER鍼灸・整骨院 五反田院」。同店は系列の5店舗目にあたります。
院長は鹿島アントラーズのトレーナーを務めた経験を持つ小池謙雅(こいけ けんや)先生。
「稼げない業界」といわれる鍼灸業界で、鍼中心の治療院でこれだけの店舗の拡大は異例といえるでしょう。
しかし、もともと小池先生は鍼灸師になりたいわけではなかったとか。
店舗展開までの道のりとそれに伴う意識の変化、そしてトリガーポイント治療との出会いなどについて、お話をうかがいました。

小池 謙雅(こいけ けんや)先生

ReBodyCraft 株式会社・代表取締役。
1977年生まれ、茨城県出身。明治鍼灸大学(現 明治国際医療大学)・鍼灸学科、大東医学技術専門学校・柔道整復学科卒。
複数の治療院での下積み期間を経た後、2007〜2012年の6シーズンに渡って、Jリーグ・鹿島アントラーズのトレーナーを務めた。
アントラーズ退任後は都内にトリガー鍼灸・整骨院、カシマサッカースタジアムに2店舗目となるトリガー鍼灸・マッサージ院を立ち上げて、その後も店舗拡大。
2022年6月には、5店舗目となる「TRIGGER鍼灸・整骨院 五反田院」を開業した。

「鍼灸」の読み方もわからずに入学

「Jリーグのトレーナーになりたい」とか「繁盛鍼灸院を経営したい」という夢を持つ鍼灸学生は多くいると思います。先生は両方とも叶えられていますね。学生の頃からビジョンがあったのですか。
タキザワ
タキザワ
小池先生
小池先生
いえ、全く…。そもそも鍼灸師になりたかったわけではないんですよ。
では、ほかにやりたいことが本当はあったということですか。
タキザワ
タキザワ
小池先生
小池先生
やりたいことも特にありませんでした。看護師の母からの希望もあって、医療系の大学をいくつか受けたんですけど、どこもダメで。一浪して受かったのが鍼灸大学だけだったんです。
トレーナーを目指す人は、学生の頃にスポーツでケガをして、鍼灸整骨院にお世話になったというケースが多いようですが…。
タキザワ
タキザワ
小池先生
小池先生
そういう経験もないですね。なにせ「鍼灸」の漢字も読めませんでしたから。学校パンフレットをもらうために電話したときに「明治はりきょう大学ですか?」って言ったくらいです。
現在は、トリガーポイントの治療を行っていますよね。明治でトリガーポイントを学んだのがきっかけですか。
ツルタ
ツルタ
小池先生
小池先生
いやあ、トリガーポイントの授業を受けているはずなんですけど、覚えてないんですよね。当時はお金に直結しなさそうだと思って、印象に残らなかったのかもしれません。
そうですか。鍼灸への関心は薄かったけれども、「儲けたい」という思いはあったんですね。
ツルタ
ツルタ
小池先生
小池先生
むしろ「一旗あげて稼ぎたい」という思いしかなかったですね。母子家庭で育ったこともあって、絶対に這い上がってやろうという気持ちは、誰よりもあったと思います。
なるほど…これが壮大なストーリーの始まりなんですね。
ツルタ
ツルタ

いきなりの弟子入り志願も玉砕

一旗あげるために、学生時代に何か行動を起こしましたか。
タキザワ
タキザワ
小池先生
小池先生
北小路先生に「弟子にしてください」と直談判したことがあります。一番偉い先生に近づくのがよいだろうと思って…。
北小路博司先生ですか。泌尿器科の鍼灸の大家ですね。卒業間近にお願いに伺ったんですか。 
タキザワ
タキザワ
小池先生
小池先生
いえ、1年生の4月です。
まだ入学したばかりじゃないですか!
タキザワ
タキザワ
小池先生
小池先生
ヤバい奴ですよね。「今はまず解剖をしっかり勉強しなさい」と言われました…。
ところで鍼灸大学の卒業後は、柔道整復師の専門学校にも通われたんですね。稼ぎたいなら、すぐに働いたほうが近道な気もしますけど。
ゆうすけ
ゆうすけ
小池先生
小池先生
本当は何人かのゴッドハンドに弟子入りして、技術を身につけたら、はやく開業して稼ぎたかったんです。でも、大学の卒業間近に母が「鍼灸だけだと食えない」と耳にしたらしく「柔整にも行かなきゃダメでしょう」と懇願されて仕方なく…。
柔整の学校に行っていたときは、どんな生活を送っていましたか。
ゆうすけ
ゆうすけ
小池先生
小池先生
昼間は接骨院や病院のリハビリで働きながら柔整の夜間に行って、授業が終われば、夜中にレンタルビデオ店でアルバイト。他にも訪問鍼灸や老健施設など、出来る限りの経験を積みました。そういう3年間を送りましたね。
かなりハードですね。卒業後はどこに就職したのですか。
ゆうすけ
ゆうすけ
小池先生
小池先生
求人広告を目当てに月刊『医道の日本』をめくっていたら、鹿島アントラーズのトレーナーが治療院を出すらしく、スタッフを募集していたんです。「これだ!」と思いましたね。というのも、私はアントラーズのホームである茨城県の出身で、しかも保育園の頃からサッカー少年だったんです。
お金儲け以外に、自分のやりたいことが見えてきた…
ツルタ
ツルタ
小池先生
小池先生
…というわけではないんです。「鹿島アントラーズの肩書きを得てから開業したらウハウハだろうな」というのが、一番の動機でした。
あくまでも開業の成功のためにJリーグのトレーナーを目指したわけですか。うーむ、なんとも不純な動機ですね。
ツルタ
ツルタ

NEXT:過酷な指名獲得レースに勝ち抜く

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