今のテーマは「自分の魂の叫びを聞く」なんですよ/鍼灸師:大饗 将司

自分の行動は、すべて自分のため。

大饗先生
大饗先生
ぼくの今のテーマは「自分の魂の叫びを聞く」なんですよ。
壮大なテーマですね。
シンタロー
シンタロー
大饗先生
大饗先生
「心は嘘をつく。でも、魂は嘘をつけない」と思っていて。
たとえば、ぼくはカレーとあんこが好きなんですけど、好きな理由ってないんですよ。
人生においても、同じじゃないかな。
「ぼくの人生において、ぼくの好きなものってなんやろう?」って、いつも考えているんです。
好きなものがもっと明確だったら、人生はもっと楽しいと思うんですよ。
うんうん。
シンタロー
シンタロー
大饗先生
大饗先生
だから、正直、鍼灸にこだわらなくてもいいと思うんです。
自分が何を好きなのか、それがわかったら人生は楽じゃないですか?
楽、ですか?
シンタロー
シンタロー
大饗先生
大饗先生
ええっと…楽というか。「これや!」っていうものに、時間や力を悩まずに使えるという意味で。
それが人生において、大事なことやと思うんです。
ああ、なるほど。
シンタロー
シンタロー
大饗先生
大饗先生
みんな、きっと「やりたくない」ことが、いっぱいあるんですよ。
自分の気持ちが、環境や情報で捻じ曲げられちゃってるような。
そんな感覚のなかで生きているんじゃないかと。
「それ、絶対やりたくないやろ?」って自分に聞いたら、「やりたくない」ってほんまは答えたい。
でも「やらなきゃ」みたいな状況。キレイごとばかりならべているというか。
だから心が苦しくなるんちゃうかな、と。
現実と理想のギャップはありますよね。
シンタロー
シンタロー
大饗先生
大饗先生
ぼくが主催するセミナーはね、実技ばかりなんですよ。
で、参加者の中に、たまに「鍼灸治療されるのは苦手で、できれば受け手になりたくない」っていう方がいらっしゃるんです。
「鍼灸師なのに、鍼灸治療を受けるのが苦手」っていう方。
一定数、いらっしゃいますね。同級生にもいました。
シンタロー
シンタロー
大饗先生
大饗先生
苦手やからという理由で、普段自分が受けていない鍼灸治療を、患者さんに本気ですすめられますか?
つまり、食べたことのない、美味いかマズイかも分からへんカレーをすすめるのと同じですよね?
そんな人の治療、受けたいですか?
ぼくはそういう鍼灸師の治療は受けたくないんですよ。
だからもし、鍼灸をビジネスとしてやっているなら、ぼくがやっている方法を知らなくてもいいんじゃないかな? って思っています。
ほら、単純にHow toを習っただけじゃ、ねぇ…?
厳しいけど、本気の立場の人からみると、そう映りますよね。
シンタロー
シンタロー
大饗先生
大饗先生
本気で向き合うってのは、自分と向き合うこと。
「今流行っているから取り入れてみよう」「あの先生が良いって言ってるからそうしよう」というのは、ちょっと違うんじゃないかと。
自分が本音で「良い」と思うなら、それでいいけど。
そういう意味で、「鍼灸治療を自分が受けるのは…」という言葉を聞くと、本気で鍼灸に取り組めていないんじゃないか、鍼灸に向き合っていないんじゃないか、と考えてしまうんです。
うんうん。
シンタロー
シンタロー
大饗先生
大饗先生
だから、ぼくは自分が良いな、と思った内容しかセミナーではお見せしないし、言わないです。
そこはめっちゃこだわってます。
先日、ぼくの知人がセミナーに参加していて。よかったという感想を聞きました。
IMAC(Integrative Movement Asessment Courses / 統合的動作評価コース)ですよね。
シンタロー
シンタロー
大饗先生
大饗先生
実は、自分の治療院で開催しているIMACセミナーは、個人的なオリジナルの内容はなくて、IMACセミナーを一緒に受講した先輩の先生にお願いして、勉強させていただいているんです。
ぼくがわからないから、ぼくが学びたいから、来ていただいているんです。
ぼくは場所を貸しているだけ。
ぼくが先生に教わりたい内容を、みんなと共有するようなイメージで開催しています。
自らの興味への追求が、セミナーという形で具現化されているんですね。
シンタロー
シンタロー
大饗先生
大饗先生
IMAC自体は、ぼくにとって難しいんですけど、自分自身が、自分の身体で「なんかコレいいわ!」と感じるんですよ!
だからこそ、これが知りたいなぁ。これを理解できれば、きっと良いことあるよなぁと思って。
IMACセミナーに参加すると、参加者の皆さんも、自分自身の身体に変化を感じて「いい感じ! いいわ!」ってなるんですよ!
その空間そのものと、そこにいる参加者さんたちがすごく好きなんです。
IMACに関わっている人たちは、おもろヤバイ(笑)!
自分が感じることがスイッチになって、「もっと知りたい」という欲求が身体の中からモリモリ出てくる人たち!
突き詰めるタイプの方たちが参加しているんですね。
シンタロー
シンタロー
大饗先生
大饗先生
そうそう。でね、彼らはセミナー中に発見があると、その度に笑っているんですよ。
それをはたから見ると「なに笑ってんの?」って思うんですけど(笑)。
「治療を通して、人間の身体の変化を知りたい」という欲求が半端じゃない。
その姿を見て、「すげぇな、ぼくもあんな風に何かを追求してみたいな」って思って。
知らないことを知ったときの喜びって半端じゃないですもんね。
シンタロー
シンタロー
大饗先生
大饗先生
それで「ぼく自身の欲求はなんやろうな」と思って。
自分の魂にコンタクトしてみようかな、と。
それが今のテーマにつながると。
シンタロー
シンタロー
大饗先生
大饗先生
もともと自分のことを知りたいとは思っていたんですけどね。
彼らの取り組み方をみて、「あぁ、今まさに、彼らは変化を知りたくて突き詰めているんやろうな」って気付いたんですよ。
じゃあ、自分が何を知りたいか。
人生において何を学ぶべきなのかがわかったら、人生は楽やし、楽しいんやろうなと思います。
セミナーを開催することによって、自分の知りたいことが明確になっていますか?
シンタロー
シンタロー
大饗先生
大饗先生
そうやね。今は「自分の行動は、すべて自分のため」と考えているからね。
自分が喜べることをしているのか、自分がやることに満足できているのか。
そうじゃないと、うまくいったとしても素直に喜べないし、失敗しても人のせいにしちゃうじゃないですか。
他人のせいにしていた、若い頃のご自身にも重なるような。
シンタロー
シンタロー
大饗先生
大饗先生
ほんまにそれが原点。
ひとのためとか、団体のためとか、外的な要因でやると、評価を他者に依存してしまう。
評価は他人軸ではなく、「自分のやっていることが合っているのか、間違っているのか」という自分軸が重要なんやと思うんです。
治療においても、同じような考えなんですか?
シンタロー
シンタロー
大饗先生
大饗先生
そうですね。治療に関しては、効果を客観的に評価することを重要視しています。
例えばですけど、ROM(関節可動域)の変化はわかりやすいですね。
評価をとおして「自分の治療の効果があったかどうか」を見極める。
その基準は自分の中にないとアカンと思います。
患者さんではなく?
シンタロー
シンタロー
大饗先生
大饗先生
いくら治療しても「良くなっていない」っていう方はいるでしょう?
あと、反応がすぐに出る人もいれば、そうじゃない人もいる。
「良い・悪い」の基準を、患者さんと施術者が同じくすることは難しいんです。
患者さんの言葉を評価にしてしまうと、自分の治療を見失ってしまう。
患者さんの訴えは訴えとして受け入れるけど、自分軸での治療の評価を大切にしたいと考えています。
自分軸での評価は大切ですね。
シンタロー
シンタロー
大饗先生
大饗先生
もちろん、それだけじゃうまくいかないこともありますからね。
バランス良く考えています。
このwebメディアのターゲットは、鍼灸業界でキャリアパスを考えている学生や初学者なのですが、なにかひと言ありますか?
シンタロー
シンタロー
大饗先生
大饗先生
そうやね…。自分自身に、「ほんまに鍼灸をしたいのかを問え」ってところですかね。
さっき、カレーとあんこが好きっていうお話をしたじゃないですか。
実はね、ぼくは今、カレーとあんこのお店をしたいと思っています。
そのための準備として、週5回ぐらいカレーを食べることがあるんですよ(笑)。
ほぼ毎日カレー(笑)。
シンタロー
シンタロー
大饗先生
大饗先生
もし、それが実現したとしても、鍼灸を学び、臨床をしてきた事実は揺るがないし、その経験が自分の人生を豊かにしてくれていると思うんです。
いつも自問自答しながら、進むしかないんやと思いますよ。
自分の「鍼灸師としての人生」に向き合って、「鍼灸にこだわる理由があるのか」を考えてみたらいいんですよ。
先生ご自身、いまのところ、鍼灸師としての人生はいかがですか?
シンタロー
シンタロー
大饗先生
大饗先生
東京での開業当初は散々でしたけど、今はおかげさまで、ひとのつながりを元に集患ができています。
鍼灸師としてはいい感じなんちゃいますか?
けど、人生を長い目で見れば、何がどうなったら成功なんかは、よくわからへん。
それよりも、鍼灸をやっていない時間や、人生そのものが豊かではないと…。
ぼくは鍼灸師としての人生よりも、大饗将司という人生のほうが大事やから。
そういう意味では満足してますよ。
これから新たな魂の叫びが聞こえてくるのが楽しみです!

■ acu.place自由が丘治療院 https://www.acu-place.com/

【記事担当】
取材・文・撮影=シンタロー
編集=さまんさ

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